気惚れ、顔惚れ、床惚れ

恋

阿刀田高氏の「アイデアを探せ」(文春文庫)を読んでいたら、興味深い記述がありました。”気惚れ、顔惚れ、床惚れ”というアフォリズムは、男性が女性に関心を持つポイントを3つに分けたものだそうです。

気惚れとは「広くメンタリティ」に好感を持つものであり、顔惚れは容貌に着こなしのうまさなども含んだ点に好感を持つもの、床惚れは閨房のしぐさに惚れ込むことだそうです。

そして、この3つの条件を全部揃えた女性は滅多にいないし、いたとしても一般男性には廻ってこないという至極当たり前な事だけでなく、3つの条件は微妙にその表出が異なっているというのです。以下、本書43ページから抜粋します。

容姿のよしあしは、好みの差はあるにせよ、すぐにわかる。メンタリティのよさは、ある程度つきあってみて初めてわかることだろう。そして、最後の一つ、これがわかったときには、もう男女関係は、ある程度深まっていると考えて良い。三つの条件が同時に提示され「さあ、どれを選びますか」と問われるわけではないのだ。

これを読んで、阿刀田高氏の慧眼に深く感銘を受けました。好みの要素を分けるだけでなく、その要素が付き合いの深度によって時系列的に表れてくるというのです。短編小説の大家による鋭くも恐るべき指摘であります。

男性が街中で女性をナンパする際、少なくとも好みでない容貌の女性には声をかけないでしょう。一回きりの合コンでその後連絡を取る女性も、容貌が好みでない女性は除外されるでしょう。つまり、このような出会いのケースだと、男性の多くは「顔惚れの段階で狙いを絞り込んでしまうため」女性の他の長所を知ることなく自分自身の可能性を狭めることになります。

学校や職場、はたまたサークルのように、多くの男女が出会って継続的な人間関係が維持されるような場だと、男性も女性も「気惚れ」の段階に進むことが出来ます。最初は絶対に有り得ないと思っていた相手と結婚するケースは、職場やサークルでは案外少ないことではありません。かつて、結婚を決意した男女から「最初は全く気がなかったんだけどね」と聞かされたことが何度もあります。

昨今は、床惚れの段階も極めて重要なポイントになっているようです。「マグロ」とか「自分本位のセックス」という表現が独身男女の間で話題になるように、一切の飾りを捨てて”裸の付き合い”になって初めて相手の人間性理解できることも決して少ないとは言えないでしょう。性の不一致が原因で結婚そうそう離婚した男女の事案は、以前本ブログで書きました。

そこで、リアルとSNS等で、私が何人かの男女に次のようなアンケートをお願いしました。
以下の4つの要素のうち、パートナーとなる異性に必須の2つを選んでください。なお、選ばなかった要素については「最悪」である場合も想定して。

1 感情(優しさやこまやかさ) 2 頭脳の明晰さ 3 容貌(身長も含む) 4 性の相性
男女それぞれ20名以上の方々からご協力をいただきました。本当にありがとうございました。なお、本アンケートでは「気惚れ」を、1の感情と2の頭脳の明晰さに分けました。その理由として、ダイレクトに「気惚れ」「顔惚れ」「床惚れ」のうち1つを選ぶようお願いすれば、ダントツで「気惚れ」になってアンケートの意味が失われると思ったからです。おそらくそれでも1がダントツに支持されると予想して、2つを選んでもらうようにしました。

アンケート結果は、予想通り100%近くの人々が1の感情を選んで、もう1つは興味深く割れました。若干名の方が1を外しましたが、誤差と考えて分析結果に影響がないものと判断します。そこで、本命の3項目、「頭脳の明晰さ」「容貌」「性の相性」の結果を集計したら以下のようになりました。

男性、「頭脳の明晰さ」40% 「容貌」36% 「性の相性」24%
女性、「頭脳の明晰さ」68% 「容貌」18% 「性の相性」14%

男性である私が直接訊ねたり、記名式が多かったため「性の相性」が男女ともに少なくなっている(特に女性で少なくなっている)点は、読者のみなさん各自でご修正いただくとして、この結果をどのように分析し解釈すべきでしょう?

私が驚いたのは、男性が女性に対して「容貌」よりも「頭脳の明晰さ」をより強く求めたということです。昨今は美女よりも聡明な女性の方が男性にとって好ましいのでありましょう。個人的には、先天的要素より後天的要素が重視されることは、大変好ましい傾向だと考えます。

また、男女ともに、バイアスを受けながらも”裸の付き合い”である「性の相性」にかなりの票が入ったことも注目すべきでしょう。セックスは最も原始的で人間的な行為です。衣食が一応足りて機械文明に囲まれている今日、原点に戻って安らぎを得る重要性が強く認識されているのかもしれません。

このアンケート結果は多くの方々の無償のご好意によるもので、オープン情報です。是非、読者の方々も、この結果を踏まえて何らかの仮説を立ててみてはいかがでしょう? とても楽しみにいたしております(^o^)

本当にあったトンデモ法律トラブル 突然の理不尽から身を守るケース・スタディ36 (幻冬舎新書)
荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2016年12月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。