日本の文化的保守性は欧米にも見直されている

2017年01月10日 06:00

先日YouTubeで興味深い動画を見た。タイトルは、「Why Japan Refuses immigration and Multiculturalism」(なぜ日本は移民と多文化主義を拒否しているのか)である。欧米の保守系論客が日本に言及することはそれほど珍しくもないとはいえ決して多いわけではないし、場合によっては保守系だからこそ日本に対して否定的な見解が表明されることもある。特に米国人にとっては真珠湾攻撃と核爆弾投下の関係という問題は一種のトラウマである。

欧米保守派の日本観は変わりつつある

米国人としての愛国心に基づけばHiroshimaは正当な攻撃であったと言わねばならないが、西洋世界でもこれが本当に倫理的に問題のない許された行為であったと今日でも考えているのはおよそ米国人の保守派くらいのもので、政治的に正しいリベラル派は勿論欧州の保守系知識人でさえ、この件に関してはアメリカは非道であったのであり、決して正当化されるべきではないという見方の方が支持されている。

例えばVirtue Ethicsと呼ばれるアリストテレス倫理学に端を発する学派の現代的基礎をつくったことで知られ、またWittgensteinの最初期の解説者としても知られる英国の女性哲学者Anscombe氏などは、1956年の時点で既に米軍の原爆投下を「功利主義」に基づいて倫理的に正当化するのは詭弁であり、これほど非人道的なことはないとOxfordの男性教授たちを前に一人で大論陣を張ったが、今日ではむしろAnscombe氏のvirtue ethicsに基づく見解の方が「功利主義」よりも支持しうるものであるというのは英語圏で哲学を学ぶ学生にとっては常識となっている。というのも、功利主義を批判するのはvirtue ethicsを批判することよりも何倍も簡単なので、功利主義批判をエッセイのトピックに選ぶ人が実に多いからである。

従って「功利主義」を使って原爆投下を正当化するのは知的怠慢以外の何でもないという「空気」は欧州にもあるのだが、それでも例外としてアメリカ人は時にこの件に関して複雑な思いを持つものだ。

ところがそのアメリカ人の若い愛国的保守派と思われるYoutuberの一人が、日本を全く別の視点から絶賛する動画を投稿している。内容はリンク先を開いていただければわかるが、彼の論旨を簡単に要約すれば、『日本は欧米の「多文化主義」というイデオロギーに毒されることなく自己の文化を堅持し、現世代の老人の年金確保という目先の利益の為に移民を大量に受け入れるという愚行に走らず、より長期的視点に立って堅実に(移民というマジックカードを使わずに)経済成長戦略を立てている素晴らしい国である』というところだろう。

単にリベラル派のイデオロギー的言説に留まらず、純粋に経済学的視点からも欧米の知識人はよく日本の閉鎖性を批判し、このままでは「人口減少社会」の到来は免れず、それは日本を経済危機に陥れるだろうという暗い予想ばかりをして何とか日本にも移民政策を実施させようとあの手この手を使ってきていたが、彼らがそんなことを言うようになって10年以上経っても一向に日本の経済は欧米ほど危機的状況に陥らず、むしろ欧米の方が移民によって政治経済的危機に苛まれるという事態に至っている。この状況の中、心ある欧米市民はそろそろ日本の正しさに気づき始め、これまでの方針を180度転換し日本を理想郷のように見るようになってきた。

今まで欧米人は日本を「社会的に少し遅れた、アジアにしてはそこそこ頑張っているが、文化的には頑迷で保守性の強い、女性が抑圧され同性愛への理解も進まない、テクノロジー一辺倒な割には科学的思考も出来ず、21世紀になっても英語もまともに話せず、奇妙な小児愛的ポルノアニメ(Hentai)にも制限をしない、よくわからないが気味の悪い国」程度に思っていた。無論今でも東アジアに関心のない欧米人は大なり小なりこういう偏見を持っている。

だが、そうはいっても最近この屈辱的ステレオタイプは改善しつつある。自国の状況に絶望しつつある今の欧米人の眼には日本は「下らない西側のイデオロギーに惑わされることなく自国の文化と伝統を守り、日常生活における最新技術の浸透度は欧州など比べ物にならないほど進み経済規模も非常に大きく、その一方で東京のような規模でいえば世界最大級の都市でさえ治安がすこぶる良く、安全で衛生的かつ秩序が保たれており、災害が生じてもそれほど大規模な混乱が生じることもなく、レベルの高いアニメ作品やビデオゲームなどの娯楽が充実しており、食品の物価も比較的安く、失業率がとんでもなく低い、出来ることなら一度は住んでみたい国」と映っている。今の日本は、一周回って世界最先端の先進国なのであり、欧米が目指したくても最早たどり着けない理想的状態に近いのである。

とはいえ、日本にも不法移民の影は存在する

このようにせっかく欧米人が憧れるほどの奇跡を実現している日本であるが、他方で最近は徐々に事実上の「不法移民」が増えていると聞く。例えば西日本新聞電子版では、「新 移民時代」という連載の第六回で「偽装難民申請」を利用して事実上の出稼ぎ労働に従事する外国人「留学生」達の実態をリポートしている。

実際東京では、既に飲食店の「アルバイト」の多くは見た目は東アジア系でも日本語がイマイチ通じない外国人と思われる労働者で占められている。欧米人から見れば違いはあまりないかもしれないが、都会におけるアジア系外国人の存在感が日々高まっているのは紛れもない事実である。それも、単に観光客としてのみではなく、労働者として来日する外国人は決して目立たないほど少ないわけではない。

もっとも大手企業などへ入社する外国人となると、中国や台湾、韓国などのみではなく、アメリカ系の中国人やフランス系ベトナム人など、欧米で「エリート」として生まれ育ったにも関わらず欧米の何かしらに嫌気がさし、あるいは日本に憧れ留学してくるというタイプの優秀なアジア系留学生も多く、またいわゆる「nerd」と呼ばれるタイプの比較的若い欧米系白人で、日本語が非常に上手く日本の大衆文化に日本人以上に精通しているような人も最近は日本企業に多様性を与える重要な要素になりつつある。これらのエリート留学生に関しては、そもそも合法移民として入国してきているのだし経済的にも余裕があり、かつ日本経済への貢献度も高いので特に不平を言う理由はない。むしろ欧米で教育を受けた行儀の良い優秀な労働者なら元が何人であろうとその貢献度に応じて歓迎すべきであろう。来日外国人の多数派が中華系や韓国系など比較的容易に日本社会に溶け込める者や欧米出身のエリート層に留まっている間は、「移民問題」はそれほど注目すべき問題でもない。

だが、潜在的に貧困層へと陥る危険性のある中国以西のアジア諸国や南米、アフリカなどの経済的に貧しい国々から来ている留学生の「偽装難民」化問題というのは、放っておけば深刻な社会問題になりかねないものだ。それが一部のネパール人や回教系でもイラン人などに留まるならまだ良いが、強烈な信仰心を持つスンナ派諸国からの「留学」経由の「難民」が増加すれば日本からジハーディストが出るのも時間の問題である。また、世界的にも最高レベルの治安を誇る日本にとっては、欧米では全く危険視されない中華系あるいは韓国系移民も、もし彼らが下層労働者として大規模に流入し自分たちの狭いコミュニティを形成するに至るようなら、日本の安全を脅かす危険要素にもなり得る。

少なくとも、もし彼らの入国を許し続けるなら、それなりの責任を持って彼らが日本社会に溶け込めるように政府が責任を持つべきだろう。それができないなら安易に、それこそ単に「年金」や「税金」あるいは「低賃金労働確保」という目先の利益の為に入国を許可し、そのまま放置してあとは私人に任せるなどということは外国人労働者の福祉の為にもあってはならない。たとえ彼ら自身が「それでも母国における待遇よりはマシだ」などと言っても、日本国内でそんな不法労働を許すべきではない。その歪みは、結局外国人による無差別的な犯罪に巻き込まれる名も無き一般市民の「被害者」の苦痛によって贖われるのである。欧米人はそのやるせなさを知っている。そこから何も学ばずに今更新自由主義的な「人の移動の自由化」へ向けて舵を切るというのであれば、日本政府には欧米人に褒められる資格などない。

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