結婚の法と経済学

2017年01月15日 23:00
結婚 写真AC

写真ACより(編集部)

一昔前の結婚とは、家の跡取りを残すために他家から嫁をもらい、家と家との結びつきを強めることが目的でした。
もちろん、家の存続のために跡取りを残すというのが第一の目的です。

ですから、従来の結婚披露宴会場には「◯◯家、△△家、ご両家結婚披露宴」というような表示がなされていました。

昨今のアメリカでは、結婚は相互に保険をかけることだという説が(経済学者を中心に)有力になりつつあります。
片方が失業したり病気になって稼げなくなっても、もう一方が稼いで支えるというもので、一種のリスクヘッジですね。

ですから、好景気になると夫婦双方が収入のいい職を見つけることができるので離婚が増えるそうです。逆に不景気の時は、双方の収入が減ったり失業したりするので、(我慢して)結婚生活を続けるそうな…。
好景気と不景気と離婚件数の増減については、統計的に相関関係があると言われています。

結婚相手の財力に関する考え方も、従来とは変化しているように思えます。

経済成長が見込めた一昔前は、「(仮に今は貧しくとも)お金持ちになる可能性のある男性」、つまり成長性の高い男性が結婚相手として理想でした。映画「ザ・ファーム(法律事務所)」でトム・クルーズ演ずる(貧しい)ハーバード卒の優等生などが典型でしょう。

日本でも「三高」(高身長、高学歴、高収入)などと言われていた時、高学歴と高収入は「将来お金持ちになりやすい」という意味で評価されていたのかもしれません。

たとえ今は300万円の価値しかなくとも、年率10%で成長していけば7.2年後は倍の600万円になり、更に7.2年後には1200万円になり…22年後くらいには2400万円になるという訳です(おおよその複利計算です)。
今の価値と年率がもっと高ければ、10年位で億万長者になることも夢ではありません。
そういう意味で、高利回りという「成長性」が重視されたのでしょう。

ところが、経済成長率が低くなり、かのピケティ氏が主張するように資産の利回りの方が成長性よりも高くなると、今現在のお金持ちと結婚した方がはるかに有利になります。
資産の利回りが7.2%だとすると、今現在1億円持っていれば10年で倍の2億円になります。

ピケティ氏は人的資源の成長性はそれより低いと指摘しているので、仮に半分の3.6%としましょう。
すると、現在500万円の価値が倍の1000万円になるのに20年もかかってしまいます。
要するに、「将来の成長性」はたかがしれているので、「現在の資産の大きさ」が豊かさの指標となってしまうのです。

もしかしたら昨今流行りの「年の差婚」は、「将来の成長性」より「既に保有している資産価値」に重きをおいた結果なのかもしれません。

女性の美しさをどう評価するかという点については、利回りがマイナスであると説くシビアな説があります。
つまり、5年、10年経つにつれて劣化して価値がどんどん減っていくという考え方です。
ずいぶん意地悪な見解ですが、「今がピークの美しさ」だけを売りにしている女性にとっては…もしかしたら当たっているのかもしれません(ごめんなさい)。

このように経済的に結婚というものを考えていくと、結婚というのは民法上の「組合契約」と考えることもできます。
組合契約というのは、2人で共同事業をするような場合、それぞれが出資して事業を運営し、契約解除の際にはそれぞれの出資分に応じて分配を受けるというものです。

たとえば、それぞれが500万円ずつ出資して事業を開始し、その間の労力の出資も半々だとすると(民法上の組合は金銭以外の出資も含めます)、1億円になったところで解消となれば双方が5000万円ずつ分け合います。逆に、事業が失敗して100万円しか残らなかったら50万円ずつ折半することになります。

結婚の場合、最初の出資額が同じでも双方が有している資産の利回りによって将来価値に差が生じます。

先の例で7.2%の利回りがつく1億円の資産を持っている夫と、マイナス利回りの現在価値1億円の「今だけ美女」妻が結婚したとしましょう。10年後の家計の資産が2億1000万円になっており、(現実にはありえませんが)妻の貢献度がゼロと仮定したら財産分与はどうなるでしょう?

まず婚姻前に持っていた財産は特有財産として財産分与の対象にならないので、2億に増加した資産は原則として夫が取得します。

残りの1000万円については全ての事情を総合的に斟酌しますが、貢献度ゼロの妻が取得できるのはせいぜい半額の500万円でしょう。
婚姻期間中に形成された財産(この例だと1000万円)は、(組合の法理を用いればそれぞれが出資した労力の割合で分配するので)貢献度ゼロの妻は一銭も取得できないはずですが、ここが組合契約と婚姻の違いなのです。

お断りしておきますが、本稿はあくまで仮定であって私の主観ではありません。
女性をバカにするような他説に不快感を覚えたとしたら、その点については深くお詫びします。
ただ、私個人の考えではないということは何卒ご理解ください。

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荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年1月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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