英国政府、単一市場を諦めEUに宣戦布告か

2017年01月17日 06:00

Brexitはこれによって為替が大きく動くという実利的事情もあり、昨年の国民投票の際には日本でも相当話題になったようだが、トランプ氏の大統領当選と比較すれば、Brexit後に英国がどうなるのかというヴィジョンが全く不鮮明なまま、結局何が起こっているのかイマイチピンと来ないという状況が続いていた。

今現在でも特に何か重要な決定が為されたわけではないが、これまで単に言葉を濁すだけに留めることの多かった英国財務相のフィリップ・ハモンド氏(Philip Hammond)が昨日EUに対し「英国は単にEU市場からの締め出しを指をくわえて見るだけということにはなりませんよ」と脅し文句を発した。

英国側はあくまで移民政策に関して独自路線を取るという点に関しては譲らず、かつそれを理由にEUの単一市場から英国が締め出された場合、仮にそれが短期的な経済的ダメージを伴うとしても、脱EU(Brexit)を断行した上で英国の経済的競争力を維持する為に「やれることは何でもやるつもりだ(the Government will do “whatever we have to”)」ということだ。

具体的には、外国企業を英国内に呼び込む為に法人税等を大幅に削減する(Britain could cut taxes to encourage companies to move to the UK)といった政策に言及している。

これを読む限り、英国もさすがにEUを説得することに関して諦めムードに入っているように見える。少なくとも、EU側の要求を受け入れBrexitを有名無実化するという方向に転換することは目下のところなさそうだ。上記のテレグラフの記事によれば、

A government source told The Sunday Telegraph: “She’s gone for the full works. People will know when she said ‘Brexit means Brexit’, she really meant it.”

政府筋が先週日曜テレグラフに伝えたところによると、「彼女(メイ氏)はBrexitを国民の希望通り実現する為に全力投球した。英国民は彼女の「Brexitという言葉はBrexit以外を意味しない」という発言は、(単なる政治家的なレトリックではなく)文字通りBrexitをそのまま実現すると本気で言っていたのだとわかるだろう。」とのことだ。

また、Independent紙によれば、メイ首相は今週火曜日(英国時間)に遂に公の場でいわゆる政府の「Hard Brexit」戦略を概説するとのことである。すなわち英国政府は本気である。EUが強硬姿勢で脅してくるならば、これに屈することなくできる範囲で対抗措置をとるという、(非常にリベラルなことで知られ若者からの人気もある)Jeremy Corbyn労働党党首が「これでは貿易戦争(trade war)を仕掛けているに等しい」と批判するほどの強硬姿勢で返すのである。

しかし、実際にBrexitがそのような方向で進められるのであれば、日本企業にとってはどういう対処法が考えられるだろうか。まず、英国がBrexit体制に本格的に移行した直後は英国の経済は一時的に悪化するというのは与党側が予想している通りであろう。その上で、法人税等の削減を期待し英国へ進出するのか、それともEU市場内でのビジネス展開という体制を維持する為にドイツやフランス等のEU内部の経済大国に拠点を移していくのか、という点を各企業は各々のビジネスモデルに基づいて判断する必要に迫られそうだ。

もし後者を視野に入れる必要に迫られそうなのであれば、今のうちからEU域内で最適な移転地を探すに越したことはないが、しかし英国の離脱は単にそれだけに留まらず様々な余波をEU内に引き起こしかねないことを予め予期しておく必要もあるだろう。さすがにドイツがEUを離脱するということはないだろうが、しかし英国に続けとばかりにフランスやオランダ、イタリア等のドイツ以外の主要国がこの先20年の間に続々と離脱し、「EU単一市場」そのものが崩壊するという事態が生じないとも限らない。

短期的にはそんな事態は生じそうも無いのだが、10年、20年というスパンで見れば、例えばフランスの2017年選挙でフィヨン氏あるいはマクロン氏が大統領に選ばれるものの結局フランス国民を再び失望させた結果FNがさらに支持を伸ばし、次の2022年選挙ではFNが勝利しFrexitが現実化するというシナリオは決して絵空事ではない。むしろEUよりも未来の英国やスイスなど、欧州の非EU加盟国と個別的貿易関係を強化する方がリスクは少ないかもしれない。

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