子どもの未来のために、生活保護を受けられなかったリアルな体験談

2017年02月01日 09:30

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子どもの貧困問題に取り組む、NPO法人フローレンスの駒崎です。

先日、「「生活保護家庭の子は大学行っちゃダメ問題」が、国会で安倍総理にぶつけられました」という記事を書いたら、ヤフトピにあげて頂き、80万人近くの方が見てくださいました。

 その中で、体験談を寄せて下さった方がいらっしゃったので、ご本人の許可を得て、ご紹介します。僕が重要だと思った点は強調表現をしています。(プライバシーに配慮し、固有名詞等、一部伏字・改変していますが、ほぼそのままです)

困窮の一例

件名: 生活保護と大学進学について

本文:

突然のお便りにて失礼いたします。

私は大阪に住んでいる4歳のシングルマザーです。昨年高校を卒業して現在浪人生の息子を育てています。

離婚したのは1◉年前で、それまで専業主婦であったため、パート生活で子供を育ててきました。生活は苦しく、年齢のせいもあり正社員で働く先も見つからず、今も何とかパートと離婚時の慰謝料(当時で300万円)の貯金でどうにか生活をしております。

家もなく他に財産もなく頼るべき実家もなく、私が子供に残してあげられるのは健康と教育だけと思い、子供を育ててきました。

中学校までは公立で、クラブは▲▲部に入り、夏休みの終わりまで部活動で頑張っていい記録を残してくれるように心身を鍛えてくれました。

高校は、◎◎(有名進学校名)に入り、息子も大学進学に向けて今も勉学に励んでくれています。

イマドキの学生なのに、携帯もスマホもPCもゲームも持たず、ぜいたくも言わずカラオケにも行かず、家の仕事を文句も言わずこなしてくれる素直で優しいいい子です。

外食も旅行も、テーマパークにもいかず、貯蓄もパート収入も、全て子供の学費ときちんとバランスの良い食事を作ることに充ててきました。その私の人生に後悔はありません。

ただ昨年、腹部腫瘍のため子宮と卵巣を摘出する手術を受けました。生活費もいよいよ底をつき、せめて医療費だけでも何とかならないかと、市役所に相談をしてみました。

「子供さんが高校を卒業されているなら働いてもらってください」と言われました。

◎◎(有名進学校名)を卒業した息子は、現役で旧帝大に入る能力はありませんでしたが、少なくとも大学で学ぶ資質はあると思っています。

それに、普通科の高校を卒業した高卒の子に、どんな職があると言うのでしょうか。工業学校や商業学校ならいざ知らず、今アルバイト生活をして、私のように40過ぎたらまともな就職の口はあるのでしょうか。

ちなみに医療費についてですが、少額ですが府民共済には加入していますが、これは私が死んだときの子供の当面の生活費のためで、医療費で保険金請求をすると再加入は5年間はできないようなので、保険請求はしませんでした。その5年間に私に万が一のことがあったら、子供は進学すらすることができません。

子供は能力に応じて教育を受ける権利があると思いますが、その「能力」には、親の経済力も含まれるのでしょうか。

その役所の言葉が、貧困を連鎖させているのだということに、どうして誰も気づかないのだろうかと思います。

子供はおそらく、これからきちんと学歴と教養を身に着けて、収入を得てより高額の税金を納められるようになるはずだ、と私は思っています。そのような社会人に育てるのが私の権利であり、義務であると思います。

この命はそのためにあります。なので、医療費助成も生活保護も、子供が「いまから一生」低賃金で働くことが条件だと言うなら、そんな制度はこちらから願い下げです。

ただ、そのことに気づいてくださる方もいるのだと知って、少し気が楽になりました。私の生き方は正しかったのだと、背中を押していただいたような気がして、ご連絡差し上げました次第です。

補足しますと、彼女とはこの後もやりとりして、夫からの養育費は止まっている、今も生活保護を受給できる所得であること(けれども上記の理由でもらっていない)、ということも分かりました。

このメッセージを頂いた後、僕は民間奨学金紹介サイト(民奨)や、関西のひとり親支援団体(しんぐるまざぁずふぉーらむ関西 )をご紹介しましたが、暗澹たる思いになりました。

それは、こうしたケースが悲惨だからではなく、「ままある」ケースだからです。

ソーシャルワーク不在の行政窓口

行政窓口に行ったタイミングというのは、厳しい環境にある人が公的支援と繋がる機会でもあります。主訴が医療費でも、生活困窮問題や、教育費のニーズについて、行政担当者は知ることができます。

その際は、医療費助成メニューの使い勝手が悪かったとしても、代わりに福祉貸付制度の紹介や、奨学金メニューの提示、また養育費の取り立てのための法テラスに繋ぐことなど、様々なことができたはずです。

しかし、行政担当者は「子どもが働けるなら、働いてください」と、相談者の心情を無視した対応をしてしまう。それは担当者も十分なトレーニングを受けていないためであったり、通常業務で余裕がなかったり、そもそも組織としてソーシャルワークをすべきである、という文化が浸透していなかったり、と様々な理由があります。

行政不信が招く、「支援が届かない」現象

国の官僚の方と子どもの貧困問題等について話していて、こう仰ったことがあります。

「◎◎も、▲▲も、支援としてはかなり充実してきています。(問題を抱えた人が)ちゃんと調べて、相談してくれれば、問題は解決するはずなんです」

政策的にはそうなんです。様々なメニューは存在する。しかし、そのメニューは実装されていない。窓口では紹介されなかったり、紹介されても説明がよく分からなかったり、申請が複雑だったりする。

また、そもそも一回行政の窓口に行って嫌な思いをした人は、行政不信に陥るので、また支援を仰ごうとは思わないのです。

そして、明らかに高利子の街金や闇金等から借りる道を選択する人も多くいます。彼らは難しいことは言わないし、分かりやすいし、アクセスしやすいのです。

とりあえず、制度を変えよう

役所の公務員の人のソーシャルワーク能力の向上が必要なのは、言うまでもありません。とはいえ、それには長い時間がかかります。彼らは数年で異動しますし、それだけをやっているわけではなく、基本は現場職ではなく事務職で採用されています。

よって、とりあえず大元の制度を、「生活保護を受けても、子どもの進学は犠牲にしなくて良い」と改正すれば、末端の行政窓口の指導内容も、それに伴い改善される可能性が出てくるのだと思います。

「子どもの貧困」は、景気が悪いからそうなってる、ということだけではなく、人々を支える制度がバグだらけであまりに脆弱、ということが原因となっているということも、こうしたケースを見てお分かりになって頂けるのではないかと思います。

国会やメディア空間での、更なる議論を期待したいと思います。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年1月31日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。

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駒崎 弘樹
認定NPO法人フローレンス代表理事

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