M&Aで振り返る2016年 大型買収、再編の当たり年に

2017年01月01日 06:00

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2016年は英国のEU(欧州連合)の離脱決定や米大統領選など様々な出来事がありました。M&A Onlineの今年最後の記事では、各月で印象に残ったM&Aニュースを通じて16年を振り返りたいと思います。

1月

トヨタ自動車、ダイハツ工業を株式交換により完全子会社化

ダイハツ工業は内燃機関の製造・販売を目的に1907年に設立されました。トヨタ自動車とは1967年から業務提携を開始。トヨタは1998年に株式公開買付けを実施しダイハツ株の過半数を取得していましたが、ついに2016年1月、完全子会社化を決断します。トヨタは小型車の製造技術や新興国市場で強みを持つダイハツを取り込み、世界の小型車市場で成長を加速する狙いがあります。

2月

シャープ、第三者割当による新株式発行により経営権を鴻海グループに譲渡

経営危機に陥ったシャープ。政府系ファンドの産業革新機構と台湾の鴻海精密工業が買収に名乗りを上げましたが、シャープ経営陣が選んだのはより大きな出資額を提示した鴻海でした。シャープの発表直後に鴻海が出資の延期を発表する混乱もありましたが、8月に無事に増資資金の払込を完了。鴻海はシャープに社長を送り込み、再建を急いでいます。

3月

東芝、東芝メディカルシステムズをキヤノンへ約6655億円で譲渡

不正会計事件に揺れた東芝。リストラの一環として医療機器事業を手がける子会社の東芝メディカルシステムズを譲渡する方針で、動向が注目されていました。富士フイルムホールディングスなども名乗りを上げるなかで、買収したのはキヤノンです。キヤノンは東芝メディカルの買収でヘルスケア事業の強化を実現しましたが、買収手法を巡って公正取引委員会から注意を受け、後味の悪さも残りました。

4月

DCMホールディングスとケーヨー、株式交換による経営統合へ

ホームセンター業界は国内消費の低迷と競争激化を背景に経営環境は厳しさを増しています。こうした中、最大手のDCMホールディングスはケーヨーと経営統合に向けた協議を始めると発表しました。共通商品などのスケールメリットを生かした仕入れや商品開発、店舗開発などで相乗効果を見込んでいます。2017年4月までをめどに経営統合契約の締結をめざしています。

5月

日産自動車、三菱自動車工業の第三者割当増資引受けにより筆頭株主

燃費データの不正行為が発覚した三菱自動車。経営が大きく揺れるなかで、素早く救済に動いたのは三菱グループではなく、カルロス・ゴーン社長率いる日産自動車でした。日産は10月、2373億円を投じて三菱自動車の第三者割当増資を引き受け、筆頭株主に浮上しました。両社は電気自動車(EV)の開発に力を入れており、EV普及に追い風になりそうです。

6月

GMOインターネット、あおぞら銀行及びあおぞら信託銀行とインターネット銀行共同運営へ

2016年に流行した言葉の一つがフィンテック。IT(情報技術)を活用した新たな金融サービスの開発に向けてM&Aが活発になりました。電子商取引(EC)向け決済代行サービスなどを提供するGMOインターネットと中小企業向け取引に強みを持つあおぞら銀行グループは共同でインターネット銀行を立ち上げます。2017年中の営業開始をめざします。

7月

ソフトバンクグループ、世界有数のテクノロジー企業ARMを完全子会社化

2016年で最も話題を呼んだM&Aといえば、こちらではないでしょうか。孫正義社長が率いるソフトバンクグループが英国の半導体設計開発会社のARM(アーム)ホールディングスの買収を発表。純資産2529億円の会社に投じる買収資金が約3.3兆円と桁違いの金額が市場を驚かせました。あらゆるものがインターネットにつながるIoT時代をにらんで、中核となる半導体技術を持つアームの将来性を高く評価した格好ですが、成否が問われるのはこれからです。

8月

日本電産、米国Emerson Electric Co.のモータ・ドライブ事業及び発電機事業を買収

M&A巧者の異名をとる日本電産が久しぶりの大型買収を決めました。米エマソン・エレクトリックのモーター・ドライブ事業および発電機事業の取得に投じたのは12億ドル。同社にとって過去最大規模の買収案件となります。日本電産は北米や欧州に強みを持つエマソンの事業を取り込み、成長分野と位置づける産業・商業用事業を強化していく考えです。

9月

三菱商事、ローソンを公開買付けにより1440億円で連結子会社化へ

コンビニエンスストア業界2位のローソン。首位のセブン-イレブン追撃に向け、筆頭株主である三菱商事がテコ入れに動き出しました。株式公開買付けでローソンへの出資比率を33%から50%に高めて連結子会社化します。取得金額は1440億円。三菱商事のネットワークや人的資源を活用し、国内や海外でコンビニ事業を強化していきます。

10月

エイチ・ツー・オー リテイリング、セブン&アイ・ホールディングスと資本業務提携

2016年はコーポレートガバナンス(企業統治)が話題になった年でもありました。セブン&アイ・ホールディングスでは長年にわたり同社の経営を率いてきた鈴木敏文氏が電撃的な会長辞任を表明。5月に就任した井阪隆一社長は半年後、関西を地盤に百貨店を運営するエイチ・ツー・オー リテイリングとの資本業務提携を決めました。発行済株式の3%程度を相互に持ち合うほか、セブン&アイ傘下にある関西の百貨店をエイチ・ツー・オーが引き継ぎます。

11月

アコーディアゴルフ、MBKP Resortによる公開買付の実施に賛同

2016年はファンドによるM&AやMBOも活発になりました。アジアを拠点に活動する独立系プライベートエクイティファンドのMBKパートナーズは、ゴルフ場の所有・運営を行うアコーディアゴルフに対する株式公開買付けを実施しました。買付総額は853億円。アコーディアゴルフは非公開化してゴルフ場の価値向上に向けた設備投資や国内外のゴルフ場の買収加速、インバウンド(訪日観光客)需要の獲得の強化を図ります。

12月

出光興産、ロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル石油株式の取得完了へ

石油元売り業界の再編も注目を集めました。2017年4月に経営統合を予定していた出光興産と昭和シェル石油は出光の創業家の合併反対で、統合時期の延期を余儀なくされました。事態が膠着する中、12月、出光は英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル株の31.3%(当初予定の33.3%から変更)を取得しました。出光と昭和シェルは今後、経営統合に向けた協議を続け、創業家の理解を取り付けていきたい考えです。

振り返ると2016年は様々な業界で大型買収や再編が進んだ「M&Aの当たり年」と言えそうです。シャープや東芝のように経営危機によって身売りや事業譲渡を余儀なくされるケースもありました。ソフトバンクの英アーム買収、日産の三菱自動車出資はカリスマ経営者の素早い決断力が光りました。一方、出光興産と昭和シェルの統合問題はM&Aにおいて創業家を含めた幅広い利害関係者の理解を得ることの難しさや大切さを改めて認識させられました。

2016年に種がまかれたM&Aは2017年にかけてどのような花を咲かせていくのでしょうか。M&A Onlineでは今後の動向に注目して参ります。


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年12月31日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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