レックス・テイラーソン:トランプが選んだテキサスのオイルマン

2016年12月17日 23:00

なぜFTにできて日本のメディアにできないのかなと疑問に思いながら、Ed Crooksの記事を読んでいる。この1週間ほどで3本目の、次期国務長官レックス・テイラーソンに関するものだ(”Rex Tillerson, the Texas oilman chosen by Trump” Dec 17, 2016 around 3:00am Tokyo time)。

読者の皆さんも「またか」と思われるかも知れないが、今日もまた新しい発見があったのでご紹介しておきたい。ロシアと交渉するためには「タフ」でなければならない、というさりげない指摘は、「山口会談」をみていると改めて納得するポイントだ。北樺太石油の契約交渉もそうだったし・・・。

今日の記事は “The president-elect’s choice for secretary of state faces tough confirmation process” というサブタイトルにあるように、テイラーソンが国務長官として承認(confirm)されるために生ずるだろう諸問題に焦点を当てている。「ロシアとの関係」ならびに「気候変動問題への対応」を再述した上で、「自由貿易」の原則について触れている。テイラーソンの信条がトランプ「大統領」の政策と合致しないことが、上院外交委員会でも問題視されるのだろうか。

・60年代後半から70年代初めにかけて、友人たちがロックフェスティバルに出かけたり、ベトナム戦争反対の声をあげている頃、レックス・テイラーソン(以下、テイラーソン)はアメリカ・ボーイスカウト連盟の大会で水中競技担当ダイレクターとして夏を過ごしていた。今やエクソンモービル(以下、エクソン)の最高経営責任者(Chief Executive)という米国有数のビジネスリーダーの一人して活躍しているテイラーソンは、今年10月、同連盟の会合で「全てのリーダーシップの訓練は、このアメリカ・ボーイスカウト連盟で受けた」と語っている。そして今、50年前に水を跳ね飛ばしながら学び得たことが、ワシントンの沼地で役に立つものかどうか、知ろうとしている(この書き出し、うまいなぁー)。

・今週、トランプに国務長官として指名され、本来なら来年退任し、再婚した妻レンダおよび4人の子供たちと過ごす時間を増やし、ボーイスカウトや教会、あるいはゴルフと好きなことをして快適なリタイアメントライフを楽しむはずだったが、代わりに大火災の中に飛び込んでいくことになった。

・彼の指名は政界のあちらこちらで非難の声を呼んでいる。環境保護主義者たちは、石油産業がワシントンで支配力を増すことに怒っている。マルコ・ルビオのような共和党タカ派はプーチンとの関係に疑念の声を挙げているが、3,800億ドルの国際的企業を率いた経験を含めた彼の強みについては無視されており、承認獲得への道は険しい。

・ボーイスカウト以外に彼を鍛え上げたのはエクソンだった。1975年にテキサス大学を卒業後すぐに入社し、41年間勤めている。石油業界において、エクソンのエンジニアリング能力は高く評価されているが、時には管理職クラスが傲慢で頑固だと批判されている。

ある人は、エクソンは「高いIQ(知能指数)を持っているがEQ(感情指数)は低い」と指摘する。テイラーソンはエクソンに見事に適合した。「プロセス重視のエクソンの社風の製造物そのものだ」と他の大手石油会社の元最高経営責任者はいう。

・彼はまたタフなネゴシエーターだった。この能力はロシアでは重要だ。彼がロシア事業の責任者となってから、サハリンⅠプロジェクトのみならず多くの取引を成功させてきた。2013年にはOrder of Friendship勲章を授与されている。この関係が米国の多くの政治家を心配させているのだ。ジョン・マケインは「自分はプーチンからの勲章は受け取らない」と批判している。だが「プーチンとの ”friendship” は仕事上の関係(a working relationship)以上の何ものでもない。たとえ嫌いでも、そこに石油があれば出かけなければならないのだ」と元最高経営責任者は指摘する。

・気候変動問題については批判者にももっと言い分がある。彼は10月「気候変動リスクが現実のものであり、真剣に対応しなければならないという見方に、我々は同意する」と述べたが、温暖化ガス排出を削減するための行動をとることに熱心だとは思えないし、石油会社が化石燃料を超えて(“beyond”。ジョン・ブラウンが社長時代、British Petroleumという社名をBPに変更したとき、我々は化石燃料を超える(beyond petroleum)会社を目指す、と発言したことを意識しているものと思われる)行くべきだとの考え方は否定している。

・テイラーソンが承認を得るためにはロシアと気候変動問題が焦点のように見えるが、他の問題が出てくるかもしれない。彼はプラグマチストで、世界の諸問題について多くは語っていない。だが、トランプ氏と異なり、公然たる自由貿易の信奉者だ。この問題を巡って、彼は内閣の中で戦わなければならないが、自説を横に置く方法もある。ボーイスカウトの義務について彼は「好きか嫌いか、賛成できるかどうかに関わらず、どのような方向に向かうのであれ、我々は市民として政府に参加する義務がある」と述べている。これは理想的な考え方だ。いま彼は、その考え方にしたがって生きようとしているが、政府の現実というものはもっとめちゃくちゃなものかも知れない。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年12月17日のブログより転載させていただきました(アイキャッチ画像はWikipediaより)。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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