「障害のある子とない子がいっしょに育つ保育現場」をやってみて

2016年12月19日 11:30

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日本の保育園は「健康で健常な子ども達のためのもの」ではないか。

なぜって、例えば子どもが熱を出したら、保育園は預かってくれないから。

子どもに重い障害があったら、保育園は受け入れてくれないから。

病児保育は足りていないし、医療的ケア児の子の行く保育園はほとんど存在していません。

これって事実上の排除じゃないか、と。

「『質の高い』保育園を!」と叫ぶ政治家や保育市民運動やってる人たちは、園庭の有無や保育園自体の広さにはものすごくこだわる一方で、認可保育園のこうした不都合な事実には目を背けます。

園庭どうこうも大切かもしれませんが、それよりも、全ての子達に保育が提供されるべきでしょう。

「保育の憲法」違反の現状

保育の世界には、保育所保育指針と言って、(わかりやすく言うと)憲法みたいなものがあります。保育士試験を通るためには、丸暗記の勢いで覚えないといけません。その一番最初に、こういう文章があります。

「保育の目標 保育所は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である。このため、保育所の保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくりだす力の基礎を培うために次の目標を目指して行わなければならない・・・」

この場合の「子ども」は全ての子どもを指しています。全ての子どもにとって、保育所というのは、「現在を最も良く生き、望ましい未来をつくりだす力の基礎を培う」場所なんです。

でも、その憲法たる保育所保育指針を事実上、守れていないじゃないか、と。(百歩譲って病児は感染するから別枠の保育によって代替するとして)障害児を排除することによって。

でも文句言っているだけじゃしょうがないから、やってみました。フローレンスでは、おうち保育園障害児保育園ヘレンという違う制度をもとに運営している園を、一緒の建物の中でやって、一体的に運営することで、「インクルーシブ(包摂的)保育」を実現してみました。

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おうち保育園すがもとヘレンすがも園の様子

2つの園は同じ建物の同じフロアにあり、おうち保育園が2016年4月に開園後、7月にヘレンが開園しました。玄関はひとつで、廊下を隔てて左右に保育室が分かれているのみ。ヘレンのお部屋にいても、おうち保育園の園児達の足音がドタドタ、泣き声も笑い声も聞こえる環境です。
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おうち保育園の園児にとっても、お散歩や遊びの時間に医療的ケアを必要とする子どもがいるのは当たり前のこと。ヘレンの子どもがおうち保育園の活動に参加すると、おうち保育園の子どもはとても喜びます。プールの水をすくってかけてあげたり、絵本を開いて持って来てくれたり、たくさんの玩具を貸してくれたり…。ヘレンの子どもが微かに表現する「嬉しい顔」を見るのが、おうち保育園の子どもにとっても何より嬉しいのです。

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ヘレンの子ども達にも変化がありました。入園前より明らかに感情表現が豊かになった子、自分でやってみようと意思を持って手や足を動かす様子が見られるようになった子もいます。保育者に見守られながら、たくさんの友達と関わることで、子どもは大人の想像を超えて成長していきます。子どもが「子どもの中で育つ」ということ。

おうち保育園の園長新保とヘレン園長の木村は声を揃えます。「子どものやりたい気持ちを大事にし、引き出すことにおいては、障害児保育も小規模保育も全く同じ。どちらの園の子どもにとっても、『お友達と遊びたい』『自分でやってみたい』という気持ちを当たり前に尊重しています」。

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おうち保育園すがも園長の神保とヘレンすがも園長の木村

地域に変化の輪が広がる

ヘレンに子どもを預ける保護者は「ヘレンすがもに通うまでは家で母子だけで過ごしてきたが、障害のない子どもとの集団保育も経験できるなんて!」と感激されていたそうです。また、おうち保育園の保護者も「他でできない良い経験になる」とヘレンの併設には大賛成していただけました。

保育士や介護士などスタッフ同士も、両園の子ども達が一緒にできる行事を考えたり、交流研修を行う中で自然にコミュニケーションが増え、自園だけの視野に留まらず、より保育への意識がオープンになったといいます。

庭を大改造して両園を迎えてくれた物件オーナーの近藤さんをはじめ、子ども達を温かく見守る地域の存在も確かに感じられるようになりました。地域住民から玩具や物品の寄付が集まったり、夏祭りやハロウィンなど季節の行事に遊びに来る人が増え、地域でもインクルーシブの輪が広がっているようです。

垣根を取り払うことを子ども達が教えてくれる、そんな現場が「おうち保育園すがも」と「ヘレンすがも」です。

迷惑扱いされがちな保育園と障害児の通所施設。でも、彼らの存在自体が、きっと地域を変えて行くことにつながっていくはず。そしていつの日か、保育所が「健康で健常な子どもたちだけのもの」ではなく、全ての子ども達に開かれた存在になっていくよう、実践を通じて、世の中に問い続けていきたいです。

追記

障害児保育園ヘレンは、日本でも珍しく、また新しい取り組みであるがゆえに、経済的に安定させるのもとても難しい事業です。ですので、寄付を募集しています。運営費や子ども達の医療器具・おもちゃ等に使わせて頂きます。

あなたの寄付によって、行き場所のない医療的ケア児たちが通える障害児保育園が増えます。ぜひご支援を。http://florence.or.jp/lp/monthly/ 


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2016年12月19日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。

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駒崎 弘樹
認定NPO法人フローレンス代表理事

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