【映画評】スノーデン

2017年01月28日 06:00

香港の高級ホテルの一室で、元CIAおよびNSA(アメリカ国家安全保障局)職員だったエドワード・スノーデンが、ドキュメンタリー作家ローラ・ポイトラス、ガーディアン紙の記者グレン・グリーンウォルドのインタビューに答えている。大ケガで軍を除隊したスノーデンは、愛国心の強い理想に燃えた青年だった。CIAに入り抜群に優秀な仕事ぶりで上司からも信頼されるスノーデンだったが、ある時、アメリカ政府が、テロリストだけでなく一般市民をも対象にした、国際的な監視プログラムを作り上げ、不正に使用していることを知り、危機感を募らせる。そしてついに祖国を告発することを決意。ホテルの一室でスノーデンは、なぜ国家を裏切り命がけの行動に出たのかを語り始める…。

2013年にアメリカ政府による国際的な個人情報監視システムを暴露したスノーデン事件の全貌を描く「スノーデン」。エドワード・スノーデンと彼の告発についてはオスカーを受賞したドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」があるが、本作で監督を務めるオリバー・ストーンは、香港の高級ホテルでインタビュアーと対面するところからスタートし、なぜスノーデンが祖国を告発するに至ったのかを、分かりやすいドラマで描いている。彼がいかに優秀か、彼を支えた恋人リンゼイとの絆がいかに強いか、そして安全保障という名目で行われる監視プログラムの実態がいかに恐ろしいものかが、十分に把握でき、同時にエンタテインメントとしてもしっかりと成立している点がいい。

自ら開発したシステムが、実は悪用されていたと気づいたとき、コンピューターオタクで日本のポップカルチャーを愛する29歳の青年は、自己嫌悪と罪悪感に苛まされたに違いない。世界中を震撼させたスノーデン事件の政治的な側面はすでに多く語られているが、映画は愛国者だったスノーデンが、国家に失望し、ついに祖国を告発するに至る、内面の変化を丁寧に描いている。スノーデン本人の映像がラストに登場し、大きな説得力を与えているが、スノーデン事件はまだ終わっていないのだと、本作は改めて訴えているのだ。スノーデンを完璧にコピーして演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットのなりきりぶりは大きな見所だ。CIA訓練センター時代のスノーデンと心を通わせるオタク風の教官を演じるのはニコラス・ケイジ。出演時間は短いが、後のスノーデンの生き方に大きな影響を与える人物で、強い印象を残している。
【70点】
(原題「SNOWDEN」)
(米・独・仏/オリヴァー・ストーン監督/ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー、メリッサ・レオ、他)
(危機感度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年1月27日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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