元教員が考える「教員の世界がおかしい」10の理由

2017年01月18日 19:15

小中学校の教員の勤務時間が大きな話題になっています。小中教諭の7割、週60時間超勤務ということです。ではなぜ、忙しいのでしょうか。これにかんして元小学校教員の東和誠さんが民間企業から教員に転職して驚いた教員の世界の常識~10選~というおもしろい論考を書かれていましたので、わたしも民間企業出身者として、自分の経験をふりかえって考えてみました。

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1.そもそも労務契約がない

これは以前のべたことですが、公務員は労働者ではありません。ゆえに雇用契約書もありません。辞令交付書という紙ペラ一枚を校長に読み上げられるだけで、冊子のようなふつうの契約書にサインをすることはありません。教育委員会としても、教員の本務や雇用条件とは何かと考えなくて済むので、現状維持のまま行くのではないでしょうか。わたしが(教組の)組合員だった頃、学校の代表者が集まる分会長会議でタイムカードを提案したことがありますが、逆に教育委員会の管理を強める気かと非難ごうごうとなり、翌年組合を辞めざるをえませんでした。

参考:学校を悪くしたのは、だれか 文科省でたらいまわしにあう

2.勤務時間があってないようなもの

1.と重複しますが、労務契約がないので、勤務時間という概念もあまりありません。残業や休憩時間もずるずるなくなってしまいます。組合が強い自治体なら、けっこうがんばってくれますが、組合を潰してしまった自治体も多いので、調整役がいなくなってしまいました。組合の存在は思想的にも社会通念的にもひどいとは思いますが、契約に守られていない教員の唯一といっていい交渉チャネルでした。それを潰してしまった教組の先人たちの偉大さにはほんとうに感服します。わたしのいたK市は、組合離れが甚だしい今どき組織率が9割近くでしたが、専従職員が管理職に横滑りする慣習があったので、組合は完全に教委に取り込まれていました。ちなみに、小学校教諭の場合、高学年になると最大29時間もつことになり、子どもたちが帰るのが4時近くになります。週40時間しかないのに授業時間だけでこれだけになるのはかなり無謀ではないでしょうか。授業時数は文科省に厳密に決められていて、しかもその授業時数を上回るためにかなりギリギリでやりくりしています。そのラインをとにかく割らないように細心の注意を払います。子どもたちも大人の事情につきあって、6時間目には疲労困憊というのはあまりにかわいそうです。

 

3.会議が多い

会議がとにかく多いです。会議のためには授業時数が足りないのに子どもたちを早く帰したりします。みなさんは学校の会議といえば職員会議を想像するかもしれませんが、さまざまな会議があります。校務分掌ごとに会議があって、国語会議だ、体育会議だ、特別活動会議だ、行事会議だ、研修会議だとなんでも会議があり、放課後は研修か会議ばかりやっています。会議が終わるころには退勤時間はとっくに過ぎています。一度できた会議が減ることはありません。

 

4.研修が多い

公務員に多いのか、研修でパワーアップできるという考えがあります。研修のために午前中で授業が終わったりします。研究授業もありますが、座学もあります。研究授業は、文科省の建前的な授業をしなくてはならないので実力はまったくつきませんが、A4で10枚くらいの指導案という台本を書かなくてはいけないのと、その検討が何回もあります。指導案はその見せる授業の部分だけでなく、今までなにをやってきたかやこの授業にどんな意義があるのかとか書かなくてはならないので、作成にかなり時間がかかります。さらに指導案検討で、参加者(おもに年配の女性教諭)の気分で内容を全部差し替えとかされるのは日常茶飯事です。座学は、民間企業なら呼んだ人事部が怒られるのではないかというレベルの講師がきます。だいたいが教育学部の先生ですので、教育委員会への営業が得意なのでしょう。できればその時間を事務仕事にあてたいところです。ほんとうにしたいのは授業の準備ですが。

 

5.行事が多い

入学式や運動会、卒業式はいいとして、創立〇周年記念、宿泊学習、二分の一成人式、マラソン大会、学芸会、展覧会、音楽会と際限なく増えていきます。一度できた行事は、やめたら先輩の顔に泥をぬるという理屈でけっして減ることはありません。行事自体は1、2時間で終わりますが、その準備には貴重な授業時間が何十時間もとられます。ここでの思想統制は、以前も述べましたが、教員は時間外に準備をしますので、たいへんな負担になります。式典は、誰のためにやっているのでしょうかね。

参考:アクティブ・ラーニングが子供を「虐待」する

6.現場に意思決定者がいない

校長はじめ管理職は意思決定できません。彼ら彼女らは、教育委員会の決定事項を現場に粛々と遂行させる推進役です。ゆえに教育委員会からおりてきた仕事は、スケジュール的にどんな無理な内容でも「よろしく」で済ませます。勤怠管理(年次休暇の管理の厳密さは民間企業の非ではありません)は熱心にしますが、残業時間にふれることはありません。管理しない管理職なんて、伝書鳩になりたくて管理職になったのでしょうか。

 

7.仕事の優先順位が・・・

教育委員会からおりてきた仕事(調査・アンケートの集計とか)が最優先されます。つぎに校務(会議・研修とか)。さいごに学級の仕事です。学級も行事の仕事が優先されるので、休日に授業を準備しようにも間に合いません。恥ずかしながら授業の準備をした記憶があまりないです。こんな授業を6時間も聞かされるのはたまったものじゃないですね。ごめんなさい。

 

8.年配の女性教諭の発言力がひじょうに強い

まあこれは民間企業でも同じかもしれませんが、年配の女性教諭の発言力がひじょうに強いです。その破壊力ゆえに、会議が延々とつづいたり、思わぬこだわりから思わぬ仕事がわいてくることがあります。校長の意思決定すら覆します。本人は素晴らしい提案をしたと得意げです。彼女によって一度提案されたことが却下されることはまずありえません。

 

9.勤務時間外に労働するのがえらい

これも民間企業と同じですが、教員の時間外労働がここまでひどくなったのは、最近ではないでしょうか。やっぱりおそくまで学校にのこっている先生がえらいのです。7時にきて(始業時刻は8時15分)お茶をいれる先生が尊敬されます。教員のレクリエーションという名目で、強制的に時間外にバレーボール大会とかに参加させられることもありますが、率先して準備する先生は尊敬されます。その姿勢を褒め合う文化もまた奥ゆかしいのです。さいきんはICT化というのもありますが、納入される機材は古く、タブレットや周辺機器のメンテナンスを教員がやるので、逆によけいに時間外労働が増えます。中高はこれに生徒指導、進路指導、部活動が加わってくるので、さらに拘束時間が延長されます。

参考:労働生産性を高めてはならないのは小学生でも知っている

10.出欠をとる飲み会が多い

公務員の世界では当然かもしれませんが、歓送迎会や忘年会は自腹です。それはいいとして、総務部なんてものがないに、ゲームやプレゼント交換なんて盛大にやったり、席札などのデコレーションもかなり気合を入れて作らなくてはならないので、忘年会でその当番にあたった翌年は、なんだか不幸になりそうです。研究授業や研修会ごとに学校あげての飲み会があるので、断る理由を考えるのもたいへんです。

 

このように、先生たちはたいへん苦しい状況にあるのですが、それがまったく子どものためになっていないのが、切なくなってきますね。書いていて気がついたけど、教育の仕事がなかったな。学校、だいじょうぶか。

 

中沢 良平(元小学校教諭)

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