「天下り根絶」に向けて

内閣府再就職等監視委員会よりの「文部科学省職員及び元職員による再就職等規制違反行為が疑われた事案に関する調査結果」公表を受け、政府は先月20日文科省事務次官の交代を閣議決定し、昨日内閣人事局に外部の弁護士を含む「約30人態勢の調査チームを設置し、全府省庁対象の天下り実態調査を開始」しました。

菅義偉官房長官も言われている通り「今回の事案は、OBが単独で行ったということではなく、文部科学省がOBを利用して再就職のあっせんを行う枠組みを構築していた」わけですが、早稲田大学の不見識も然る事ながら、当該省が組織的に動き一私大に圧力を掛け天下り受け入れ可否を補助金交付の物差しにしていたらば正に暴挙と言うべきことです。

本件を巡っては、第1次安倍内閣時に成立した「国家公務員法等の一部を改正する法律」(平成19年法律第108号)に基づく現行の国家公務員の再就職規制につき、「OBによる再就職あっせん」等々その不備が今国会でも様々議論されており、その一つに民進党や共産党は上記10年前の改正に伴う天下りの「規制緩和」を問題視しているようです。

即ち、改正前「離職後2年間、離職前5年間に密接な関係のある企業への再就職」を原則禁止していたものが、改正後は斡旋等に行為規制を掛け再就職を「自由」にしてしまったということです。民主党等の野党は当時「2年の再就職規制を5年に強化すべき」とも主張していたようですが、これから後改正前の規制思想の延長線上に日本が取るべき針路は見出し得ないでしょう。

役所には、有能な方は沢山おられます。人口減少時代を迎えている今、我国のため寧ろその人達を上手く活用できる仕組みを整えて行くことが非常に大事だと思います。今回の件で述べるならば、「私立大は文科省から私学助成金などさまざまな補助金を受け取っており、文科省とのパイプが補助金確保に有利となる」実態こそ、真に問題視されるべきで早急にメスを入れねばなりません。

元役人を教授として再就職させるといった場合、大学側は例えば、教授候補者の論文や書籍の量・質両面で客観的な評価基準を設けるとか、あるいは各教授会における夫々の専門性に基づく厳格な実質審査を行う等々、一定のルールの下それを公平公正にクリアした有能な人のみを補助金に紐付かない形で選べるようすべきです。

そもそもが日本国憲法第二十二条にあるように「何人も、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有する」わけで、その人が十分に優秀であれば退職後どこでどう働こうと基本その人次第だと私は考えています。官に対しては現行「現職職員が自らの職務と利害関係を有する一定の営利企業等に対し、求職活動を行うこと」自体を規制してもいますが、民の場合でも辞める前その殆どが職探しを始めており、規制の掛け方にバランスを欠いているように思われます。

先に指摘した通り寧ろ第一に是正されるべきは、大学等への補助金が本来当該大学の教育や研究といったものと照らし合わせて公正に行われるような仕組みを作るべきでしょう。例えば、文科省以外の公的な機関と民間双方から出した専門委員(任期2年、再選なし)で補助金の妥当性が評価されるような仕組みを作ったらどうでしょうか。

そこを改め正すことなしに、公務員の職業選択の制限強化に向かうは如何なものかと思います。従って先ずは、例えば教育機関であれば評価を下し税分配を行う際、その判断材料を天下り云々からきちっと切り離してルール化すべきだと考えています。

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