「社会問題じゃんけん」と「マイクアピール化」時代

2016年12月24日 16:00

常見161224

2016年もあとわずか。1年を振り返る時期になってきた。なんせ、国内外で各分野で予想外の事件があり。ただ、トランプとピコ太郎ですら、何かこう点と点がつながっていそうな、多様なニュースが同じような法則のもとに起こっているように感じたりもする。

過激な、攻撃的な言葉が様々なメディアを通じて世界に広がった年だった。トランプやドゥテルテが発する言葉は過激そのものだった。国内においても「保育園落ちた日本死ね!!!」や長谷川豊氏の「人工透析患者を殺せ」発言などが話題となった。

いまさら「保育園落ちた日本死ね!!!」を振り返ってみる。1億総活躍、働き方改革に国家をあげて取り組もうとしている中、待機児童問題などが社会問題化している。

一億総活躍社会じゃねーのかよ。
昨日見事に保育園落ちたわ。
どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。

という言葉は切実な叫びである。

ご存知の通り、このブログは国会でも取り上げられたし、論争を呼んだ。

ただ、「死ね!!!」くらい言わなければ、炎上するブログを書かなくては世の中は動かないのか。もともと待機児童問題は社会問題として認識されていたのだが・・・。「言ったものがち」というか、騒げば優先順位を上げてもらえるものなのか?

「日本死ね!!!」は賛否を呼び著名な論者も含め賛成派も一定数いたが、それに対して賛否両論どころか、批判が殺到したのが長谷川豊氏の「人工透析患者を殺せ」発言だった。私は長谷川豊氏に関して、好感を持つ要素が一ミリもない。同居していた父方の祖父が人工透析をしていたというプライベートな事情もあり、彼の「人工透析患者を殺せ」発言は全く肯定できないどころか、怒りしかなかった。発言が過激であることだけでなく、彼の論拠に対する疑問も提示された。

彼は、ネット社会で気づいてもらうためには過激に言わなくてはという趣旨の発言も残している。ますますその姿勢を疑ってしまうが、感情を手放して言うならば、賛否を呼んだ「日本死ね!!!」も批判が殺到した「人工透析患者を殺せ」にしても通底するものがあり、「似て非なるもの」ではなくむしろ「非して似たるもの」ではないだろうか。

思うに、ここで起きているのは「社会問題じゃんけん」と「マイクアピール化」ではないか。社会は常に問題を抱えている。もっとも、それが必ず社会問題として認識され、対策が打たれるとは限らない。政治家や官僚はもちろん、庶民ですら問題として認識していない問題というものがある。国や自治体として対策を打つには財源も必要である。実は「社会問題」は「社会問題」と闘っている。どれだけ、問題視され、共感を呼び、具体的な対策が打たれるかどうかという「社会問題じゃんけん」が日々、行われている。

もちろん、具体的なデータ、ファクトをもとに問題提起すること、解決する政策を考えることなどはいちいち大切なのだが、そのような知性、理性による解決ではなく、感情に訴えかける手法に走り、それがある程度ワークしてしまうという。いわば、プロレスの「マイクアピール化」のような現象が世界的に起きていないか。よく言われるポピュリズムの台頭の話なのだけど、より砕いていうならば「社会問題じゃんけん」と「マイクアピール化」だ。

もちろん、プロレスのマイクアピールも大外しだったり、まったく響かないものがあるのと同様、言っている内容が支離滅裂だと響かない。昔、天山広吉と小島聡がやりあって、でも天山は具体的なセリフを言えず小島に「天山、お前は何を言っているのかわからないんだよ」と言われたことを思い出す。

そういえば、昨日、BLOGOSにのっていた上西議員問題のエントリーに関してツイートしたら・・・。

こんなレスを頂いちゃったぞ。その前後の彼女のツイートも追って判断して頂きたいのだが・・・。正直、何を言いたいのかもわからない。もっとも、このツイートで明らかなのは、「日本死ね!!!」や「人工透析患者を殺せ」と同じような、煽ることで目立たないと社会問題として認識されない(と思われている)「社会問題じゃんけん」と「マイクアピール化」の流れである。

2017年も過激な言葉が社会に広がるのだろう。扇動、熱狂に踊らされないよう、ますます知性と理性、教養が必要な時代である。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2016年12月24日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた常見氏に心より感謝申し上げます。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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