プライバシー侵害と偽ニュース問題に揺れる米新興メディア

2017年01月22日 06:00

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ハイライト:プライバシー侵害と偽ニュース問題に揺れるアメリカ新興メディア

ウェブ上の情報の信頼性、著作権やプライバシーの侵害といった問題は、インターネット普及の始まりと同じくらい古いものですが、昨年はそういった問題がこれまで以上にクローズアップされた一年でした。

日本では健康情報を扱うキュレーションメディアの品質問題がありましたが、アメリカで問題になっているのは新興デジタルメディアによるプライバシー侵害といわゆる偽ニュース(fake news)です。とりわけ偽ニュースについては、サイバー攻撃による機密情報の流出と合わせて、アメリカ大統領選挙に大きな影響を与えたと言われています。

プライバシー問題で破綻したGawker

昨年6月、Gawkerというゴシップ系のブログメディア(低コストでブロガーを雇いセンセーショナルな記事を量産する手法は日本で問題になったキュレーションメディアと通じるものがあったかもしれません)が、ハルク・ホーガン(プロレスラー)やピーター・ティール(著名なベンチャー投資家でトランプ政権移行チームにも参加)の私的生活を暴露する記事を配信したことで、彼らからプライバシー侵害の訴訟を受けて$140Mの損害賠償という判決がでたために倒産しました。大手メディア企業のUnivisionがGawkerの事業資産を$135Mで買収することになり、Gawkerは閉鎖されましたが、GizmodoやLife Hackerなど、他の系列サイトは存続しています。

ライバルのBuzzFeedは順調に成長、しかし・・・

一方、Gawkerとはライバル関係にあったバイラルメディアのBuzzFeedは順調に成長していて、一昨年8月に$200M、昨年11月にも$200Mを調達しています(大手メディア企業のNBC Universalも出資)。

近年は、エンターテイメントだけではなく社会報道もカバーしたり、ビデオを中心とする独自コンテンツの制作を強化したりしています。昨年1月からはヤフーとの提携により日本でもコンテンツ配信を開始して話題になりました。

このBuzzfeedが年明け早々に、トランプ氏とロシアをめぐる疑惑文書を(内容の真偽は確認されていない、という但し書きをつけて)全文公開に踏み切り、トランプ氏から「偽ニュース」だと批難されています。

BuzzFeed:トランプ氏とロシアめぐる疑惑文書 BuzzFeedによる全文公開とその反応 → http://urx.blue/B32A

今回のBuzzfeedの「スクープ」に対して、The New York Timesなどリベラル系の伝統的なメディアの多くは、ジャーナリズムの基本から逸脱しているとして批判的とまでは言わないまでも距離を置いています。

ちなみに、これまで偽ニュースというと極右メディアによるデマや対立国による宣伝・謀略活動といった文脈で問題視されることが多く、その拡散に一役買ってしまったFacebookが大統領選挙後に猛烈な批判を受けて偽ニュース対策に取り組んでいます。ニュースの真偽の判別や共有の可否を人間がするにせよ、コンピュータアルゴリズムがするにせよ、様々な政治勢力や新旧メディアの利害が錯綜しており、一筋縄ではいかないでしょう。

新たな局面を迎えたメディア

8年前にオバマ氏が大統領選挙に勝利したとき、そして、アラブの春と呼ばれた民主革命が進んだとき、ソーシャルメディアが政治に果たす役割は希望に満ちたものでした(もちろん政治的な立場によって印象は異なるでしょうが)。

その後、ソーシャルメディアの商業的な成功とは裏腹に、テロリズムの拡散、ネットいじめ、そして偽ニュースの氾濫など、そのネガティブな側面も目立つようになりました。グローバリズムが軌道修正を余儀なくされているように、サイバ―スペースにおける自由な言論も様々な課題に直面しています。ジャーナリズムそして民主主義が新たな岐路に立っていることをあらためて痛感します。

最近のM&A案件

・LCH.ClearnetをEuronext.LIFFEが買収(清算機関;510Mユーロ)
・TrelloをAtlassianが買収(プロジェクト管理;$425M)
・Cimagine MediaをSnapが買収(ARマーケティング;$30M)
・OmtoolをUpland Softwareが買収(文書管理;$19M)
・AltaVoiceをInvitaeが買収(患者データ解析)
・VectorをFitbitが買収(スマートウォッチ)
・ApperianをArxanが買収(モバイルアプリセキュリティ)
・FlooredをCBREが買収(不動産バーチャルフロアプラン)
・WatchwithをComcastが買収(TVメタデータ)
・JiffをCastlight Healthが買収(従業員福利厚生プラットフォーム)
・Limes AudioをGoogleが買収(電話会議の音質向上)
・Commerce SciencesをTaboolaが買収(パーソナライゼーション)

記事提供:TransCap まとめ:M&A Online編集部

TransCapおよび「米国IPO週報」について

TransCap (Trans-it Capital)
2006 年2月、米シリコンバレーで設立されたコンサルティング会社。国際的なビジネスとベンチャー投資の経験を生かし、 新規事業開発に関するサービスを提供している。M&A分野では、日本企業による海外企業の買収、知財譲渡・事業売却を支援した実績を持つ。「米国IPO週報」では、米国市場で資金調達したばかりの有望企業や海外のベンチャー関連M&Aの動向について毎週アップデートしている

●TransCap ウェブサイト www.transcap.net
●「米国IPO週報」 https://venturewatch.wordpress.com/


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年1月20日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

 

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