大学病院の医師アルバイト事情、あるいは「官僚にもアルバイト解禁を!」

2017年01月22日 06:00

大学病院における30~40代の中堅医師の給与水準は、年400~600万程度であり、国家公務員と同レベルの額である。しかしながら、大学病院には「研究日」などと呼ばれるアルバイト公認日が週一日程度あり、さらに土日夜も働くことによって、大学病院からの給与に加えて、その0.5~2倍程度のバイト収入を得ている。医師バイトには、収入増の他にも以下のような効果がある。

1.腕に応じたバイト相場があり、スキルアップの励みになる

大学病院の給与体系は、基本的には年功序列である。すなわち同期は同額で、年長者ほど高く、全科同一賃金である。一方、バイトには、仕事密度やリスクに応じた市場価格が存在する。若手医師のバイトデビューは「当直バイト」、すなわち「夕方まで大学病院の仕事→外部の病院で当直業務→翌朝も大学病院で通常業務」というアルバイトを依頼されることが多い。「寝当直」と呼ばれる老人病院で待機しているだけのような案件はバイト料も安く(一晩で3~4万円程度)、ロースキル医師向けとされている。重傷者がバンバン搬送される救急病院では、それなりのスキルが要求されるが報酬も高く(一晩5~8万+患者数に対するボーナスなど)、若手医師にとってスキルアップの励みになる。

2. 有能医師への事実上のボーナス

卒後10年目以降の中堅医師は、専門スキルを活用してのアルバイトで稼ぐことが多い。「消化器内科医の胃カメラ」「婦人科医の体外受精」などであり、日給10万円以上は稼げるだろう。日本の大学病院の多くは典型的サラリーマン組織でもあり、「ダルビッシュ」級の凄腕医師が在籍していても、特定個人だけに高額ボーナスとはいかない。ゆえに、「高額アルバイトをガンガン入れる」ことが、事実上の「凄腕医師に対するボーナス」になっている。また、「高額アルバイトの申し込みが殺到」することが、「その医師が有能であることの証明」とも言える。そして、上司や病院管理職は「有能医師の派手なアルバイト」に関しては、見て見ぬふりをすることが多い。天皇陛下の心臓手術を執刀したことで知られる順天堂大の天野篤教授は、インタビューで「年収5000万以上」と答えているが、それは外部病院からの報酬を加算した額であることも述べている。

3.世間と己を知る

クリニック・専門病院・訪問診療など、様々なタイプの病院でのバイトを経験することによって、大学病院に閉じこもっていては出会えないタイプの同僚や患者と出会うことができる。と同時に、自分の興味・適性を自己分析することが可能になり、ミスマッチの少ないセカンドキャリアを選択することができる。

4.セカンドキャリア転職活動

大学病院という組織はピラミッド型組織でもあり、教授にならない人材はいずれ辞めざるを得ない宿命にある。そして、大学病院を辞めた後の就職先を見つける方法として、あちこちの病院でアルバイトして腕をアピールしつつ人脈を広げておくことは、とても有用である。病院側としても、正式契約の前に「あらかじめアルバイトで医者の腕や人柄を見ておき、また病院の実情を理解してもらう」というステップを踏むことは医師定着率を確実に上げる。婚活において、データマッチングの後に、しばらく交際期間を設けて、写真やデータでは判断できない人間性や相性を見極めてから婚約するようなものである。

ここのところ、文部科学省前局長が大学教授に再就職した裏に「文科省で天下り斡旋の疑い」というニュースが世間をにぎわしているが、「パチンコ店で賭博の疑い」とか「ソープランドで(略)」みたいな「今さら何を…」感が漂う。「天下り」とは、官僚人事の新陳代謝には必要不可欠なシステムでもあり、単純に法律で天下りを禁止すれば、中央省庁の窓際に大量のソリティア官僚が発生するだけである。事務次官・次官補佐・次官代理・担当次官・特任次官・次官心得…のようなワケの分からない役職が増殖し、タダでさえ遅い政府の意思決定が更に遅れて、日本中が混乱するだろう。

本気で天下りを根絶したいならば、「官僚のアルバイト解禁」は有用である。現役時代の薄給を補い、見聞を広め、自らセカンドキャリアを切り開いてもらえるよう支援すべきである。

 

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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