憲法擁護庁にイスラム過激派潜伏

2016年12月03日 11:00

独連邦憲法擁護庁(BfV)内にイスラム過激派のドイツ人(51)がスパイ活動していたことがこのほど発覚し、関係者に大きな衝撃を投じている。独週刊誌シュピーゲル電子版が先月29日、報道した。

デュッセルドルフ検察によれば、「スパイが国家の安全に直接関係する情報を外部に流出した形跡はこれまでのところ見当たらない」という。男は未決拘留中で、デュッセルドルフ検察所が調査に乗り出している。

シュピーゲル誌によると、51歳の職員はインターネットで偽名のイスラム名を使い、機密を流していたという。男はBfVの活動場所などの情報を集め、インターネットで様々な名前を使いチャットしながら、「自分はBfVだ」といい、テロ襲撃計画で仲間を誘い、「これはアラーの願いだ」と話していたという。BfVはその段階で男がスパイだと判断し、証拠をつかんだ。不明な点は、BfV内に男の仲間がいるかどうかだという。

独連邦憲法擁護庁(BfV)のハンス・ゲオルグ・マーセン長官(BfVの公式サイトから)

▲独連邦憲法擁護庁(BfV)のハンス・ゲオルグ・マーセン長官(BfVの公式サイトから)

デュッセルドルフ検察庁によれば、男は2016年4月、イスラム共同体を監視するために途中からBfV入りした職員だ。その前は銀行マンで家庭では普通の父親だった。

ハンス・ゲオルグ・マーセンBfV長官は、「雇用前には基本的な身元チェックをする。イスラム過激派の疑いある職員にはこれまで外的に目立った点はなかった。誰も気がつかないうちに過激化していったのだろう」という。

男の自白によると、BfVに侵入しケルン北部郊外にある中心建物へ爆弾襲撃するための情報を集めることが目的だったという。2014年にイスラム教に改宗したが、家族は知らなかったという。

社会民主党からは、「職員の安全チェック体制を改善する必要性がある」という声が聞かれる一方、左翼党の連邦議会議員は、「政府はこの事件を意図的に小さな出来事のように述べているが、これは明らかに憲法擁護庁の重大な過失だ」と連邦政府を批判している。それに対し、独連邦議会の情報機関監視員のクレメンス・ビンニンガ―議長(「キリスト教民主同盟」出身)は、BfV職員への監視怠慢批判に対し、「必要な検証は全て行ってきた。長期にわたって特定の人物の安全監視を実施し、イスラム過激派の形跡を見つけることは難しい」と説明している。

マーセン長官は、「今回の件では詳細な調査を行い、今後の教訓としたい」と述べている。ドイツではサラフィスト(イスラム過激主義者)の活動が活発化している。BfVによれば、国内にイスラム過激派は約9200人と推定されている。

ところで、連邦軍の中にもイスラム過激派のスパイが潜入し、軍の武器、軍需品に関する情報や使用方法の教育を受けていたことが明らかになっている。独連邦軍情報機関によると、軍事保安局(MAD)には約20人のイスラム過激派が潜入し、さらに多数の疑わしい人物がいるという。連邦政府は今年8月末、「MADは連邦軍志願者の身元をチェックする監視を強化すべきだ」と要請したほどだ。

イスラム過激派対策の要、BfVやMADにイスラム過激派のスパイが暗躍していたという事件は、メルケル政権の対テロ対策の根幹を揺るがす重大な問題であることは間違いない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年12月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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