小池氏は、擦り寄る蓮舫氏を邪険にしないと差がなくなる

2016年12月13日 18:30
小池&蓮舫@都庁

都庁サイト「知事の部屋」より引用

小池都知事が新年度予算から「政党復活枠」を廃止し、その後、自民党都連が「7人の侍」を除名してから、政局は、風雲急を告げている。年内は、新党発足に向けた動きは慎重にすると見られた小池氏だが、小池塾生からの都議選での候補擁立について踏み込んで言及した。そして、昨日くらいから、相次いでこのような政局報道が相次いでいる。

小池知事を支える7人の侍は「善」といえるか(東洋経済オンライン)

蓮舫氏、小池氏に秋波…都議選での連携呼びかけ(読売新聞)

2つの記事のポイントは、小池氏と蓮舫氏がそれぞれの思惑から距離を縮める動きを見せているという点だ。上に引用した東洋経済オンラインの記事のメインタイトルは「7人の侍」だが、記事の中盤では、小池氏が民進党都議の集会に2度、出席したことが取り上げられている(筆者もSNSで当時確認した)。

このうち、江東区選出の野上ゆきえ都議の集会に出た政治的な意味は、他の都議よりも深く感じられる。野上氏の夫は、党役員室長で蓮舫氏の側近である柿沢未途・衆議院議員。当事者の思惑はどうであれ、自民党や外からみれば、呼吸を合わせているように見られてもおかしくない。

小池氏は、自民都連と対抗していく上で、民進党との距離を縮めるかのような姿勢を見せ、蓮舫氏も、自身の二重国籍問題などの影響で党勢が回復しない中、「小池人気」に便乗しようという双方の利害が一致したというところか。しかし、執筆者の安積明子氏が指摘するように、小池氏を支えているおときた氏ら3人の都議と、小池氏との距離を縮めようとしている民進党都議団の関係は、みんなの党時代から続く“遺恨”がある。仮に小池新党ができて、それらが糾合されたとしても、長期的に円満な関係になるかは極めて疑問だ。

おまけに、民進党の都議会会は結党から9か月も経つのに、旧民主党系の都議会民進党と、旧維新(元みんな)系の民進党都議団が合併しておらず、相変わらずセンシティブな空気が漂っている。

小池都政発足直後くらいまでに、私が聞いていた話では、小池氏は新党構想を実現する上で、都議会自民党から「即戦力」となる中堅・若手都議を一定数引き抜き、彼らを基盤にすることを視野に入れていたとみられる。大阪知事時代の橋下徹氏が、松井一郎、浅田均ら中堅府議を自民から引き抜く形で大阪維新の会を結党した先例をみれば、議会運営、政策立案、選挙対策、組織づくり諸々手堅く新党づくりを進められるので合理的だ。

しかし、先日、その橋下氏の小池塾講師登壇を巡ってトラブルがあったように、小池氏の政務周りのスタッフ陣容は、大量の政治塾受講生の陰でどうにも心もとない。元都議の野田数氏(特別秘書)、おときた氏らブレーンはいるものの、手勢も少数な上、やはり、維新発足時の松井氏のような要となる中堅議員であったり、あるいは手練の秘書がいるようにはどうしても感じられない。企業にたとえれば、現在の「小池新党」は、メディア露出がかまびすしい新進気鋭のベンチャー企業だけれども、内実は、プレイングマネージャー状態の数人の役員と、あとは経験不足の若手ヒラ社員が大半という、典型的な人材不足の“スタートアップ”企業ではないのか。

小池都政発足から5か月、この間、自民党の都議から造反の動きが出ておらず、逆に小池氏が民進党サイドとの距離感を縮めているのは、自民党本部との心理的な駆け引きが真意であったとしても、少なくとも現時点で外から見る限りは「調略」が不調に終わっているのではないかと強く感じさせる。

それなら、それで民進党から一部を引き抜いて、新党を作るという選択肢になるところだろうが、そうなると引き抜いてきた面々次第とはいえ、民進党カラーが強い体制になる恐れもある。都知事選で小池氏と戦った鳥越俊太郎氏を擁立するような、民進党の節操のなさに都民は失望したばかり。小池氏の勝因の一つは、前回の都知事選から大幅に投票率が上昇したことでわかるように、既存政党に期待をしていない層の多くが支持していたからであり、保守だけど改革するという「小池ブランド」が色あせないだろうか。

まさか万が一にも、蓮舫氏と新党で合流するようなことはあるまいが、距離の取り方を間違えれば、ブランド毀損は著しくなる。アゴラでも宮寺達也氏がすでに指摘しているが、「蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?」という本を出したばかりの私としては、小池氏と蓮舫氏の差が思ったより早く(小池氏にとっては)悪い意味で縮まったりしないか、というシナリオも浮かぶ。

仮に民進党から引き抜くにしても、かつての自由党、近年のみんなの党的な保守改革路線のイメージからブレず、安定的に選挙から議会まで回す陣立てにできるのかどうか。それとも自民党サイドが強烈に反撃していくのか。その攻防の行方も含め、非常に興味深く注視している。

蓮舫VS小池百合子・書影

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民進党代表選で勝ったものの、党内に禍根を残した蓮舫氏。都知事選で見事な世論マーケティングを駆使した小池氏。「初の女性首相候補」と言われた2人の政治家のケーススタディを起点に、ネット世論がリアルの社会に与えた影響を論じ、ネット選挙とネットメディアの現場視点から、政治と世論、メディアを取り巻く現場と課題について書きおろした。アゴラで好評だった都知事選の歴史を振り返った連載の加筆、増補版も収録した。

アゴラ読者の皆さまが2016年の「政治とメディア」を振り返る参考書になれば幸いです。

2016年12月吉日 新田哲史 拝

 

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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