今年のキーワードは「超えて繋ぐ」

2017年01月03日 16:00

明けましておめでとうございます。

いつもはセントラルパークでジョギングして年を越すのが恒例だったのですが、昨年夏にNY郊外に引っ越したので、今年は自宅でのんびり年を越しました。やはり住むところを変えるとライフスタイルも変化を余儀なくされるので、良いものだと思いました(これについては、別のポストで書いてみようと思います)。

さて、2017年は日本のスポーツ界にとってどんな年になるのでしょうか? 個人的には「超えて繋ぐ(つなぐ)」がキーワードになるのではないかと思っています。

スポーツは日本を再興するか?」でも書きましたが、昨年の日本スポーツ界の大きな動きの1つとして、政府が日本再興戦略の柱として「スポーツの成長産業化」を10の官民戦略プロジェクトの1つとして掲げたことが挙げらるのではないかと思います。スポーツが産業として認められるだけではなく、成長産業として期待されているというのは、とても画期的なことです。

政府は現状5.5兆円のスポーツ産業を2020年までに10兆円、2025年までに15兆円にするという意欲的な試算をしています。スポーツ庁の審議会の1つ、スポーツ未来開拓会議は昨年6月に提示した中間報告の中で、その内訳(中間報告P9。該当する表を以下に抜粋)を公表しています。

これは昨年末に開催したSBAのYear-End Partyで荒木さんと行ったディスカッションのテーマにもなりましたが、率直に言って数字だけ見るとなかなか達成するまでの道筋が見えない、やや唐突感のあるものになっています。例えば、スポーツ産業の中核とも言うべきプロスポーツに関しては、現状3000億の市場を5年後に7000億、10年後に1兆1000億円にするという試算になっています。

プロスポーツでは、プロ野球が約1500~1800億、Jリーグが約1000億というところが現状だと思いますが、この数値はここ20年ほとんど変わっていないものです。それをあと5年単位で倍々ゲームで進めていくというのは、ちょっとまだイメージが沸きません。

恐らく、成長のシナリオまで考えて作られた数字ではないのではないかと思います。プロスポーツの中心にいる人たちでこの数字を知っている人はあまりいないと思います。

政府はスポーツ産業の成長の柱として、スマートベニュー構想や大学スポーツの事業化などを掲げていますが、共通して見られるのは、最大の当事者との連携があまり取れていない「中空構造」とも言うべき状態で、とにかく数字を作ることを目的に「外の人」が見切り発車的に進めてしまっている感が否めません。まあ、政治とはそういうものだと言われれば、そうなのかもしれませんが。

僕が知っている範囲でですが、スマートベニュー構想にしても(政治案件は除いて)民間事業でこの考えを採用しているプロジェクトはまだあまり聞いたことがないですし、大学スポーツの事業化にしても、肝心の大学当事者から事業化に舵を切りたいという話があまり聞こえてきません。それでも5年後にはJリーグの同程度の1000億円の市場を目指すことになっています。少なくとも、今からすぐにでも100くらいの大学が事業化に舵を切って行かないと間に合わない数字です。

とはいえ、政府が音頭を取ってスポーツを成長産業化しようと掛け声をかけてくれるのは千載一遇のチャンスですから、この流れをスポーツや大学の「中の人」ももっとうまく使って行った方が良いですよね。今後は、この中心と周辺の断絶を超えて繋げていくことで成長シナリオを現実に即して精緻化していくことが必要になっていくと思います。

また、スポーツビジネスのガバナンスという意味では、実は日本は非常にユニークな国なんです。例えば、アメリカにいれば戦力均衡を是とした「閉鎖型」のモデルしか基本的に存在しませんし、ヨーロッパなら対照的に自由競争による優勝劣敗を是とした「開放型」モデルがサッカーなどで主流です。

ところが、日本は「閉鎖型」のプロ野球と「開放型」のJリーグが2大プロリーグとして併存し、しかも両者のハイブリッドを志向するBリーグが昨年設立されました。様々なガバナンスモデルが混在している国というのは珍しいと思います。しかし、一方で日本は競技の壁が厚く、プロ野球は野球出身者が、Jリーグがサッカー出身者が固まり、現状のビジネスモデルがドグマ化し易いという負の特徴も併せ持っています。

今後は競技の壁を超え、野球の常識をサッカー出身者が疑ったり、その逆もあったりする中で最適な経営手法が志向されるようなダイナミックな意思決定ができれば、今までになかった成長シナリオを描くことができるかもしれません。そのような、競技を超えて繋ぐ人材が必要になっていくと思います。

また、2017年は日本でもスポーツ組織が社会課題の解決者としての可能性に気づき、その自覚のもとで協賛活動の枠組みの中でソーシャルイシューを解決していく「ソーシャルスポンサーシップ」元年になるのではないかという予感がします。スポーツが持つ「ボンド」(ステークホルダーを巻き込む)機能と「アンプ」(影響力を拡散する)機能を用いることで、従来までソーシャルセクターだけでは資金的・規模的に限界があった活動にイノベーションをもたらすことが期待されています。

年末のポストでも書きましたが、米国では約10年前にスポーツ組織がそのValue Propositionを大きく変え、社会課題解決ツールとしての役割を自覚し行動してきた結果、今や社会的にその効果が認知されるまでになりました。日本も、「スポーツ」「ソーシャルセクター」「企業」の3つの領域を超えて繋げるプロデューサーが必要な時代に突入していくのではないかと思っています。

ということで、2017年はどんどん超えて、繋げて行きましょう!


編集部より:この記事は、ニューヨーク在住のスポーツマーケティングコンサルタント、鈴木友也氏のブログ「スポーツビジネス from NY」2017年1月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はスポーツビジネス from NYをご覧ください。

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鈴木 友也
スポーツマーケティングコンサルタント

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