若者は、有名人の「残業しない自慢」をマネてはいけない

2017年01月13日 06:00

バブル時代と呼ばれた頃の日本には、「寝てない自慢」が溢れていた。「24時間、闘えますか~♪」というCMソングの栄養ドリンクがバカ売れし、サラリーマン兼デュオ歌手のシャインズは「睡眠時間の少ないことをやたらと自慢する~♪」と、「私の彼はサラリーマン」で歌った。あれから約二十数年がたち、2011年に元シャインズの杉村太郎氏は癌によって47歳で亡くなった。2014年には「3、4時間闘えますか?」というキャッチコピーの栄養ドリンクが発売されたが、たいして売れなかったようだ。

そして2017年、「働き方改革は構造規制の柱」なのだそうで「長時間労働の是正」は官民を挙げての最優先課題となった。厚労省の労働局は昨年末の電通過労自殺事件に続いて、三菱電機の幹部を「社員に違法な残業をさせた」という罪状で書類送検した。ホリエモンは6時間睡眠を公言しているし、有名ブロガーのイケダハヤト氏による「16時には仕事を終えて(中略)サラリーマンよりはずっと稼いでます」アピールなど、ネット系有名人は相次いで「残業しない自慢」をアップするようになった。一方、労基署から是正勧告を受けたが、「法律が現状と合っていない」と苦言を呈したAVEXグループの社長はネットでボコボコに叩かれた。

 
残業
する しない(できない)
 

スキル

あり B:スター C:熟練労働者
 

なし

 

A:新人・社畜

D-1:ソリティア社員
D-2:リストラ候補
D-3:パート・アルバイト

 

私見だが、「残業」と「スキル」について上記のようなマトリクスにまとめてみた。バブル期の日本でもてはやされたワークスタイルはBだが、現在クールとされているのはCである。「石の上にも三年」とか「1万時間の法則」などと言われるが、「労働市場で売れる確かなスキル」を身につけるためには、「寝食を忘れて打ち込む修行時代」(A)が今なお必要だと思う。スキルを習得して結果を出したスター人材(B)となった後に独立や転職すれば、熟練労働者としてワークライフバランスの取れた人生(C)を得られることは可能は高い。

ただ、組織の中に埋もれてダラダラ残業や社内政治しか経験しなかったノースキル社畜(A)は、Dのいずれかに至るだろう。公務員や電力会社など終身雇用がまだまだ温存されている職場では、ソリティア社員(D-1)として窓際で定年まで飼ってもらえるだろう。しかし、JALや東芝のように会社の屋台骨が傾けば、真っ先にリストラ候補(D-2)となるはずだ。そして、今から「仕事がラク」「残業がない」を最優先に就職先を探す若者にとって、新規参入できるD-1ポストは減る一歩であり、パート・アルバイトに毛の生えたレベル(D-3)の仕事しか得られない可能性が高い。まあ、今の日本では、親元に住みユニクロ・吉野家・QBハウスなどを愛用すればD-3人材でも楽しく生きることは可能であり、こういう人生も失敗とは言えない。

ただ、ホリエモンやイケダハヤト氏のようなC人材は、就職直後からワークライフバランスを満喫していていた訳ではない。そもそも、イケダハヤト氏のブログタイトルである「まだ東京で消耗しているの?」も、社畜経験なしには生まれなかったキャッチコピーである。イケダハヤト氏のブログでは「3カ月のトレーニングでIT起業に転職できたエンジニア」が紹介されているが「1日15時間プログラミング」していたそうで…まさに、A人材なのである。

という訳で、ホリエモンやイケダハヤト氏に憧れる若者が、就職当初から単純に「6時間睡眠厳守+16時に仕事終了」をマネすれは、D-3の大群に埋もれて終わるだろう。Cを目指すならば、新人のうちは激務でも成長できる職場Aを探し、そこからBを目指したのちにCに転じることをお勧めする。「新人は社畜として騙され続けよ。で、最後に1回だけ裏切ればいい」という意見に強く同意する。

 

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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