入試問題のツイッター投稿は著作権侵害ではない

山田 肇

センター試験の終了直後の受験生が出題内容をツイッターでつぶやき、話題になることが増えた。今年も日本史に妖怪ウォッチが出たとか、英語問題の「IAYP」は「PPAP」にそっくりだとか、多くのつぶやきが流れた。これについて、産経新聞は、1月14日に、『問題文のネット上へのアップは著作権の侵害になる恐れもあるとして、センターは「問題冊子は適切に取り扱ってほしい」と呼び掛けている。』と報じている。本当に著作権侵害に当たるのだろうか。

試験問題として著作物を用いることについては、著作権法第36条によって著作者の事前の許可を得なくてもよいことになっている。事前に許可を求めたら、何が試験に出るか漏れてしまう恐れがあるからだ。第36条には営利目的の使用では使用料を支払わなければならないとあるので、後日、使用料が著作者に支払われる。

センター試験の実施主体である大学入試センターは過去の試験問題を公開している。そこに、「著作権処理の関係上、一部白紙にて掲載している科目がございます。」と書かれている場合がある。これは、試験実施後の使用料支払いなどの後処理が終了していないためだ。センター試験は試験料を徴収するので、著作権法上は、営利を目的とした活動の一種として扱われる。

それでは、受験生がネットでつぶやくのはどうだろうか。受験生は営利を目的につぶやいているだろうか。そんなことはない。問題の全部を複製して送信しているわけでもなく、「妖怪ウォッチが出たよ」などとつぶやいているだけだ。受け手の側がそれを基に営利活動を行えるわけでもない。なぜ、これが著作権の侵害になる恐れもあるというのだろうか。

記者は勘違いしている。予備校がセンター試験の問題を全文ネットにアップして解説したとしたら、それは予備校による営利活動の一環である。そのような場合の著作権侵害の恐れと、記者は混同したようだ。

記事を真に捉えつぶやきを制限させるような行動に出たら、ストレスいっぱいの受験生に気の毒だ。

センター試験翌日に新聞各紙は問題と回答例を折り込む。彼らは試験実施の当事者ではなく、新聞事業を営利目的で営んでいるだけだが、著作権についてきちんと処理しているか、そちらのほうが心配だ。著作権法第41条が、「時事の事件の報道のための利用」について著作者の許諾を必要としない、と規定しているのはもちろん承知している。しかし、センター試験問題が時事の事件の報道に該当するのかは吟味が必要だ。また、報道はネットメディアでもできるから、ネットに試験問題を掲載しても第41条を根拠に争うこともできるかもしれない。