北の黒鉛減速炉の再稼働は演出?

2017年01月30日 11:30
北朝鮮国旗@ウィーン

▲風になびく北の国旗(2013年4月11日、ウィーンの北朝鮮大使館で撮影)

北朝鮮の核関連施設がある寧辺の5000kwの黒鉛減速炉が再稼働した兆候が見られるという。この情報は北の核関連施設の動向を監視している米ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮研究グループ「38ノース」(韓米研究所)が27日、公表したもの。

西側では既に廃炉されても不思議でない黒鉛減速炉の冷却水が放出される川の水が溶け出しているのが人工衛星の写真分析の結果、判明したというのだ。その上、原子炉周辺で車両の動きが昨年からキャッチされていたという。その結果、黒鉛減速炉の再稼働、プルトニウム生産の可能性というニュースとなって、世界に報道されたわけだ。

当方はこの記事を読んで3年前にほぼ同じニュースが発信されたこを思い出した。

寧辺の5kw黒鉛減速炉周辺の上空から放射性希ガスが検出されたという。韓国の韓国日報が韓国政府関係者の話として報じたものだ。もし事実とすれば、減速炉は再稼動した可能性が高い。北朝鮮原子力総局報道官はそれに先立ち、「6カ国合意に基づいて無力化されていた黒鉛減速炉を再稼働させる」と宣言していた。しかし、ウィーンに本部を置く包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)は、「北朝鮮の核関連施設から放出される放射性希ガスを探知できるのは、ロシア、モンゴル、そして日本の高崎観測所の3カ所だが、キセノンを検出したという報告を受けていない」というものだった。

興味深い点は、この時もジョンズ・ホプキンス大の韓米研究所が「衛星写真を分析したところ、蒸気タービンと発電機が設置された原子炉横の建物から白い蒸気が発生しているのを確認した。これは原子炉の稼働あるいは近く稼働を再開することを意味する」(中央日報日本語電子版)と説明し、黒鉛減速炉の再稼働説を後押ししたのだ。

ここで北の核関連施設が集中する平安北道寧辺(平壌北部約80km)を簡単に紹介する。寧辺市内から約6km郊外に走ったところで左に曲がると、直ぐにゲストハウスに着く。国際原子力機関(IAEA)査察官が宿泊する場所で、2階建てのハウスの収容能力は10人だ。

ゲストハウスから主要道路に戻り、核関連施設が集中する核エリアに入ると、左側にロシア型研究炉、右手には5MW黒鉛型減速炉が見える。それに隣接していた冷却塔は2008年6月に破壊された。その近辺に軽水炉建設敷地がある。九龍江を超えると核燃料製造工場にぶつかる。同工場を通過すると、いよいよ北のウラン濃縮関連施設に到着する。同施設は長さ約130m、幅約25m、高さ約12mの細長い施設だ。北のウラン濃縮施設は40余りある核関連施設の一つで、「4号ビル」と呼ばれている。

当方が黒鉛減速炉再稼働説に否定的な理由は3点ある。

①北はウラン濃縮関連活動を開始しているから、プルトニウムの生産目的で減速炉を再開する必要はない、
②減速炉を再稼働させるためには核燃料棒を生産しなければならないが、そのような情報は聞かない。
③IAEA査察官の証言によると、黒鉛減速炉は古く、一部錆びている。再稼動させたとしても大きな成果は期待できない。

だから、2013年の黒鉛減速炉再稼働説の時は、「プルトニウム生産が狙いではなく、中国を中心とした6カ国協議の再開交渉を有利にするための政治カードに過ぎない」と、黒鉛減速炉の再稼働が偽装工作の可能性があると受け取ってきた。

今回の黒鉛減速炉再稼働説はどうか。トランプ新米大統領の就任と関連するのだ。金正恩氏は博物館入りしてもおかしくない黒鉛減速炉の再稼働を演出し、北がウラン、プルトニウムの両面で核兵器を製造していることをデモンストレーションし、トランプ新大統領に北側の核開発への決意を誇示する狙いがある、と考えている。

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