「トラック乱入テロ」容疑者を射殺

2016年12月24日 11:00

ドイツの首都ベルリンで19日午後8時過ぎ、大型トラックが市中央部のクリスマス市場に突入し、12人が死亡、48人が重軽傷を負った「トラック乱入テロ事件」の重要容疑者、チュニジア人のアニス・アムリ容疑者(24)は23日午前3時頃、イタリアのミラノ近郊で警察官の職務質問を受けた際、銃撃戦となり、イタリア警察官に射殺されたことが明らかになった。

イタリア側の発表によれば、射殺された男の指紋が公開捜査中のアムリ容疑者のものと一致したという。同テロ事件は発生から4日後、重要容疑者の射殺で幕を閉じたが、多くの疑問も浮かび上がってきた。

ドイツ連邦検察庁は21日、アニス・アムリ容疑者をベルリンの大型トラック乱入テロ事件の実行犯と見なし、その行方を追うと共に、公開捜査に踏み出し、実行犯逮捕に繋がる情報を提供した人に10万ユーロの報奨金を与えると発表した。

検察庁によれば、トラックの中にアムリ容疑者の身分証明書(独・Duldungsbescheunigung)が見つかったこと、トラック内にポーランド出身のトラック運転手と格闘した形跡があるとともに、容疑者の指紋が見つかったことから、ドイツ側は公開捜査に踏み切った。

公開された容疑者のプロファイルによると、アムリは178センチ、75キロ、髪は黒く、目は茶色。2011年、チュニジアからイタリアに入り、放火と窃盗などの罪状で4年間余り、刑務所生活。昨年7月、ドイツに入り、国内を転々としながら、今年2月からベルリンに住んでいた。今年6月、難民申請したが、却下されている。

アムリ容疑者の名前が浮上する前は、事件発生2時間後、トラックを運転していたと思われた男(23歳でパキスタン人)が一時拘束された。男は2015年12月31日、独国境都市パッサウから難民としてドイツに入国。今年2月以降、ベルリンに住んでいた。ただし、DNA検査などでトラックの運転をしていた可能性がないことから、「証拠不十分」として20日夜、釈放されている。

ドイツのメディアによると、アムリ容疑者はベルリンから列車でフランスンに入り、同国東部シャンベリからローカル列車でイタリアのトリノに移った後、23日早朝にミラノに入り、イタリア警察官の職務質問を受けた。アムリ容疑者はリュックサックからピストルを出して警察官に発砲したが、警察官が素早く射殺したという(イタリア警察官の一人は肩を負傷する)。

これまで判明した事実から、2、3の疑問点を指摘したい。ドイツ連邦検察局はトラック内にアムリ容疑者の身分証明書が発見されたという。無差別殺人テロを画策していたテロリストが犯行時に自身の身分証明書を持参してくるだろうか。なぜ21日になって身分証明書が発見されたのか。トラック内にあったとすれば、事件直後の検証段階で見つかったはずだ。実際は、犯行後から身分証明書発見まで2日間弱の時間が経過している。

もう一つは、公開捜査後もアムリ容疑者は列車で自由に3カ国内を移動している。非常事態宣言下のフランスにも自由に移動し、列車で移動している。容疑者はフランスから列車でイタリアのトリノ市に入り、そこからミラノに移っている。そしてイタリア警察官に職務質問を受けたわけだ。アムリ容疑者は発見されることなく、ベルリンからシャンベリ、トリノ、ミラノの3カ国の都市を移動していた、という事実は何を物語っているか。

上記の疑問点について。

男は犯行後直ぐに国外逃亡する考えだったので国境を通過するためにも身分証明書(暫定的滞在許可書)が必要となる。だからズボンのポケットにいれていたが、ポーランド人運転手(37歳、体重120キロの強靭な体形だった)が抵抗し、格闘となった。最初はナイフで戦ったが、最後はピストルで射殺した。その格闘の際、男のポケットから身分証明書が落ちた。男は現場から逃げることに没頭し、身分証明書を落としたことに気がつかなかったことが考えられる。また、容疑者は偽造証明書を使い、監視が緩い列車で移動したのではないか、一応説明は可能だが、十分ではない。

いずれにしても、ドイツ警察側はアムリ容疑者を久しく「危険人物」としてマークしていた。彼がイスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)と接触していた事実も掴んでいた。にもかかわらず、ベルリンの「トラック乱入テロ事件」を防止できなかった。ベルリンのテロ事件では依然、アムリ容疑者の単独犯行か、共犯者がいたかも分かっていない。

「トラック乱入テロ事件」は重要容疑者が射殺されたことから疑問点が未回答のままになってしまう危険性がある。ドイツ当局の今後の捜査を待ちたい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年12月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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