高止まりでも平穏な米株市場、来年はどうなる?

2016年12月26日 11:30

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バロンズ誌、今週のカバーはトランプ新政権下で米国を救うべき方策を提示するコラムの第5弾で”バロンズ誌が教える、米経済成長への処方箋(Barron’s Prescription for U.S. Economic Growth)”。トランプ氏は8.6兆ドルの政府支出に対し「浪費で、ペテンで、乱用だ(Waste, fraud, and abuse)」と主張してきた。その上で「我々は支出を激減させ、皆を驚かせるだろう」と発言してきたものだ。そこでバロンズ誌がトランプ氏の額面通り受け取り、成長拡大につながる支出削減案を提案する。米議会予算局(CBO)の概算に基づくと、2026年に1.2兆ドルの財政赤字が見込まれるが、バロンズ誌案は640億ドルの黒字になるという。例えば、医療保険制度改革に関わる支出を止めれば10年間で1.8兆ドル節約できる見通しだ。そのほか医療保険プログラムで1.9兆ドル、大統領直轄の2機関閉鎖で2.6兆ドル、防衛費を1.8兆ドル、金利負担を0.7兆ドル、社会福祉を0.6兆ドル、年金受給額の65歳から67歳へ引き上げなどで1,700億ドルを縮小できる。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週も株高に懐疑的な見解を寄せる。抄訳は、以下の通り。今週はいつものランダル・フォーサイス氏の代わりにコピン・タン氏が執筆した。

米株は全般的は光彩を放ち、平穏だ・・・当面は=For U.S. Stocks, All’s Calm, All’s Bright…for Now

トランプ次期大統領の誕生で米株が崩壊するとの予想の夢のあと、株価は上昇気流に乗り過去最高値を更新し続けた。ウェルズ・ファーゴ/ギャラップの調査では投資家の楽観度は過去9年間で最高を示す。S&P500のオプション動向で表すVIX指数も、2年半ぶりの水準まで低下した。S&P500のうち過去32営業日で1%以下の変動に終わったのは、30回に及ぶ。WTI原油価格は2016年に倍近くまで上昇し2014年から見るとまだ半分を取り戻したに過ぎないが、CBOE原油ETFボラティリティ指数は過去2年間で最低をつけた。

昨夏のS&P500配当利回りは2%近くで推移し、米10年債利回りの1.36%を上回っていた。しかしあれから米10年債利回りは2.5%台へ急伸し、現金を豊富に有する企業は配当を4%近く引き上げてきた。とはいえ、株価上昇を背景に配当利回りは抑制されたままだ。1929年以来、S&P500の配当利回り平均は3.83%だが、その水準へ戻すためには配当を93%引き上げるかS&P500自体を半減させるしかないが、どちらもありそうになく低金利こそ新たな標準となるのだろう。それより、米金利上昇がバラの蕾を落としてしまったりしないのだろうか?

ダウは2万ドルを手前に、高止まり。

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(出所:Stockcharts)

足元進行した株高を背景にS&P500の12ヵ月先予想株価収益率(PER)は、22.3倍へ上昇してきた。1929年以降で22倍を上回った過去9回を振り返ると下落する傾向が高く、3ヵ月後は2.6%安、6ヵ月後は6.2%安を示す

足元で中小企業から最高財務責任者まで、センチメントは格段に好転している。しかし、家計支出や高額商品の受注動向はさえない。中小企業の必需品であるピックアップ・トラックの売上は、過去数年と比較して加速していない。コンバージェックスの主席マーケット・ストラテジストのニコラス・コラス氏が指摘するように、センチメントは着実に上向いてきた。あとは新政権が期待に応じる番だろう。

新規株式公開(IPO)は2016年に105件に過ぎず、2014年の275件を下回り金融危機の衝撃が冷めやらぬ2009年以来で最低だった。ルネッサンス・キャピタルによると金額ベースでは189億ドルで、2003年以来の低水準となる。英国民投票や米大統領選など、一大イベントを控え需要が細ったとみられる。そもそも、合併・買収(M&A)の隆盛もあってウィルシャー5000指数で取引されている銘柄数は18年前の7,562から3,620へ減少した。しかし、ルネッサンス・キャピタルのキャスリーン・スミス氏は2017年にIPO市場が改善すると予想、250件にのぼる見通しだ。

会計基準が利益を押し上げる期待から、株高が継続するとの見方もある。2016年9月に改定される会計基準は株式報酬に絡み、税負担を減らし利益を押し上げるというもの。キャッシュフローにも影響する。基準変更は2016年12月から開始するため、2017年から確認できる見通しでアルファベットをはじめマイクロソフト、ユナイテッドヘルス・グループなどが一連の対象となる。

クレディ・スイス傘下のザイオン・グループによると、エクセス・タックス・ベネフィット(excess tax benefits)が影響し法人税負担を減らすという。エクセス・タックス・ベネフィットとはストック・オプションなど株式報酬にかかる賃借対照表のコスト負担(承認された当時の適正株価)と、株式報酬に掛かるタックスリターン(ストック・オプションが行使された当時の株価)の差を示す。これが企業の法人税の引き下げにつながるというのだ。

どれだけ違いが現れるかというと、S&P500構成企業の309社は2011〜15年にエクセス・タックス・ベネフィットを680億ドル計上した。今回の会計基準変更を当てはめるとS&P500の純利益を1.5%、営業キャッシュ・フロ—を0.8%それぞれ押し上げるという。しかもこうした効果はITセクターと一般消費財、ヘルスケア関連に集中し、それぞれ純利益を2.8%、2.2%、1.9%押し上げる。

しかし株価が下がるとどうなるのか?株価上昇でエクセス・タックス・ベネフィット効果が現れ法人税を引き下げると同様に、株価下落は逆に法人税負担拡大につながり利益が縮小しかねない。株価のボラティリティを生み出す可能性を示すが、上方向ではラリーを促す触媒として期待しても良いだろう。


トランプ・ラリーにあたって、筆者が何度も指摘するように実体経済を表す経済指標とセンチメント関連指標は乖離を続けています。米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は約12年ぶりの高水準でしたが、米11月個人消費支出は予想以下にとどまりました。株高を背景に資産効果が高まりホリデー商戦の波に乗って財布の紐を緩めたかと思いきや、そうでもありません。会計基準の変更が株価を押し上げるとの楽観論も、株価の変動でプラスがマイナスに働く事情もあり株高を支援する材料として弱い。歯切れの悪いコラム内容は、バロンズ誌全体の強気モードに反し2017年の米株見通しに強気になれない筆者の見解を現しているかのようです。

(カバー写真:pixelgrey/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年12月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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