小保方晴子氏はエンジニアのリトマス試験紙 --- 宮寺 達也

2017年01月14日 06:00

あの小保方晴子氏が、婦人公論(中央公論新社)で「小保方晴子日記 『あの日』からの記録」という連載をスタートしたようだ(参照:スポニチ)。

私は小保方氏が本気でSTAP細胞の再現を信じて努力するとは全く考えていなかったので、まあ予想内の行動だ。これからも彼女は「STAP細胞はありまぁす」と言いながらも、科学界には背を向け続け、信者向けの小ネタを振りまき続けるのだろう。

短いながらも科学界に身を置いた人間として、彼女の行動は非常に唾棄・軽蔑すべきものであるが、どう生きるかは彼女の自由だ。信者向けのエッセイなり本を書くなり、暴露本を書くなり、芸能界デビューするなり、好きにすればいい。

ただ、私はこのニュースを調べる中で面白いことに気がついた。それは2017年になっても「実はSTAP細胞は存在している」と考えている人がかなり存在していることだ。

未だに根強いSTAP信仰

「STAP 成功」でGoogle検索すると、約439,000 件がヒットする。そしたらまあ出るわ出るわ。「STAP現象の確認に成功、独有力大学が」「STAP現象、米国研究者Gが発表」「STAP細胞の特許出願、米ハーバード大学が」「小保方さんの恩師もついに口を開いた、STAP騒動の真実」等々、「STAP細胞は存在する」「小保方さんは悪く無い」「理研が黒幕」といった程度の低い陰謀論の記事と、それを支持するブログ・SNSがたくさん見つかる。

STAP細胞が大々的に記者会見で発表されたのが2014年1月28日なので、気がつけばもう3年経ってしまった。

私が小保方氏が「クロ」とほぼ確信を持ったのは2014年3月、博士論文の20ページに渡る「丸写し」が見つかったときだ。

「捏造の科学者 STAP細胞事件」の著者である須田桃子氏は、「STAP細胞が絶対ダメだと思ったのは5~6月ごろ。STAP細胞の遺伝子データを解析した結果、長期培養しているES細胞でよく見られる特徴が見つかった時点です。」と毎日新聞の記事で語っており、科学的にはこの時点が「クロ」と断定されたときと言って良いだろう。

それから2年以上経つが、まだSTAP細胞の存在を信じている人がいることに驚く。STAP細胞が存在しないことは、ネイチャー論文を取り下げた時点で確定したことである。1+1=2であるように、2016年の日本シリーズ優勝チームが北海道日本ハムファイターズであるように、明らかで不変なことだ。

STAP細胞を信じている人は、エンジニアには向いていない

STAP細胞を信じる人達の考えを私なりに精一杯想像すると、恐らく「小保方さんは騙された」「バレるような嘘をつくなら記者会見しない」「理研のような組織は裏で悪いことをしているに決まっている」と言った自分の中のストーリーが初めにあり、都合の悪いデータは見えないのだろう。

そういう人達とは友人にはなれるかもしれないが、データとロジックに向き合うエンジニアには向いていないので、別の職業をお勧めする。

だが、残念なことにエンジニアと呼ばれる人の中にも、STAP細胞を信じる人達が少なからずいる。小保方氏が「STAP細胞はありまぁす」と絶叫した頃に、「iPS細胞を普及させたいY教授や製薬会社の陰謀だ」と真顔で言ってきた友人がいたし、無意味な検証実験がスタートした時に「これでSTAP細胞ができちゃったら、理研はどうするんだろうね」と会議の場で発言した上司もいた。大体のエンジニアは「STAP細胞はもしかしたらあるかもしれない。ただ、実験はインチキしたんだろうな」という感想を持っているようだった。

私は、大学の研究室を卒業して、最先端のエレクトロニクス製品を作っているはずのエンジニアのレベルがこの程度かと、かなりショックを受けた。

小保方氏の論文・研究には研究者やエンジニアの基礎中の基礎である、

・発明・発見はオリジナルと再現性を保証することで、初めて実績を認定される

・そのために、引用を明確にして、オリジナルの論文であることを証明する

・そのために、データは観測結果に忠実とし、一切の加工をしない

というルールが全く守られていなかった。そのため、「捏造」と断定するに一切の躊躇は無かった。仮に検証実験で何か出来たとしても(100%有り得ないと確信していたが)、それは当初のSTAP細胞とは違う、何か別のものだ。

こんな基礎は大学4年生の研究室に入る前、大学1年生の化学の実験で学んだことだ。「陸上選手がドーピングをしてはいけない」とか、「受験生がカンニングをしてはいけない」とかと同等のルールだ。

「オボちゃんはちょっとズルしたけど、STAP細胞はある」と主張することは、「彼はドーピングしたけど、しなくても金メダルだった」とか「彼はカンニングしたけど、しなくても合格していた」というレベルで不毛な議論だ。

これからのエンジニアの面接ではSTAP細胞のことを質問してみよう

大変残念なことに、技術レベルがかなり高そうなエンジニアであっても基本的な科学リテラシーを備えていない人が多いことが、図らずもSTAP細胞事件で明らかになった。そして、小保方氏が捏造を認めない以上、この事件は終わらない。

だったら、せめて有効活用しよう。

これからエンジニアを採用するとき、その人の実力を測るために「STAP細胞についてどう思うか?」と質問しよう。

「あるかもしれません」と言ったら論外だし、「無いと思います」と言ったら「いつ、無いと思った?」「一番の問題は何だった?」「検証実験でもしSTAP細胞ができたら?」と突っ込んで質問してみよう。

多分、自分の技術や実績について聞くより、よっぽどエンジニアの本質的な実力を測ることができる。そうやって、これからの小保方氏にはエンジニアのリトマス試験紙として日本の科学界の役に立って欲しい。

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宮寺達也 パテントマスター/アゴラ出版道場一期生
プロフィール
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。

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