黒崎愛海さんの目撃情報か?容疑者の人物像は?

2016年12月29日 06:00

前回に引き続き、フランスで邦人留学生が行方不明となっている事件について、フランス語メディアでは言及されているが日本語メディアではほとんど言及されていないこと、逆に日本語メディアのみで言及されていること等を明らかにしていきたい。これによって少しでも情報を補うことが出来れば幸いである。

黒崎さんは19日にヴェルダンで目撃されていた?

昨日(フランス時間)のL’Est Républicainの報道によると、4日以来失踪していた日本人留学生の黒崎愛海(Narumi Kurosaki)さんと思われる人物を19日に目撃したとの証言が、ヴェルダン(Verdun)の(Le Miribel)というバーの店主及び従業員の女性から得られたという。

彼らによれば、愛海さんがLe Miribelを訪れた時には「精神的に相当ダメージを受けており」(moralement détruite)、涙を流しながらずっと電話をかけ続けていたという。

目撃時点では愛海さん失踪の報道はまだされていなかったので、バーの店主らは後に報道を見て目撃情報の提供を決断したものの、愛海さん目撃時点では彼女が何らかの事件に巻き込まれているとまでは想定できなかったとのことである。

とはいえ、警察によればこのバーで愛海さんが使用したはずの銀行カードの使用履歴も携帯電話の使用履歴も残っておらず、両方とも四日以降は一切使用されていないことになっている。

田舎のフランス人がアジア系女性の顔をはっきり見分けることが出来ないとしても何の不思議もないので、単に人違いの可能性も勿論あるが、もしLe Miribelの店主らが目撃したアジア人女性が本当に愛海さんなのであれば、銀行カードや携帯電話に履歴が全く残っていないという警察側の情報とは齟齬をきたしている。

容疑者は「アメリカ」(北か南かは明らかでない)出身?

また、日本のメディアの中では最も早く現地に駆けつけたと言われているテレビ朝日の報道によれば、容疑者は「北あるいは南アメリカ大陸出身」だとのことだ。フランスのメディアにはこの情報は流されていないかあるいはメディア側が意図的に秘匿しているようで、現段階ではテレビ朝日以外の情報機関からはフランスのメディアを含めて確認できない。従ってこの報道の真偽はわからないが、仮に本当にアメリカ大陸出身だとしても、アメリカ大陸は人種のるつぼである以上これだけでは何もはっきりしたことはわからない。むしろこの情報によって無難に「容疑者の出自」に関する詮索をはぐらかされているかのような印象さえ受ける。

加えて日本の様々な報道によれば容疑者と被害者は被害者の渡仏以前から知り合いであり、かつ容疑者は被害者の通う学校とは関わりのない人物だったとのことであるが、今回の事件は一般的な「恋愛事情のもつれ」の結果だとは考え難い。インターネットで知り合った相手に対し、通常の恋愛に伴う程度の「怨恨」のみを理由に国境をまたいだ周到な犯行を計画するというのは明らかに常軌を逸しているからだ。とはいえ、仮に犯人が猟奇的なシリアルキラーなのだとしても、無数に存在する「インターネット上で知り合える人々」の中から何故愛海さんを選んだのかは極めて不可解だ。その理由次第では、この犯人は実は同様の手口で既に複数人を殺害している可能性もある。

実際、犯人のフランス語能力はそれほど高くないという報道を信じるならば、この犯人はフランス語にそれほど関心があるわけではなさそうである。またフランスの教育機関に属しておらず、犯行後速やかに出国している点と合わせて考えれば、わざわざ愛海さんに危害を加える為だけに計画的に渡仏してきたように見える。北米あるいは南米出身者ならば、死刑制度のある自国や日本ではなく万が一現地警察に捕まってもその場で死刑宣告を受ける恐れのないEU圏内で犯行を行おうという狡猾な考えがあったのかもしれない。

もし情報秘匿の理由が単に「政治的正しさ」のためではないのなら。。

他方、フランス警察は何を根拠に殺害の可能性を確信しているのか。19日の愛海さん目撃情報が本当なのであれば、彼女は一体どこで殺害されたのか。実は誘拐されたに過ぎない可能性は全くないのだろうか。

警察側は目撃情報を受けて愛海さんが既に死亡している(ある仏語メディアの表現では、”il est trop tard pour retrouver l’étudiante en vie”)可能性の確信を「100%から99%に」下げたとのことだが、この事件はあまりに不可解であるし警察側の一連の対応そのものもあまりに謎めいている。

最も気になるのは、何故警察側が容疑者の情報をもっと公開しないのかという点である。まず、これまでの報道によれば容疑者は少なくとも未成年ではなく20代の男性である(一部報道では25歳と特定されている)とされているので、少年法的な未成年保護が目的でないのは明らかだ。また容疑者がフランスのメディアが神経質になりがちな北アフリカ系のムスリム男性でも黒人男性でもなく「米大陸」出身者であるならば、国籍を公表しないのは必ずしも「人種的偏見を増長する恐れ」があるからという「政治的に正しい」配慮によるものとは限らないということになる。また被害者は既に死亡していると警察は見ているのなら、容疑者を刺激しない為等の理由での自粛も筋が通らない。決定的証拠が無いにしても容疑者を特定できているのであれば、警察側が連続犯あるいは猟奇犯の可能性を疑ってさえいる以上、公衆に警戒を促す為にも犯人の詳細情報をなるべく公開すべきではないのだろうか。少なくともフランス国外に逃亡しているという現状を踏まえれば、具体的な「国籍」及び現在地くらいは明かしても良さそうなものだ。それなのに公開しないというのは、これが意図的なのであれば逆に単なる「ポリコレ」よりももっと気味の悪い「きな臭さ」を感じさせる。

それにしても、フランス警察がまだ実行に至っていないテロリストを事前に逮捕する能力があるほど優秀なのであれば、既に重罪の構成要件該当性を満たしていると思われる人物を一刻も早く逮捕してほしいものだ。

*補足

筑波大の本件に関する会見に関して。「文化の壁を全く感じさせない」グローバル人材という言い回しには、やはり一定の危うさを感じさせるものがある。文化の壁は明らかに存在するし、意識的に乗り越えなければ簡単には超えられない。壁があることに気づきもせず誤解を重ねている現実を無視して自己満足に浸るのは難しくないが、それは壁が「ない」ということを意味するわけでも、壁が簡単に打ち破れるということを証明するわけでもない。壁を意識し過ぎて臆病になるのも無意味だが、壁などないと妄想して現実を見ないのは危険である。

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