【ファーマライズホールディングス】M&Aで「地域医療」「非調剤」を拡大

2016年12月10日 06:00
画像はイメージです

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ファーマライズホールディングス<2796>は東証1部に上場する調剤薬局チェーンだ。グループ全体で、売上高は480億円、341店舗の調剤薬局を展開している(2016年5月末時点)。調剤薬局業界は、業界再編・集約化が行われやすいといわれる小売業の中でも今まさに業界再編の真最中。同社もその例に漏れず、1997年の愛知県のみなみ薬局の買収を皮切りにM&Aにより事業拡大を行ってきた。同社のM&A戦略と今後の課題を探った。

【企業概要】病院に隣接した出店が中心

ファーマライズホールディングスは大きく3つの事業を運営している。主力の調剤薬局事業は、健康保険法に基づく保険薬局として、医療機関の発行する処方せんに基づき、一般患者に医薬品の調剤を行う調剤薬局を経営する。持株会社体制のもとで北海道から沖縄までの地域を、各事業子会社がきめ細かく運営している点に特徴がある。病院に隣接した出店を中心に、多くの処方せんを受け取る医療機関と密接な連携体制を築いている。

2つ目が物販事業。子会社を通じて、ドラッグストア、コンビニエンスストアの運営や化粧品の販売を手がけている。3つ目が医学資料保管・管理事業。医療機関が患者を診察した際に記録するカルテやレントゲンフィルムなどの医学資料を、医療機関に代わり倉庫で保管・管理する。

①地域医療への貢献 ②患者への良質な医療サービス ③医薬情報の共有化を基本方針に掲げている。また経営目標として2018年5月期の連結売上高525億円以上、自己資本利益率(ROE)は5%以上の維持、将来的に10%をめざしている。

【経営陣】創業者の大野会長、三菱銀行出身の岩崎社長

代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は大野利美知氏。大野氏は1984年、東京都豊島区に株式会社東京物産(現ファーマライズホールディングス)を設立して社長に就任。2016年8月から会長に就任した。66歳。

社長兼最高執行責任者(COO)は岩﨑哲雄氏。三菱銀行(現東京三菱UFJ銀行)出身で、2008年にファーマライズに入社。2016年8月に社長に昇格した。62歳。

【株主構成】大野会長、持ち株比率35%

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筆頭株主は創業者の大野会長。持ち株比率は35%とダントツで、そのほかの株主は5%以下にとどまっている。大野会長がオーナー兼CEOとして所有と経営を一致させて意思決定のスピードを速めている。

【M&A戦略】地場の調剤薬局買収にプレミアム

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これまで、ファーマライズホールディングスのM&Aは2つの特徴がある。

1つ目は「地域医療」というキーワードだ。ファーマライズホールディングスは、2009年6月にホールディングス化して以降「地域医療」をグループ形成においての理念としている。M&Aにおいては、地場の信頼の厚い企業への買収に積極的に取り組んできた。ドミナント化戦略を進める中で、在宅医療、施設調剤等や、後発医薬品の推奨品目選定に関するノウハウ、予防医療の提案能力など当社グループ独自の強みにバリューアップを目指す。特徴的な事例が下記の3つの企業買収である。

2007年9月に苫小牧市内において調剤薬局を14店舗構え、顧客の信認を得てきた創業 70 年の老舗企業のふじい薬局を完全子会社化した。北海道においての新規事業基盤の確保とし、牧市内において知名度の高い「ふじい薬局」にファーマライズのノウハウとスケールメリットを活かす。ふじい薬局売上高が14億円、営業利益が1千万円、純資産が3千万円に対し、株式取得価格2億円とありおよそ16~17年分ののれん代が付いたことになる。

2009年9月に北海道の道南地区を中心に20店舗を展開し、地域の信頼が厚いハイレンメディカルを子会社化した。すでに北海道苫小牧市を中心に出店しているふじい薬局を基盤とし、北海道の主要都市にも薬局展開の推進を目的としていた。ハイレンメディカルの売上高は28億円、営業利益は3千万円、純資産は1億円に対し、株式取得価格は14億円とあり相当のプレミアムがついた。

2012年9月に兵庫県内で調剤薬局を15店舗展開する新世薬品の株式を議決権割合にして33.3%から100%に引き上げることで完全子会社化した。新世薬局は地域密着企業で特に 10 店舗を展開する淡路島では抜群の存在感がある。新世薬品の人的ネットワークと、ファーマライズの地域医療や後発医薬品等に関するノウハウを融合させることでシナジー効果を期待する。新世薬局は売上高が15億円、純資産が1億円、営業利益が1億5千万円に対し、株式66.7%の取得価格は12億円であった。

ファーマライズホールディングスのM&Aは、医療診療所から処方箋を集めるマンツーマン薬局、門前薬局を中心に地域密着型のドミナント形成を行ってきた。中でも分業率が低い地域に主眼を置いてきた。そのため、地場の調剤薬局の買収に相当のプレミアムを付けてきた。

ドラッグストア拡大、ヤマダ電機とも提携

ファーマライズのM&Aの2つ目のキーワードは「非調剤店舗の拡大」である。同社は調剤薬局事業のみに頼らず、非調剤のドラッグストア、コンビニエンスストアの拡大も強めている。2015年5月期の店舗数が259店舗から2016年5月期では341店舗に増加した。その中でも非調剤店舗は、2店舗から61店舗に大幅に増加した。

(決算説明会資料を元に作成)

(決算説明会資料を元に作成)

2015年10月に大阪でドラッグストアチェーンの運営を行うヒグチ産業とコンビニエンスストアチェーンの運営を行う東京のファミリーマートと出資した合弁会社「薬ヒグチ&ファーマライズ」を子会社化した。同社は、東京と大阪を中心に調剤薬局10店舗、ドラッグストア65店舗を運営する。コンビニエンスストアの持つ利便性と、調剤薬局、ドラッグストアの持つ専門性を兼ね備えた新たな業態の店舗開発及び薬剤師・登録販売者を始めとする人材交流、並びにそれぞれの事業における各社のノウハウや情報を融合していくこと等で3社が緊密に連携し、合弁会社の収益の拡大及び企業価値の最大化を目指した。

出資比率は、ファーマライズホールディングス55.1%、ヒグチ産業が30%、ファミリーマートが14.9%である。

また、2012年10月に日本における家電業界のリーディングカンパニーとしてヤマダ電機と業務提携をしている。ヤマダ電機は「LABI1 日本総本店 池袋」内において調剤薬局の運営も行っており、ファーマライズは同店舗の調剤薬局業務を請け負うとともに、多店舗の調剤薬局事業の支援を行う。ヤマダ電機との業務提携により、当社の強みである質の高い調剤サービスの提供と、ヤマダ電機の集客力に期待し、新たな店舗展開および事業規模の拡大を狙う。

【財務分析】コンビニ、ドラッグストアの採算改善道半ば

直近10ヶ年のファーマライズホールディングスののれんの推移は大きく分けて2つのポイントがある。

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まずは、2010年5月期である。のれんが前年度から13億円増の18億円、のれんに対する総資産の割合にして8ポイントアップの13%であった。2009年9月に三和調剤(東京都3店舗)とハイレンメディカル(北海道20店舗、秋田県2店舗)、2010年1月に北町薬局(東京都 3店舗)がグループ入りし、持分法適用関連会社として2010年3月にエム・シー(宮城県3店舗)、2010年4月に新世薬品(兵庫県14店舗)がグループ入りしたことが要因である。

次に、2013年5月期である。のれんが前年度から43億円増の70億円、のれんに対する総資産の割合にして15ポイントアップの30%であった。新世薬品の16店舗、たかはしの3店舗、連結子会社のみなみ薬局がM&Aにより取得した6店舗(東京都4店舗、神奈川県2店舗)が要因である。

2018年5月期を最終年度とする「中期経営計画 Challenge 2017 ~セルフメディケーション・ サポートへの進出と選ばれる会社を目指して」の基本方針にて、「ドミナント展開の推進」と「非調剤事業の拡大」に重点を置かれており、今後ともその動きは強まると推察される。

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しかし、2016年10月に発表した2016年6~8月期の連結決算は、売上高は、前年同期比22.0%増の126億7300万円となったものの、2900万円の営業赤字となった。調剤報酬・薬価改定の影響や物販事業の不振、新卒採用や研修などの本部費用が増加したことなどが影響したとされる。

主力の調剤薬局事業の業績は、売上高が3.8%増の101億9500万円と増収だった一方、セグメント利益は77.7%減の6000万円と大幅な減益となった。非調剤事業は、売上高が1165.8%増の20億7000万円、セグメント損失は6700万円だった。コンビニエンスストアとドラッグストアの運営事業が採算改善の途上にあることが損失の主な要因という。

自己資本比率は約25%であり、ここ数年経常利益も年々減少していることから経営は盤石であるとは言い難く、コンビニエンスストアとドラッグの経営を軌道に乗せることが今後のカギを握るだろう。

【株価】下落基調も割安感乏しく

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株価は低迷している。前述のように店舗数の増加で売上高は拡大する一方で、利益が伸び悩んでいることが背景にある。今期の予想PER(株価収益率)は約48倍。調剤薬局のアインホールディングス<9627>の約28倍、クオール<3034>の約14倍を大幅に上回っており、株価は割安感に乏しい。

【まとめ】買収店舗のてこ入れ課題

ファーマライズホールディングスは「地域医療」と「非調剤店舗の拡大」をキーワードに地場の企業を積極的に買収してきた。しかし、ドラックストアや コンビニエンスストアは採算改善の途上にあり、収益は伸び悩んでいる。自己資本比率も25%を下回っており、財務も磐石とは言えない。今後は新規の買収だ けでなく、買収した店舗のテコ入れによる収益力の強化が課題になるだろう。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年12月8日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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