【アステラス製薬】M&Aでグローバル製薬企業へ がん、移植など3領域に照準

2016年12月14日 06:00

山之内製薬と藤沢製薬の合併により2005年に誕生したアステラス製薬<4503>。積極的なM&Aを通じて、がんや移植など成長領域の医薬品開発を加速している。米国のバイオベンチャーなどを相次ぎ買収し研究開発を強化、海外市場で売り上げを伸ばす一方、シナジーが見込めない非中核事業は他社への譲渡を進め、資金効率を高める。「研究開発型グローバル製薬企業」を標榜するアステラス製薬のM&A戦略を点検する。

【企業概要】山之内製薬と藤沢製薬の合併で発足

アステラス製薬は、2005年4月に山之内製薬と藤沢製薬の両社合併により発足した。医薬品の研究、開発、生産、販売を行っている。国内の医薬品メーカーとして武田薬品工業に続いて業界2位の売上規模を誇る。

臓器移植における拒絶反応の抑制などに使われる免疫抑制剤「プログラフ」が主力商品。約100の国と地域で販売し、プログラフだけで2000億円を売り上げる。

アステラス製薬の主要領域はがん・過活動膀胱(OAB)・移植の3領域である。特に、前立腺癌治療剤「イクスタンジ」、OAB製品が売り上げをけん引しており、今後も安定的なイノベーション創出のために積極的な研究開発投資を継続的に行っている。

また、買収、提携、導入などから外部から事業機会の探索及び獲得を掲げており、Ocata社を眼科・再生医療分野の強化のため買収、クリノ社と遺伝子治療薬に関する提携、田辺三菱製薬と化合物ライブラリー相互利用の提携を結んだ。

【経営陣】藤沢製薬出身の畑中社長、就任5年

現在、代表取締役社長を務めている畑中好彦氏は、1980年に一橋大学卒業後、藤沢製薬に入社。医療情報担当者、経営企画長、アステラファーマUS社長等を経て2011年に代表取締役社長に就任。59歳。

【株主構成】外国法人の所有が過半数

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アステラスの上位株主は信託銀行の信託口が並んでいる。信託口とは信託銀行が国内外の機関投資家からお金を預かって運用している口座を示す。組織別にみると、外国法人等が全体の51.6%(2016年9月末時点)、金融機関が32.0%となっており、特定の個人や企業の影響を受けにくい所有構造と言える。

【M&A戦略】がん・OAB・移植領域の強化を軸

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アステラス製薬は、主要領域であるがん・OAB・移植領域の強化を軸にM&Aを行ってきた。3領域にシナジーが見込めるものに対してM&Aを行ってきた一方、シナジーが見込めないものに関しては積極的に株式譲渡を行っている。

アステラス製薬のM&Aは、譲渡価額が非公開になっているものも多いが、公開されている譲渡価額はどれも大規模である。主要3領域を補完していく M&Aが顕著にみられるが、例えば、癌領域ではAgensys,Incの買収(2007年11月)、OSI Pharamaceuticals社(2010年6月)の買収、合弁会社アステラス・アムジェン・バイオファーマ社設立では癌領域の3薬剤を補完している ことなど、M&Aにより新規開発の強化を図っている。こういった経営戦略により、強化された癌領域の売上はアステラス製薬の成長に寄与している。

一方、オペレーションの効率化を理由に製造工場や3領域に遠い事業を順次譲渡している。譲渡によって得た資金を、主要領域を発展させる事業に投資するサイクルが特徴的だといえる。

【財務分析】がん、OAB治療剤の売り上げ拡大

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2016年3月期の連結売上高は1兆3,727億円(前年比0.1%増)となった。前立腺癌治療剤「イクスタンジ」、「ベシケア」と「ベタニス」 「ミラべトリック」「ベットミガ」を合わせた過活動膀胱(OAB)治療剤の売り上げが拡大し、そのほか免疫抑制剤「プログラフ」等の売り上げが順調に伸び ている。

売上高増加と売上原価率の低下により、売上総利益は前年比13.5%増加した1兆371億円となった。売上原価率は前年比2.3 ポイント低下した24.4%となった。販売費および一般管理費は「イクスタンジ」の共同販売費用の増加と為替の影響により5,004億円(前年比 10.6%増)となった。研究開発費は、開発プロジェクト費用の増加、為替の影響により2,257億円(前年比9.2%増)となった。無形資産償却費は 424億円(前年比9.6%増)だった。

コア営業利益(営業利益から減損損失などの非経常的な項目を調整項目として除外したもの)は 2,675億円(前年比23.5%増)となり、コア当期純利益は1,988億円(前年比29.7%増)、基本的1株当たり当期純利益は92.12円(前年 比32.8%増)となった。

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販売市場は日本だけではなく、米州・欧州・中東・アフリカ・アジアなど世界規模で販売している。

日本の売上高は、4,972億円と なり、このうち日本市場での売り上げは4,830億円となった。「イクスタンジ」、「ベシケア」と「ベタニス」を合わせたOAB治療剤のほか、「プログラ フ」、消炎鎮痛剤「セレコックス」、成人気管支喘息治療剤「シムビコート」、2型糖尿病治療剤「スーグラ」、高血圧症治療剤「ミカルディス」等の売上が伸 びた一方、高コレステロール血症治療剤「リピトール」や、消火性潰瘍・胃炎治療剤「ガスター」等の売上は、後発医薬品の影響等により減少した。

米州の売上高は4,551億円(前年比26.1%増)となり、現地通貨ベースでは3,788百万ドル(15.4%増)となった。「イクスタンジ」のほか、 「ベシケア」と「ミラべトリック」を合わせたOSB治療剤の売上が増えた。そのほか、心機能検査補助剤「レキスキャン」等の売上、新製品のアゾール系抗真 菌剤「クレセンバ」が増収に寄与した。

欧州、中東、アフリカでの売上高は3,293億円(前年比5.1%増)、現地通貨ベースでは2,484ユーロ(前年比10.0%増)となった。「イクスタンジ」、「ベシケア」と「ベットミガ」を合わせたOAB治療剤のほか、「プログラフ」等の売上が伸びた。

アジア・オセアニアの売上高は911億円(前年比22.8%増)となり、「プログラフ」「ハルナール」、「イクスタンジ」、「ベシケア」と「ベットミガ」を合わせたOAB治療剤が増収に寄与した。

総じて、エリア別の売上では海外比率は日本国内以上の割合を占める。

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積極的なM&Aに伴い、のれんは右肩上がりに増加している。同社は国際会計基準(IFRS)を採用しているため、のれんを定期償却しないため、増加しやすくなっている。純資産に占めるのれんの比率は2016年3月末時点で12%。自己資本比率は70%と財務は健全である。

【株価】成長鈍化で上値重く

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株価は2015年に一時2000円前後まで上昇したが、その後は上値が重くなっている。2017年3月期の業績見通しは、売上高は前期比5.3%減 は1兆3000億円、コア営業利益は2.4%増の2740億円とほぼ横ばいで、業績に踊り場感が出ていることが重荷となっている。

今期の年間配当は前期比2円増の34円を計画する。同社は機動的な自社株買いを実施する構えで、配当と自社株取得額を年間純利益で割った「総還元性向」は前期で97%となっている。株価の上昇には、自社株買いの実施など株主還元の強化が求められそうだ。

【まとめ】新薬創出と新疾患進出へM&A続く

アステラス製薬は、M&Aにより癌領域を強化し、海外市場で売り上げを順調に伸ばしている。経営計画に掲げている通り、今後も新薬創出と新 疾患領域への進出を図るためにM&Aをはじめとした投資活動は続くだろう。ただ足元では業績の成長率が鈍化している。M&Aによる成長投 資と株主還元をどのようにバランスさせ、投資家の期待に応えていくかに注目したい。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年12月13日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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