安倍首相はなぜ家庭料理を食べない

2017年01月05日 22:00

町中での会食相手も選り好み

多くの新聞が内政面に、「首相の動静」、「首相の一日」などタイトルで、前夜に会食した人の実名、レストラン、料理屋の名称などの記録まで載せています。目を通していると、見えてくるものがあります。

女性尊重の時代といいつつ、自宅で夫人の家庭料理を食べる回数がこれほど少ない首相は珍しいですね。不思議です。いかに多忙な首相とはいえ、社会の手本にはなりません。次に、テロがよく起きる欧米先進国では、大統領、首相が連日、市中のレストランで会食をすることは、極めて無防備で危険と考えるでしょう。しかも会食場所、相手の名前まで連日、公表し、新聞が掲載する国も日本ぐらいでしょうか。

持病克服の宣伝効果を狙う

安倍首相は持病の潰瘍性大腸炎で首相を辞任した経験があります。その後、特効薬が開発され、健康を回復したそうです。食欲旺盛、スタミナ旺盛を世論向けに示し、健康体であることを示す狙いも込めているのでしょうか。

ウイークデーの大半は相手を招いた会食に当て、1晩で2か所をハシゴすることもあります。企業の役員クラスにもそういう人はいるでしょう。首相の場合は、午前と午後に分刻みで日程をこなし、それも重要な案件ばかりです。それからまた、夜の会食で天下国家を論じているのでしょうから、密度は濃く、体力的な負担は重いことでしょう。

これでは考える時間がなくなる

超人的なスケジュールです。外遊も頻繁で、年末には真珠湾攻撃の地でオバマ大統領と追悼式に臨みました。他人がマネできないほどの体力、スタミナがおありなのでしょう。私の古くからの知人で、政治家を知り尽くす元政府高官がいいました。「精力的で結構という反面、もっと考える時間を持つべきだ。この困難な時代に、熟考する時間が圧倒的に少ないのではないか」と。余計な心配ですかね。

料理の種類も恐るべき数で、フグ料理、京料理、じゃぶしゃぶ、仏料理、中華料理などと多方面にわたります。首相はけた違いの交際費を使えますから、経費の心配はいりません。料理の種類の豊富さに比べると、会食の相手はかなり限られ、選り好みしていますね。財界のトップクラス、マスコミ関係者、政治家、親しい友人、親類縁者などです。

気になるのは、財界総理と言われる経団連会長がしばしばゴルフを含め相手を務め、まるで安倍政権の経済部長のようです。世界はグローバル化なのですから、経済界のトップはもっと各国に人脈を広げ、新しい時代を見据える知見を蓄積すべきです。国内にとどまり首相と会合を重ねるより、そのほうがずっと役に立つはずです。

経団連会長は海外を飛び回れ

ソフトバンクの孫正義氏は、世界を飛び回る行動力を持ち、トランプ(米)、メイ(英)、プーチン(ロ)氏らトップと直接、会ったし、差しで話ができます。経団連会長に行動力はあるのでしょうか。首相の招待があってもほどほどに断り、世界を飛び回ることを優先すべきです。

新聞、テレビも企業トップから現役のジャーナリストまで、首相はしばしば会食します。オバマ大統領やメルケル首相の国では、政治権力者とジャーナリズムがこんな関係を保つことはないでしょう。最高権力者に招かれたことを誇り、また首相側からの情報に接するつもりだったのが、いつのまにか取り込まれ、政権に対するジャーナリズムとしての公正な判断力が失われていく。日本は稀な国です。

「おやっ」と思ったのが、「加計学園」という学校法人の理事長です。保育園、中高一貫校、大学、老人施設まで持つグループです。30年来の友人といわれ、会食相手にしばしば登場します。一般の人にとっては無名の学校法人ですから、「首相動静」に載せてあげ、宣伝を手伝うとの意図があるのかもしれません。教育関係者なら、東大、京大総長らを相手に、基礎研究の充実策でも意見交換すべきでしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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