東証、MBO後の再上場の審査指針を公表 投資家保護の強化狙う

2016年12月07日 06:00

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東京証券取引所は2日、MBO(マネジメントバイアウト=経営陣による買収)によって非公開化した企業が再上場する際の上場審査の指針を公表した。①MBOと再上場の関連性②プレミアム配分の適切性・MBO実施の合理性――の2つの視点で確認を行い、再上場時のコーポレート・ガバナンスの体制や再上場に至るまでの経緯を勘案し、総合的に再上場の可否を判断する。MBO後に再上場するケースが今後増える可能性があることに備え、投資家保護を強化する狙いだ。

MBOは上場会社の経営者が株主から株式を買い取って会社を非公開化する取引。経営者にとっては短期的な株価の変動を気にすることなく、機動的な経営改善が可能となる利点がある株主にとっては市場価格よりもプレミアムを上乗せした価格で株式を売却できる機会となる。東証によると、国内だけでも最近10年間で 100件以上実施されているという。

しかし、MBOは経営者が株主から株式を買い取る取引であることから、経営者と株主の間で利益相反が生じやすい。しかも経営者の方が株主よりも豊富に企業情報を持っている。例えば、意図的に費用を積み増して業績を悪化させ、株価が安いタイミングを狙って非公開化。その後の業績回復したタイミングで再上場させる――といった手法で、経営者が不当な利益を享受し、情報劣位に立つ株主は損をするといった事態を招きかねない。

実際、過去に外食大手のレックス・ホールディングスによるMBO事件など、不満を募らせた株主が裁判を起こしたケースも発生している。いったんMBOした企業が再上場し、経営者のみが大きな利益を上げるようなことが頻発すれば、市場の信頼性を阻害しかねないため、今回の指針公表に至ったものと推察される。

MBOと再上場の関連性、計画と進捗の乖離を審査

具体的な内容は以下の表の通りだ。

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東証が特に注意深く審査するのは、MBOと再上場が一体となった取引である。具体的にはMBO を実施する当初から再上場などによるイグジットを念頭に置くようなケースが該当する。これに対しては、MBOの主導者(経営者・株主)の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短などを確認する方針だ。

またMBOを実施して上場廃止となった会社が再上場する場合には、MBO時の計画と MBO後の進捗との間のかい離が生じる場合がある。例えば、MBO時の収益計画について意図的に低く見積もれば、会社が株主に対して支払うプレミアムが低めになり、経営者は再上場時に利益を上げやすくなる。東証はこれに対して、計画と進捗の乖離についての説明が十分に説得力があるものかどうかなどを確認する。

東証では2015 年 12 月から上場制度整備懇談会においてMBO後の再上場について議論を行った。MBO実施後3年以内の再上場を認めないといった規制を導入することも検討したが、そのような一律的な規制は「かえって資本市場の活力をそぐことになりかねない」と判断し、規制導入を見送った。

東証によると、MBOの件数は 2007 年から 2012 年にかけて集中しており、投資ファンドの一般的な投資期間等を考慮すれば、今後、再上場件数が増加する可能性があるという。最近では外食大手のすかいらーくがMBOで非公開化した後にファンド傘下で再建を進め、2014年に再上場した。アデランスは今年10月、投資会社のインテグラルと組んでMBOを実施し、株式上場を廃止すると発表した。

今回の東証の対応が「MBO→再上場」の流れにどんな影響を与えるのか。今後の推移を注目していきたい。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年12月6日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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