期待を超えるYou Can Do Anythingの哲学

2017年01月31日 11:30

53546846 - human resources interview recruitment job concept

人材像について、二つの異なる類型を設けよう。一方は、期待という債務を負って働く債務人材、他方は、自由という責任を負って働く資本人材である。債務人材というのは、実のところ、ごく普通の企業の人材のことである。新入社員だろうが、最上層の幹部職であろうが、企業内の人材は、基本的に、企業の自分への期待の実現、即ち、企業から自分に与えられた具体的な職務の遂行もしくは達成こそが責務だからである。

さて、変革や革新は、どう考えても、非連続なものであり、創造的な飛躍でなければならない。そのような創造の担い手は、債務人材ではない。創造は、外部からの期待によっては生まれ得ず、また、組織の設計からも生まれないのだ。創造の原点は、常に個人の内面の問題である。創造の芽は、個人の自由な活動のなかにしかない。故に、You Can Do Anythingという自由が必要なのだ。その自由のもとでの創造の担い手を、通常の企業内人材である債務人材と区別して、資本人材と呼ぶわけである。

資本人材からみたとき、企業とは、自由な創造がなされる場だが、企業の立場からみたときには、その場とは、企業が創造の誘発を意図して設計した環境である。企業は、債務人材を直接に管理する。しかし、資本人材については、資本人材の活動する環境を管理するのである。なお、創造の芽は、企業の手で育てられ、企業の成長につなげられていくのだが、それを担うのは、もはや債務人材である。資本人材の機能は、あくまでも、創造の原点にあるのだ。

資本人材については、例えば環境の設計の問題とか、報酬のあり方とか、語るべき論点は非常に多いが、要点は、企業のなかでYou Can Do Anythingといったとき、無条件無限定の自由ではあり得ないということに帰着する。ごく当たり前のことだ。

ところで、債務人材も、期待の実現の方法については、一定の自由をもっているはずだ。企業人事制度では、多くの場合、目標管理という名のもとで、企業からの期待と本人の目標との一致を擬制していて、そうすることで、本人の職務への主体的関与、片仮名でいえば、インゲイジメントもしくはコミットメントを引き出しているのである。

実際、期待を上回るための努力、即ち、自発的な創意工夫がない働き方など、人間の生き方として、考えにくい。もっとも、現代社会の病理は、人間の勤労観の基礎をも蝕んでいるかもしれないが。

さて、昇格とは何かといえば、企業経営からの期待が大きくなることにほかならない。期待が大きくなれば、創意工夫の余地は大きくなる。では、債務人材は、昇格して与えられる期待が大きくなると、資本人材に接近していくのかというと、そうではなくて、債務人材は、どこまで行っても債務人材である。債務人材から資本人材へは、程度の差を超えた飛躍が必要だ。そこには、次元の超越があるのだ。You Can Do Anythingの自由とは、通常の裁量余地における創意工夫とは、全く次元が違うということである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
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