ギャンブル依存症対策の観点からみたカジノ法案の論点について

2016年12月01日 06:00

カジノ法案がようやく審議に入った。

私は「一般社団法人ギャンブル依存症問題を考える会」のアドバイザリーを2年ほど務めてきたのだが、今ほど「ギャンブル依存症」というキーワードが注目されることもないと思うので、この際アドバイザリーという私の立場から思うところを書いておく。

まず「ギャンブル依存症問題を考える会」(以下「当会」)の立ち位置についてだが、ただの民間の一般社団法人に過ぎないといえばそうなのだが、少なくともここ2年では我が国で「ギャンブル依存症」という問題の啓発活動に最も真摯に取り組んできた法人であるといっても差し支えないとは思うし、代表の田中紀子はギャンブル依存症という分野のオピニオンリーダーになったといっても過言ではないと思う。当会の意見がギャンブル依存症罹患者の総意を代弁するというわけではないが、少なくとも現在においてはこの分野で比肩する団体は存在しないとも考えている。

その上でまず一点目として「カジノ法案に対して賛成か、反対か」という点についてだが、結論からいうとそのどちらもでもなく「カジノ法案の審議を通じてギャンブル依存症問題に注目が集まり、これを機に骨太な対策が講じられることを期待している」というところである。この点については当会代表の田中とも散々話し合ったが、「カジノというきっかけがなければギャンブル依存症問題が国会で論じられることはない」という現実を踏まえて、カジノ法案の審議入りは応援するスタンスを貫いてきた。なのでとりあえずカジノ法案が審議入りしたことは歓迎すべきことと認識している。なお当会はギャンブル産業を否定する立場を取っていない。

二点目として「ギャンブル依存症問題への対策には何が必要か」という点についてだが、
①ギャンブル依存症は病気であり、国として予防・回復の対策が必要
②ギャンブル依存症から波及する貧困・虐待・犯罪といった二次的被害にも対策が必要
という二重の考え方を持っている。

①に関しては糖尿病や高血圧といった生活習慣病と同様、ギャンブル依存症に関しても早い段階からの予防教育が必要と考えている。例えば、ギャンブル依存症の症状、否認の病としての性質、共依存の構造、いくつかの回復方法(12ステップ、認知行動療法等)、などは広く知られるべきで、啓発活動を国として後押しすべきと考える。②に関しては、言って見れば特殊構造的な貧困問題であり、ギャンブル業界が責任を持って対処すべき問題と考える。例えばギャンブル依存症罹患者の親を持つ子供が貧困から泣く泣く進学を諦めるのに、その胴元が潤っているとなればいくら何でも社会的に不公正であり、ギャンブル業界に奨学金制度等を設けるといった対策を求めるのは決して不合理ではないと考えている。

三点目として「ではカジノ法案の内容をどう評価するか?」という点についてだが、現状のままでは不十分で修正が必要と考えている。カジノ法案の推進者がよくいう論法として「”カジノに関しては”ギャンブル依存症対策を取るので大丈夫」というものがあるのだが、これは裏を返せば「カジノ以外はギャンブル依存症対策をしない」ということなので、当会としてこれで十分と言えるものでは決してない。当会としては、「カジノに限らず既存のギャンブル(パチンコ含む)」を網羅した対策を講じることを求めている。特に求めていることは、政府横断的にギャンブル依存症対策に取り組む機関の設置である。この点国会での議論を通じて法案が修正されることを大いに期待している。

最後にカジノ法案と直接関係はしないが、カジノ法案の審議の過程で期待していることは「パチンコ不正改造問題に対する決着」である。これについては本ブログで度々述べてきたので詳細を述べることは避けるが、これほど大規模な不正に対してパチンコメーカーが何ら処分を受けることがないまま無罪放免されることは、当会としては受け入れがたい。パチンコメーカーと癒着し、パチンコすらきちんと監督できない政府がカジノを監督できるとはとても思えない。

以上長くなったが、カジノ法案の審議を通じてギャンブル依存症問題に関する議論が高まり、法案が適切な形で修正されることを期待している。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2016年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。

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