草彅くん主演ドラマ「いいひと。」に思う。現実は「いいひと」がパワハラをする --- 宮寺 達也

2016年12月28日 06:00
いいひと

画像出典:いいひと。 DVD-BOXジャケット

スマスマ最終回の放送を見逃してしまったが、どうやら見なくて良かったようだ。私は「夢がMORI MORI」でSMAPを知り、「赤ずきんチャチャ」の主題歌「君色思い」をカセットテープで繰り返し聞いていた、筋金入りのSMAPファンである。だからこそ、見たいのは元気に活躍するSMAPであって、87秒間も頭を下げ続ける姿ではない。これ以上無理をする彼らを見たくない。解散は寂しいが、SMAPメンバーは心機一転して、2017年のソロ活動を頑張って欲しい。

ところで、私はSMAPの中でも草彅剛くんのファンである。特に俳優としての草彅くんが好きだ。出世作となったドラマ「いいひと。」や同じく主演の「フードファイト」はハマったものだ。特に「いいひと。」は高校生のときに見ていたので、「将来は、こんな『いいひと』がいる職場で働きたいなあ」と無邪気に思っていた。

その後、私は希望が叶って「いいひと」がたくさんいる職場に配属になり、「いいひと」による長時間労働・パワハラに苦しみ、メンタルヘルスを悪化することになる。

最初は「いいひとだと思ってたのに、実は酷いひとだった。裏切られた」と思っていた。が、良く良く会社を観察していく中で、考え違いだったことがわかった。「酷いひと」がパワハラをするのではなく、「いいひと」だからこそパワハラをするとわかったからだ。 

大企業は「いいひと」がいっぱい

これはあくまで経験則なので保証することは難しいが、終身雇用・年功序列を採用している大企業では、ほとんどの人が「いいひと」である。特にコンプライアンスに厳しい最近では、大企業の社員は礼儀正しく、口調も丁寧で、穏やかな物腰をしている人がほとんどである。殴る・蹴る・暴言を吐く・セクハラといったあからさま粗暴な人にはちょっと出会ったことが無い。

特に新卒で入社した若手は、穏やかな人しかいないと感じる。恐らく、人事がそういう人物を優先して採用しているのだろう。私のメーカー時代でも、一番粗暴と感じた同期の行動は、入社5日目で金髪に染めてきたT君(すぐに黒髪に戻した)くらいである。

私が新人で配属された職場でも、先輩や上司はみんないいひとであった。新人の私たちにも「さん」づけで話し掛けてくれるし、仕事が遅くなると心配してくれ、無理やり飲みに誘うこともなかった。しかし、一緒に飲みに行くことになった場合は古臭い武勇伝を聞かせることもなく、新人の相談に乗ってくれ、飲み代は全額奢ってくれた。電車で移動をするときは、お年寄りや妊婦の方に席を譲り、ときには車椅子の方の移動を手伝うこともあった。

さらに家庭を持っている上司は、家族愛に溢れていた。子供達の運動会・授業参観・発表会には有給を取得して参加し、職場見学では嬉しそうにお父さんの仕事を見る子供達の姿が印象的であった。

職場で一番粗暴であったのは、「年齢が上というだけで敬語を使う理由がわからない」と私に相談してきた同期の親友Yであったろう。

しかし、その数年後、私は「いいひと」からパワハラを受け、親友Yに助言を求めることになる。

無能な「いいひと」は逆境でヒステリーを起こす

私が受けた一番のパワハラは課長とチームリーダーに「仕事を一切渡されず、部署を追い出された」ことである。課長とチームリーダーは、普段は先に書いたように家族愛に溢れたいいひとである。

他には、私が担当する機能の仕様変更を他部署と相談したら、「俺に黙って相談するとは許せん」という理不尽な説教と担当外しをしてきたテーマリーダーもいた。

極め付けは忘れもしない2009年3月、当時のセンター長Sが退任するときであった。Sは吸収合併した会社の役員であったので、合併後も元の会社の役職に配慮し、センター長に就任していた。Sは役職定年で退任になったのだが、最後の権力を振り絞って、春の人事異動で元の会社の社員を一斉に2段階昇進させた。その結果、私たち生え抜き社員の人事評価と昇進は無茶苦茶になった。

Sは温厚で知られる人物で、元の会社の社員からとても慕われていた。毎週、全社員に向けて発信するメールマガジンも非常に朴訥で人柄が感じられるものであった。私たち生え抜き社員も出身会社を差別することもなく、Sを自分たちのセンター長として尊敬していた。

だからこそ、Sの行動に最初は「信じられない、何かの間違いだ」という気持ちが強かった。だが、説明を求めた私たちにSが放った言葉は「お前たちは俺の部下じゃ無い。俺の部下は元の会社の社員だけだ」という冷たいものだった。これまでに感じたことのない怒りとも悲しみとも、形容しがたいどす黒い感情を覚えた。あのとき感じた感情が「殺意」というものであろうか。なぜ殴らずに済んだのか、良く覚えていない。

なお、このセンターその後も人事の歪みを解消できず、優秀な社員が去り、技術力がどんどん下がっていった。私がメーカーを辞めた後の話であるが、2016年5月に潰れたと聞いた。

これらの「いいひと」が仕事を干すなり、えこひいきするなり、パワハラに走るのは決まって「逆境」のときであった。

私を追い出した課長とチームリーダーは、社長の肝入りプロジェクトに対して、私がプロジェクトの不備を指摘し、辞退したときにヒステリーを起こした。いいひとだから社長の期待に応えようとし、しかし無能だから私の指摘に上手く反論ができなかったため、権力で私を押さえつける方法に走った。

担当外しをしてきたテーマリーダーは、テーマの日程が遅れていたため焦っていた。そのため、ちょっとでも気に入らないことがあると、感情を抑えられなかった。

人事を操作したSは、仕事ができない元の会社の部下を心配していた。吸収した会社は設計のレベルが数段低く、同じ機種の設計をしても生え抜き社員より時間が掛かる上、ミスが多かった。そのため、生え抜き社員より人事評価が低くなっていた(まあ、当然なんだが)。もちろんS自身も無能であったため、部下を満足に指導することができなかったため、最後はなりふり構わない権力の行使に頼った。

私は、パワハラの多くは「パワハラをする以外に、状況を変える方法を知らない」無能な人間が起こすものだということを痛感した。

決して、「部下をいじめるのが大好きな」粗暴な人間が起こすとは限らないのだ。

無能な「いいひと」はあなたのそばに。豹変に備えよう

 思えば、今回のSMAP解散はジャニーズ事務所の副社長メリー喜多川氏のパワハラが発端になっている。しかし、これも見方を変えれば自分の子供である藤島ジュリー景子氏を守りたいという家族愛であり、メリー氏はいいひとであるとも言える。

裏切り者と評価を地に落としたキムタクも、家族を守りたからジャニーズに残ると決断したのであり、いいひとであるとも言える。しかし、その結果SMAPの仲間を窮地に追いやり、SMAPは解散した。

他には、「最低でも県外」で沖縄基地問題を大混乱に追いやった鳩山元総理もいいひとだし、倒産したJALも、赤字路線と社員の高給を必死で守って来たいいひと達の経営の結果だ。

別にこれらの行動を擁護したいのではない。パワハラや愚行は、その人の心の善し悪しを見ても判断できないということだ。

今はあなたのそばで、あなたのために行動し、あなたも好意を感じている人物も、ちょっと状況が変わればあなたに危害を加える存在に豹変するかもしれない。

大切なのは、その人が危機的状況で冷静に行動できる、有能な人物であるかどうかだ。自分の身を守るためには、人を無条件に受け入れるのではなく、常にその行動と結果を冷静に見極めよう。

願わくば、草彅くんが「いいひと。」で演じた北野優二のように、「自分の周りの人の幸せが自分の幸せ」がポリシーの人がもっと増えれば、世の中暮らしやすくなるのになあ。

 

宮寺達也 パテントマスター/アゴラ出版道場一期生
プロフィール
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。

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