2016年の日本国債に対する海外からの投資動向

財務省の国際収支の発表には付表として対外・対内直接投資、対外・対内証券投資も発表されている(財務省トップページ > 国際政策 > 関連資料・データ > 国際収支状況 > 報道発表資料(発表日別)。

報道発表資料(発表日別) : 財務省
国際収支の報道発表資料の発表日別一覧

ここから昨年の日本の中長期債(主に日本国債)への海外からの投資について見てみたい。全体では以下の通り(すべて速報値の数字)。

取得  処分  ネット(億円)
1月 86,054 79,640 6,414
2月 106,434 90,026 16,408
3月 111,032 118,688 -7,656
4月 105,806 64,649 41,157
5月 56,368 47,575 8,793
6月 89,513 96,891 -7,378
7月 84,491 67,448 17,043
8月 77,452 66,069 11,384
9月 117,559 118,082 -523
10月 71,759 69,442 2,317
11月 75,190 74,803 387

このうちの欧州からの日本の中長期債への投資については下記の通り。

取得  処分  ネット
1月 73,787 62,138 11,649
2月 88,102 75,692 12,410
3月 87,947 94,394 -6,447
4月 73,414 52,344 21,071
5月 45,267 38,090 7,177
6月 65,847 72,517 -6,670
7月 57,012 58,239 -1,227
8月 53,772 56,123 -2,350
9月 85,001 87,811 -2,810
10月 55,585 62,631 -7,045
11月 57,542 59,445 -1,904

このうちのアジアからの日本の中長期債への投資については下記の通り。

取得  処分  ネット
1月 3,355 8,759 -5,404
2月 12,231 6,604 5,628
3月 5,784 12,208 -6,425
4月 16,486 4,724 11,763
5月 6,410 3,769 2,640
6月 11,637 10,053 1,584
7月 9,190 2,756 6,434
8月 15,169 2,394 12,775
9月 16,311 9,424 6,886
10月 5,854 2,200 3,654
11月 9,607 10,623 -1,016

このうち北米からの日本の中長期債への投資については下記の通り。

取得  処分  ネット
1月 7,867 6,235 1,631
2月 5,092 5,070 23
3月 13,752 8,437 5,316
4月 14,433 7,243 7,190
5月 3,890 5,042 -1,152
6月 10,403 8,975 1,428
7月 16,482 5,060 11,422
8月 6,321 5,796 526
9月 15,104 13,381 1,723
10月 9,892 4,147 5,745
11月 6,545 3,802 2,742

2016年は年明け早々に金融市場は世界的に波乱含みの展開となった。米利上げにより新興国への資金の流れに変化が生じ、原油安もあり新興国経済への影響が危惧された。年初はいわゆるリスクオフの動きを強めた。日銀は1月29日の日銀の金融政策決定会合では追加緩和策として、マイナス金利付き量的・質的緩和を導入した。その結果、日本の長期金利は初めてマイナスとなった。1月から2月にかけての欧州勢を中心とした日本国債への買いはリスクオフの動きによるもの。3月の売り越しは10年債利回りまでマイナスとなったためとみられる。しかし、4月には中期債主体に大きく買い越している。

英国でのEU離脱か残留かを問う国民投票を控え、まさかとみられていたブレグジット(Brexit)と呼ばれるのEU離脱リスクが意識されるようになった。あらたなリスク回避の動きからドイツの長期金利がマイナスとなり、現実に6月23日の英国の国民投票でEUからの離脱が決まった。

このブレグジットによる世界の金融経済に与えるリスクは限定的となり、これをきっかけにして世界的なリスク回避の動きからの本格的な反転が生じた。

7月8日に日本の10年債利回りはマイナス0.300%に低下し過去最低を記録した。日本だけでなく米国やドイツ、英国などの10年債利回りも軒並み過去最低を更新する事態となった。ここが結局、長期金利のボトムとなった。

ここで日本国債も調整局面を迎えることになるが、その下落過程で7月に米国が大きく買い越していた。しかし、7月以降は欧州からは売り越しが続く。それを北米やアジアがカバーした格好ながら、11月は中国主体にアジアが売り越しとなった。これは中国が米国債だけでなくドルを円に替えて投資した日本国債も売却していたことを示すとみられる。下記は中国の数値となる。

取得  処分  ネット
4月 11,476 1,407 10,069
5月 4,768 1,239 3,528
6月 8,140 4,688 3,452
7月 6,055 834 5,221
8月 12,222 630 11,592
9月 10,219 5,273 4,947
10月 2,705 723 1,982
11月 1,523 6,808 -5,285

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。