【Who do you think you are?】リベラルの思い上がり

2016年12月03日 23:00
99%運動(ブルームバーグ)

ブルームバーグより引用(編集部)

さて米大統領選挙ではトランプが勝利したわけですが、アメリカのメディア(日本のメディアも)、結果に満足していないようです。

まあ、端的にいえば反知性主義だ、田舎白人を騙して票をとった、ポピュリズムだなどということです。
実際の表現はもっとお上品で複雑ですが、言っていることはそういうことです。

アメリカのマスメディアはリベラル色が強いわけですが、本来リベラルは理性的で、平等で民主的な社会をめざしていることになっていますが、現状はどうでしょうか。

前にも書きましたが、今回の選挙ではヒラリーが負けただけでなく、リベラルなマスメディアに対する有権者の不信任だったとぼくは思っています。まあ、ヒルビリー(田舎白人)はぼくもあまり好きではないのですが(笑
でも素朴でいい人もいます。

ヒラリーはエスタブリッシュメントな政治屋であり、彼女含めて、既存政治は信用できない。その政治屋とズブズブの文屋も信用できないということです。

メディア側が自分たちと意見がことなるのを、単に反知性主義だと罵るのは簡単ですが、それではリベラルなメディアに「知性」があったのか。これは大変疑問だと思います。「おれたちは知的で、頭がいいけど、無知蒙昧なお前ら大衆が馬鹿だからトランプを選びやがった、というのは驕りではないでしょうか。

かつては、戦後のアメリカでは中流以下の労働者でも家と車二台ぐらいは買えて、上手くいけば子どもを大学にやれるぐらいの収入がありました。コツコツは働いていれば、それなりに報われる社会でした。一攫千金のアメリカンドリームよりもこちらが重要です。

ところが、80年代ぐらいから雲行きが怪しくなってきました。グリード(貪欲)・エコノミズムの台頭です。

投資家や大企業の重役の収入は何十倍にも膨れ上がりましたが、対して社員は業績が良くとも、投資家や経営者が収入を増やすために解雇されました。これにより貧富の差が拡大しましたが、優勝劣敗は当然だというのがメディアの主たる論調であり、このような企業の経営方針を批判してきませんでした。

アメリカの経営ではバランスシートの固定費用である、工場などの生産手段、従業員などが削れられれば見栄えがよくなるという発想があります。これらに加えて、従業員の教育費や研究開発費といった、費用も削ればそのほうが、投資家から歓迎されます。

更に自社株買いをすればもっと株価があります。
でも自社株を買ったからといってその企業の実態やパフォーマンスは変わらないんですけども。

投資家は配当が増えるのは勿論、経営者もストック・オプション制なので、収入が増えます。
しかも利益の確保は四半期ごとですから、長期を見通した商売はできません。
これでは信用第一で長期的な視点の経営はできず、勢い山師、山賊的な商売になります。
これでは雇用を維持し、社員を教育し、研究開発を通じて息の長い商売をすることはできません。

繰り返しますが、このような経営をアメリカのリベラルなメディアは是としていました。
企業の利益と、株価が上がればそれは景気がいいのだと。

ですが、その影では多くの中産階級が解雇され、週給の単純労働に流れ、下層労働者は職を失って、フードスタンプをもらう生活になっています。

かつて厚かったアメリカの中産階級はやせ細り、底辺の労働者は更に貧乏になりました。アフリカの最貧国と同じ構造です。中産階級が減れば多様な消費も起こりません。

ところが、メディアはこれを「グローバリゼーション」だから仕方ないですませてきました。アメリカでは人間は金持ちと貧乏人しかいない、第三世界と同じような構図になってきました。そして労働者は搾取されて当たり前であると。なんとなくカール・マルクスが登場してきた時代の欧州に似てきたような気がします。

ソ連が崩壊し世界の市場が統合され、各国とも国際的な競争が激しくなったのと、アメリカ式の強欲資本主義はイコールではありません。ところがアメリカのメディアはそれがあたかも同じかのように宣伝してきました。アメリカで洗脳されてきた日本の「専門家」にも同様な人たちがおります。強欲資本主義を批判すると、それはグローバリゼーションに否定するのだと。こんな幼稚な論理がまかり通ってきました。

メディアが重用してきた「経済の専門家」とは実体経済に無知な、経済学者と相場師の手先です。
彼らはビジネスの現場を見ることもなく、数字だけを弄んでいます。しかも彼らの世界とは彼らの身内の株式や債権などの市場と経営者だけです。

大体環境を完全に再現して実験ができない経済学を、数式を使ってあたかも科学的な学問のごとく、吹聴するのはエセ科学や宗教の類です。
結局権威があって声の大きいやつのいうことが「正統」ということになります。
カルトも良いところです。
拝み屋が死んだら天国にいけますとか言うようなものです。お前行ったことがあるんか、と。

会社の実態や中長期の経営戦略などに興味がない。株価が上がること、あるいは乱高下することが彼らの望みです。
その場にぺんぺん草も生えないようになるまで収奪したら、次にいけば良いというのが彼らの方針です。

実体経済を見ていない専門バカの学者と相場師のみが「経済の専門家」であり、正しい分析ができる権威であるかのようにメディアは紹介して世論を操作してきました。これは日本でも同じです。

それを何処かの島国のアレな総理は真に受けて、アベノミクスなんぞという胡乱な経済政策を思いついたわけです。

アメリカの大手メディアはこのような強欲経済と、世界市場が統合されたグローバリゼーションは同一のものである、それが世界のスタンダードだと宣伝してきました。それに乗っかってきた日本のメディアも少なくありません。

この動き対して起きたのが、ウォール・ストリートの占拠であり、サンダースやトランプなどの8年前であれば泡沫候補だった候補が本命となりました。このような社会の不満や不安に見て見ぬふりをしてきたのは、あるいは大したことがないとタカをくくってきたのが既存の大手メディアでした。

このような庶民を搾取する政治と経済界、それを是とするかのような報道を繰り返してきたマスメディアが信用されなくなるのは当たり前で、有権者が実力はわからないけども、経営者としての手腕があるトランプに賭けてみようと思ったのは当然のことではないでしょうか。

こういうことは自分たちも政治や経済の特権階級と同じだと思っている、メディアの連中には理解ができなったというわけです。

それを反知性主義だ、庶民はバカだと非難しているようなマスメディアには未来は無いかと思います。自省すべきは既存のマスメディアの方です。

アメリカではリベラルとは、既存の政治家と大企業に擦り寄って、利益を得て、そのためには庶民を搾取し、社会が破壊されても構わないと思っている人たちのことのように思えます。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「駆け付け警護」は自衛官の命を軽視しすぎだ
http://toyokeizai.net/articles/-/146208

駆けつけ警護に関してJapan In Depth に以下の記事を寄稿しております。

自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その1 情報編
http://japan-indepth.jp/?p=31070
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その2 火力編
http://japan-indepth.jp/?p=31120
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない。その3防御力編 前編
http://japan-indepth.jp/?p=31185
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編
http://japan-indepth.jp/?p=31379
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編
http://japan-indepth.jp/?p=31436


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2016年12月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑