日銀の金融政策は市場経済の否定を意味する

2016年12月28日 06:00

日本銀行 日銀(写真AC)

行財政改革への逆流

今年の日本株の最大の買い手は日銀で、4兆円という購入額は、これまでの最大手である信託銀行や事業法人をしのぎます(日経新聞25日)。日銀は日本国債もほとんど一人で買いまくり、保有額は400兆円を突破しています。日銀史上、こんなことはかつてなかったでしょう。デフレ経済のからの脱却という名目でやっているうちに、民間主導経済の否定、官製経済の復活に踏み込んでしまっているのです。

これでは市場機能が働かなくなるのは当然です。日銀はマネー金利を強引にマイナスないしゼロに抑え込み、コントロールしています。株価も下がりそうになると、日銀や準官製マネーの年金基金が買い出動し、実質的に下落しないようにコントロールしているのも同然です。よかれと思ってやっていることが、市場機能の否定、つまり市場経済の否定につながっているのですね。恐ろしいことです。

官製金利(金融)に官製相場(株式)がもたらす弊害は大きいですね。日銀は、2%の消費者物価目標が達成できるまで異常な金融政策を続けるつもりです。達成できないであろう目標を達成するまで続ける。たとえ達成できたとしてもデフレ脱却の結果ではなく、ドル高・円安、原油高などからくる輸入物価の上昇の結果でしょうから、少しも喜べません。黒田総裁の釈明の材料に使われるだけです。

官製マネーが大手を振る

これまでの行財政改革で、多くの公社、公団が民営化され、株式が上場されました。日経の調べでは、今年の株式の買い越し額は日銀4兆円、信託銀行3.5兆円、事業法人2兆円などで、個人や外国人は大幅な売り越しです。信託銀行の分には年金基金が含まれますから、官製マネーが中心といってもいいでしょう。

日銀が購入しているのは上場投信(ETF)で、日経平均を構成する225銘柄が含まれます。その結果、225銘柄のうち75%で日銀が大株主の上位10位以内に名を連ねています。ヤマハ、セコム、カシオなどでは日銀が筆頭株主だそうです。2017年には全体の4分の1で、日銀が筆頭株主になるとか。いやはや。

日銀が保有する国債は、政府が発行する国債残高の4割に達しています。今後も毎年80兆円、買い込む予定ですから、いずれ買える国債が市場にはなくなる日が想像されます。来年度予算案での国債発行額(新規発行)は34兆円より、はるかに多いのは、流通市場(既発債)から買い込んでいるからです。

弊害が大きい日銀の市場対話

さらに問題なのは、日銀が市場との対話と称する市場誘導政策です。対話という美名のもとで、日銀が考えている方向から市場がはみ出さないように仕向けるということです。金融政策の意図を正しく理解してもらい、過剰反応、誤解や錯覚に基づく反応を防ぎたいと、日銀は考えているのでしょう。それは間違いです。

市場というのは、さまざまな見方、考え方が交錯しながら、試行錯誤で、ある方向を生み出して行く。人間の頭脳を信じた計画経済、社会主義経済にはそれがないから滅び、市場経済が生き残ったのです。市場との対話とは、市場を通した調節機能の否定を意味します。「市場との対話」対する批判が専門家からもメディアからも聞かれないのは、どうしたことでしょうか。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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