NYにおける重罪が過去最低に!その理由は?

2017年01月08日 06:00

ニューヨークにおける重罪発生率が「過去最低」を記録したそうだが、それに関するYahooニュースのこの記事は実に見事に「政治的に正しくない」部分をカットしてしまっている。だが、これは別に日本の翻訳者が恣意的にカットしたわけではなくCNNの元記事それ自体がそうなのだ。これはリベラル派の「自己検閲」の非常にわかりやすい例なので、試しにWall Street Journalの記事と比較してみよう。

CNNの記事では、警察側がNYにおける犯罪が減少した理由についてこう述べているとされている。直接引用しよう。

The way we do business here has evolved over the years and by focusing our resources on the people that not only do we identify but the community identifies as being involved in the violence, I think that’s how we can continue to push crime down and that’s how other cities can do it too

Yahooニュースに出ている日本語の翻訳ではこの部分が

われわれは地域社会の中で特定の人物を洗い出している。犯罪にかかわっているのはごく少数の人物にすぎず、われわれはそのために持てるすべてのリソースを使っている

となっている。つまり、「特定の人物」あるいは「ごく少数の人物」が誰なのかを全く明らかにしていない。故にCNNの記事の翻訳を読んだ日本の読者はどうしてそんな劇的な変化が可能になったのかをはっきり認識していないし、またどうして「対照的にシカゴでは2016年に起きた殺人事件の件数が1997年以来で最悪の水準となっている」のかが全然わからない。だがWSJではこの点がはっきりと述べられている。

In 2005, the NYPD stopped more than 398,000 New Yorkers, the vast majority of them black or Latino. About 90% of those stopped weren’t charged with a crime. In the first six months of 2016, police conducted more than 7,600 stops. The crime fighting tactic, which a federal court judge found was being used unconstitutionally by officers to target minorities, has been praised by President-elect Donald Trump, a Republican.

つまり、NY警察の言う「特定の人物」というのは具体的に言うとBlack or Latino(黒人あるいはヒスパニック系)なのであり、連邦裁判所はこれを「違憲」的(unconstitutional)な「少数派差別」であるとしている一方、トランプ氏はこれを賞賛しているというのがNY警察の歴史的快挙の真相なのである。

逆にシカゴにおける殺人事件等の重罪(felony)が悪化の一途を辿っている原因は何だろうか。ひとつには、NYにおけるような違憲的犯罪予防をシカゴではやっていないというのがあるだろうが、はっきりしたことはわからない。とはいえ、ニューヨークとシカゴの間にどのような違いがあるのかというと、ひとつには人口構成に目立った違いがあるようだ。

US Census Bureauによれば、白人比率に関しては2010年時点でNY44%、シカゴ45%とほとんど変わらず、ネイティブアメリカンやヒスパニック系の比率も共にほぼ同程度である。だが、NYの黒人比率が25.5%に留まるのに対し、シカゴは32.9%で明らかにシカゴの方が高い。一方でNYのアジア系比率は12.7%にも上るが、シカゴでは5.5%に留まる。要するに、シカゴに比べればNYの方がアジア人が多く黒人が少ないのである。アジア系は基本的に犯罪率の最も低い集団(大抵は白人以下である)なので、アジア系の比率が高くなれば犯罪率は低くなるのだ。

また黒人比率の全米平均は12.6%であり、一般に人種的多様性に富むと言われるカリフォルニアでも実は多いのはヒスパニック系であり、黒人比率は15.2%に留まる。つまりシカゴの黒人比率は米国の大都市の中でもトップクラスだと言える。無論、これだけでは黒人比率の高さだけがシカゴの犯罪率の高さの原因だとは断言できない。だが、次のFBIのデータを見ていただきたい。これは2013年のものであるが、これによると殺人事件で検挙された犯人の数は合計で14132人であるが、その内白人は4396人、黒人が5375人、その他(=アジア系)が249人、不明が4112人となっている。全米の人口比的(2010年)には、白人は72.4%、黒人は12.6%であるが、2013年度の殺人犯の中では白人が31%、黒人は38%である。こうなると、これらの事実はシカゴにおける治安の悪さの原因を究明しようとする際にどうしても無視できないのは間違いないだろう。

もしそうであるならば、またNY市がやったように、もし本当にターゲットを特定の人種や集団に絞ることで犯罪を未然に防げるのであれば、シカゴでも同様のことを実践してみるのもひとつの手段かもしれない。シカゴにおいてもこれが成功するならば、アメリカ以外の多民族国家にとってもこの実例は大いに参考になるだろう。

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