のれんが極端に少ない日本 会計基準の差が競争力に影響?

2016年12月19日 06:00

cover_53505edf-e4af-4d14-a007-a0ba16d371c8

企業会計基準委員会(ASBJ)は2016年10月6日、リサーチ・ペーパー第2号「のれん及び減損に関する定量的調査」を公表した。M&Aに伴い発生するのれんや減損について米国、欧州、日本、豪州の4地域を定量的に調査し、比較している。その概要を紹介するとともに会計基準が日本企業のM&Aに与える影響について考察したい。

リサーチ・ペーパー第2号「のれん及び減損に関する定量的調査」はこちら

■のれん合計額、米国は日本の44倍

46d9576b-fb47-4828-9022-dfeab7cc9c20

まずはのれん合計額の推移をみてみる。日本は490億ドル(100円換算で4兆9000億円)。米国は2兆1490億ドル(214兆9000億円) と日本の44倍。欧州は1兆6230億ドル(162兆3000億円) と日本の33倍だ。

対象会社は、各地域の代表的な株価指数の関連銘柄で、米国はS&P500、欧州はS&PEurope350、日本は日経225、豪州はS&PASX200を採用している。

のれんの合計額が違う理由として、集計対象の企業数の違いに加えて、会計基準において、のれんが償却か非償却が大きいと推察される。

50fa3dc6-884f-44f4-b40b-bb9421de0714

次に1社あたりののれんの金額をみると、日本は3.9億ドル(390億円)に対し、米国は55.8億ドル(5580億円)と 日本の14倍、欧州は53.0億ドル(5300億円)と 日本の13倍に達する。

これは、会計基準において、のれんが償却か非償却の違いに加えて、米欧企業は企業規模が大きく、1社あたりの買収金額が大きいことも理由と推察される。

■純資産に対するのれん、日本は4%どまり

2e25bd86-5698-4bc5-ba91-0d99e9416d61

減損、取得、償却の推移をみると、日本のみ償却を計上している。その分、減損が少ない事が伺える。

ab53f344-7655-43f5-b26c-719ac05a749b

純資産に対するのれんの割合は米国、欧州では純資産の約3割に相当する。日本は4%から変動がなく、かつ米欧と比べて大幅に小さくなっている。日本はのれんを定期償却するため、金額が小さくなることが影響していると推察される。

図の出所:リサーチ・ペーパー第2号 「のれん及び減損に関する定量的調査」

■日本企業ののれん、営業利益の5倍以内が多く

次に日本企業ののれんについて実際の取引データから検証したい。2016年11月28日から12月1日までの適時開示(M&A)のうち、数値データが分かる取引を抽出して、価額、純資産とのれんの割合を算定した。

54f986de-03ae-4260-b36e-b5db95a0b332

10社平均ののれんは51億円、営業利益は12億円となった。のれんを営業利益で割った値は8.8倍、すなわち、年間営業利益の9倍近いのれんを計上していることになる。
個別にみると、インテグラルによるアデランスの買収は、106億円の負ののれんが生じている。負ののれんは会計上、定期償却ではなく、一時の利益に計上する例外的な処理となる。

そのほかの買収では、のれんを営業利益で割った値が5倍以内に収まっていることが多い。かつて日本の会計基準では、のれんを5年以内で償却していた(現在は20年以内)。この名残から、日本企業の経営者は、5年以内にのれん償却を吸収して利益を上げられるような堅実型なM&Aを比較的好むと言えるかもしれない。

■まとめ

日本の「のれん」残高が欧米と比較して極端に少ないのは、「 のれん」の償却という日本の会計基準による影響が大きい。一つは、「のれん」が毎期償却される事から、貸借対照表に蓄積しないという事 。そしてもう一つは、「のれん」の償却を恐れて、M&Aに消極的に なってしまうという事だ。

「のれん」の償却により、利益が圧縮される事から、 買収価額を抑えたいもしくはM&Aを諦めるという経営判断を、のれんを償却しない会計基準の国と比べて相対的にしやすい。日本企業でもM&Aに積極的なグローバル企業の中には、米国基準 や国際会計基準(IFRS)を適用している企業も多い。

少子高齢化等により、国内経済が伸び悩む中、 企業の持続的成長のためにM&Aの重要性が益々高まっている。会計基準によって欧米の企業との競争力を削ぎ、 経済活動を停滞させているのであれば、残念である。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年12月16日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑