世界史の中で習近平と蓮舫はこう位置づけられる

八幡 和郎
習近平&蓮舫(人民網・八幡氏著書)

(画像出典;人民網サイト、八幡氏著書=編集部)

拙著「世界と日本がわかる 最強の世界史」(扶桑社新書)が本日、発売になりました。3月1日に「日本と世界がわかる 最強の日本史」を出して二冊でワンセットです。

この本の特徴は、世界史と日本史でワンセットになっているということと、トランプ、習近平、ISまで登場することです。現代の出来事との関連づけずに歴史を語っても意味がないというのが私の信条です。

まだ、書評なんぞ、出てませんが、事前に読んでいただいた評論家・作家でとくに中国問題の第一人者である宮崎正弘さんがメルマガでの書評で取り上げてくださっています。

「速読世界史、と言っても受験参考書のように年代を覚えるコツを述べているのではなく、本書がもっとも重視するのは『流れ』である。」

「古代人類の発生から現代史まで、しかも東洋から西洋までをわずか300ページ強の新書に混在させるのだから、見方を変えて謂えば神業に近い芸当である。」

「あたかも池になげた小石が水面をつぎつぎとかすめ飛ぶようにローマ皇帝もナポレオンも語られ、中国も秦の始皇帝以前から毛沢東、習近平までを包括する。」

そして、メルケル首相とエカテリーナ二世の肖像画のエピソードを描いていることなどが紹介されているのだが、締めくくりに、現代の中国について私が結びに近いところで書いていることが少し要約されて引用されています(下記は原文)。 

「とくに、中国では日本と違い、権力があるうちに最大限に利益を享受しないと損だと考える伝統があり、しかも、その不当利得の金額が国庫や国民経済を傾けるほどになっても平気です。また、権力維持のために、これまでの指導部は、反対派の長老を黙らせるためには、その家族に利権を与えておくのがいちばん簡単と割り切っていたようでもあります。

習近平はこの状況の悲劇的な結末を意識したのか、綱紀粛正に乗り出しており、それは正しい判断だと思います。しかし、そのかわりに、国民の支持をつなぎ止めるために、超大国としての栄光とか、領土拡張に走り出しました。

中国では過去にも漢の武帝、明の永楽帝、清の乾隆帝のように、王朝が始まって数十年したあたりで、急に膨張主義になって国威発揚による国民の不満そらしを試みた皇帝がいましたが、それに似ているともいえます。

あるいは、大日本帝国が大東亜共栄圏とかいって西太平洋と東アジアを自分の勢力圏だと言い出したのと、『一帯一路』政策は非常に似ています。

歴史に学べと戦前の日本を反省しろと中国はいいますが、戦前日本の失敗から鏡を見るように教訓を得るべきなのは、習近平の中国だと思います。

ともかく、中国は政治・経済・社会・文化などいずれをとっても巨大な開発途上国にすぎません。もし、21世紀が後進文明国のヘゲモニーのもとに置かれるほど、人類にとってこのうえない不幸はないのです。」

私はこの一節に先立って、こんなことを書いてます。

「現在の世界にとって悩ましい問題は、さしあたってはイスラム過激派であり、北朝鮮のようなならずもの国家ですが、より長期的には中国の台頭です。

中国の共産党政府は、1970年代終わりに文化大革命の混乱を収束させ、改革開放経済に移行してから、基本的にはよく頑張ったと思います。そして、その過程において、日本はおおいに貢献したと思います。

毛沢東派との権力闘争に勝って最高権力を掌握した鄧小平は、1978年に日中平和友好条約の批准書交換のため来日しましたが、このとき、自民党幹事長だった大平正芳に問われて、はじめて、改革開放の理念を語ったといいます。それに対して、大平は傾斜生産方式に始まって、所得倍増計画、貿易や資本の自由化など戦後経済政策の歩みを語り、適切な順序で手だてを講じれば、二〇年間でGDPを四倍にすることも可能だろうとしましした。それを聞いた鄧小平はようやく確信を持って本格的な改革開放路線に邁進できたのです。

 その後、鄧小平のもとで実務を担った胡耀邦は根回し不足で先走り失敗、趙紫陽は学生らを鄧小平からの奪権闘争に利用しようとして「天安門事件」を扇動し追放されました。しかし、ストイックな朱鎔基が首相として見事な経済運営を展開して中国経済を軌道に乗せました。

ところが、ドロールなきEU統合が混迷しているように、朱鎔基なき改革開放は漂流しはじめました。とくに、指導部が安い給与にもかかわらず贅沢な生活をし、子弟を海外に留学させたり、事業を展開させているのは論外です。」

また、こうした問題意識は、『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)における次のような記述にもつながってきます。難民問題については、こんな風にも書いてます。

 『2016年という年は、昨年の連続テロに続いて、移民・難民問題が西側世界を揺るがし、それが、イギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ大統領の誕生という衝撃的な出来事に結びついた。フランスの駐米大使が「世界が壊れていくのを見ているのだ」と叫んだほどだ。

たしかに移民は世界の進歩のためにも欠かせぬ現象だし、政治的難民は保護されねばならない。しかし、受け入れる方からすれば、それによって、意に反する形で文化や社会構造が変えさせられる必要はない。

企業でも資金や人材を外部から受け入れるが、乗っ取られないように安定株主を確保するし、企業文化が望まない方向に変わらないように工夫する。

それは国でも同じことで、移民が母国の利益のために受け入れ国の外交を歪めたり、もともとの住民の望まない形で文化や社会構造を変えたり、雇用条件を悪化させたりしないように考慮するのは当然のことだ。

そのためには、①受け入れの速度を適切なものにする、②どこの国からどのくらい受け入れるか合理的な範囲で選別する、③移民や難民の同化を図るという三点セットが不可欠である。

ところが、そういう配慮をせずに移民・難民を受け入れたので、人々が危機感を持ったた結果、英米両国民が極端な選択をしたのが2016年の出来事だった。

ヨーロッパでは、イスラム教徒同士の争いの結果、凶暴な勢力に抵抗しない人たちが国を捨てて逃げてくるのをヨーロッパが受け入れるので、ますます本国では困った勢力が優位に立つ。

しかも、逃げてきたとはいえ移民自身の多くも前近代的な考え方である。私はヨーロッパがイスラム教の伝統的な考え方に甘過ぎると思う。キリスト教やほかの宗教や思想で前近代的で人権侵害だとされることが、どうしてイスラムには信仰の自由として許されるのか理解不能だ。ダブルスタンダードである。フランスでブルカの着用禁止やムハンマドへの風刺の自由を擁護をするは、当然のことだ。

そして、日本に目を移すと、やはり、特定の民族や国民が同化されることなく集中的に日本に入ってくることは好ましくないと思う。とくに、彼らが日本の社会を壟断するような勢力になることはあってはならない。まして政治の分野において集団として政治勢力化しては、対策をとることすら不可能になってしまう。

私は移民の増加には、日本に入るのも出るのも一般論として賛成だ。ほどほどなら、日本はグローバリゼーションのなかで強くなるでだろう。

そこで、①爆発的な増加は避ける、②特定の国からの移民に偏らないように選別もすべき、③日本への同化政策を強く取るということが必要だと思う。そして、②と③の両方に関係しますが、親日的な国や個人を優先することも大事である。

そして、そういう意味で言うと中国、あるいは華人については、言語的に同化が容易というメリットもあるが、反日的な教育を受けているとか、華人としての意識が強く現地に同化しにくいなどというデメリットもある。

しかし、それより大問題はその数だ。国籍を問わない「華人」「華僑」の数の多さも指摘できる。中国という存在がアジア諸国にとって頭が痛いのは、そこなのだ。

アジアでEUのような共同体が現実的でないのは、議会を設けたら半数以上が中国人になるからである。難民が、例えばミャンマーから流出しても、各国の社会を変えてしまうほどにはならない。在日韓国人についてはいろいろな議論があるが、数については数十万程度のことだ。

しかし、中国人の数%が九州・沖縄に押し寄せたらどうなるのか。難民でなくとも、私が真剣に心配しているのは、沖縄に意図的に華人・華僑が住み始めたらどうなるかだ。すでに、東南アジア諸国は華人・華僑の扱いに苦慮している。

しかも、中国や台湾は、日本固有の領土である沖縄県・尖閣諸島を「自国領だ」と主張しているし、沖縄に野心を隠さないようになっている。中国とは、外交や軍事、経済など各分野で深刻な対立がある。そういうなかで、日本に人口構成を変えるほどの華人が住み、かも、政治的に大きな力を持つようなことを避けるべきだという意見を排外主義というべきではない。

南京事件や慰安婦問題についての中韓の言い分を日本政府に認めさせるためには、そのほうがよいと考えている日本人がいるようだが、まったく筋違いだ。それこそ、乗っ取りによって日本を滅ぼす気かということである。

彼らの国の政治を日本からの移民が動かせるわけでないのだから、まったく一方的にやられっぱなしになるそういう意味で、中国からの移民や難民については、政策的な観点からしっかりと把握し、コントロールすべきだと思う。(一部省略)』

そういう意味では、蓮舫さんが、二重国籍という衝撃的で分かりやすいかたちで、これから近未来的におこる問題を予告してくれたのには、日本人は感謝しなくてはならないのかもしれない。

世界と日本がわかる 最強の世界史 (扶桑社新書)
八幡 和郎
扶桑社
2016-12-24

 

蓮舫「二重国籍」のデタラメ
八幡和郎
飛鳥新社
2016-12-21