サウジ石油相、米シェールの急激な増産を疑問視

何とも刺激的な見出しだ。見ると、東京時間1月17日(火)19:30ごろの掲載になっている。気になってすぐに読んでみた。

FTのDavid Sheppardが “Saudi oil minister doubtful on US shale production surge” と題して書いている。読んで見ると、World Economic Forumを開催しているスイス・ダボスからのもののようだ。ファーリハ・エネルギー大臣は初日の「エネルギーの未来」というセッションに聴衆の一人として参加していて、コメントしたものらしい。

ダボス会議のプログラムをチェックしたら、日本時間17:45から始まったパネルデスカッションらしい。Davidは会場から記事を送稿したのだろうか。ファーリハが会場にいるこのセッション、誰が壇上にいたのかな。
無いものねだりだけど、その場にいたかったなぁ。

取り急ぎ記事の要点を紹介しておこう。

・サウジのエネルギー大臣ファーリハは、価格は回復しているが、米シェールオイルがすぐに(anytime soon)2~3百万BDの増産が可能だとは思わない、と発言した。

・価格が50ドル程度で安定しているので、米国の生産は上向いているが、シェール業者はこれまで生産性のいいところだけから生産しており、すぐにコストの高い、地質的に困難なところに遭遇するだろう、と言う。

・「コストが高くなると見ている。サービス産業が痛めつけられてしまっているからだ」と彼はいう。「彼らはもっとも生産性の高いところを目指して生産している」

・ファーリハは「エネルギーの未来」を討議するセッションに聴衆の一人として参加していた。壇上には、サウジアラムコ社長のAmin Nasser、IEA事務局長のFaih Birolらがいた。

・Nasserは、昨年末のOPEC減産合意は、2017年6月末までには市場をバランスさせるだろうと言う。また、電気自動車の普及にも関わらず、トラック輸送、船舶、航空用燃料や石油化学など、石油需要は伸び続けるのでもっと投資が必要だ、と。新規の供給を確保するために、向こう25年間に25兆ドルの投資が必要だ。「我々は、石油供給能力増加のための投資をしながら、再生可能エネルギーにも投資する」とし、サウジアラムコとしてはもっとも高い成長が期待できる石油化学へ投資をする一方、生産能力増強にも投資するかもしれない。同社は来年5%のIPOを計画している。

・サウジの生産能力は1,200万BDで、短期間のうちに1,250万BDまで増強が可能だ、ともいう。

・伊の電力会社ENELの社長、Francesco Saraceは、石油業界は電気自動車のインパクトを過小評価している、と主張する。電気自動車の伸び率はとんでもなく高く、必要なインフラ整備に要するコストも石油と比べたら微々たるものだ、と。

なるほど。
おそらくこの記事は「速報」なのだろう、尻切れトンボの気配がある。もう少ししたらまとまったものになるのだろうな。

ところでファーリハの言う「2~3百万BDの増産」は、「50ドル程度」では無理だろうが、さらに価格が上がれば可能ではないのだろうか。おそらく需要は、来年、再来年あたりには2~3百万BD増えるだろう。だがそれは、今回減産をしたOPEC、非OPEC産油国が引き受けるよ、ということなのだろうか。つまり、シェールの増産が可能なレベルにまでは価格が上がらないよ、ということだろうか?

はてさてこのセッションを聞いていた人たちは、終わってからどんな議論を会場外でしたのかな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年1月17日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。