ヘッジファンドが価格上昇に記録的な賭けをしている

2017年02月07日 16:00

協調減産によるリバランスの進行に加え、トランプ大統領の経済政策がインフレを呼ぶ可能性があるとして、ヘッジファンドのみならず大手ファンドも買い越しに回っている、という記事をFTは掲載されている(”Hedge funds make record bet on rising oil prices” around 3:30am on Feb 7, 2016 Tokyo time)。サブタイトルは “Investors back OPEC’s supply cut and seek protection against risk of inflation” となっている。

記者が参照しているのは1月末のポジションだが、先物曲線はいつのものを見ているのだろうか。筆者にとっては最後の数行が気になる記事だが、読者の皆さんにも有益だろうと思い、要点を次のとおり紹介しておこう。

・市場のタイト化を目指すOPECの動きに賭け、一方で将来のインフレリスクに備えて、ヘッジファンド筋は価格上昇に記録的な賭けをしている。

・管理当局と先物取引所のデータによると、投機筋はWTIやブレントの先物やオプションなどで、ショートポジションを1億1,100万バレルとする一方、10億バレルに近いロングポジションを取っており、ネットで8億8,500万バレルのロングポジションとなっている。

・これは世界全体の需要の約9日分にあたるが、トレーダーの中には、彼らが利益確保のために大量に売りに回ったら価格は大幅に下落すると心配する向きもある。

・今年初めから価格が比較的安定的に推移している中でこのような記録的な賭けが増加していることは、大手ファンド(large macro funds)が参加している可能性を示している。彼らは往々にして他の商品のヘッジとして石油を取引している。

・OPEC・非OPECの協調減産に加え、トランプ大統領の減税、規制緩和、インフラ支出増加などの政策は、市場をして米国経済の成長を確信させる一方、ファンド筋が防衛策として石油を買うこともある、インフレの到来をも懸念させるものだ。

・Ashburton InvestmentのRichard Robinson曰く、「エネルギーは、予期せぬインフレに対する本物のヘッジ策を与えうる、おそらく唯一の商品だ」。

・高騰する商品価格とドル高の影響をまともに受けるためインフレに関心の高い欧州の投資家たちにとって取引量の多い石油先物は、ポートフォリオ形成上きわめて魅力的なものだ。

・さらに投資家の中には、ファンドが原油を買い込んでいる背景には、石油生産そのものに直接関連した理由があると見る人達もいる。

・OPECの減産は、最大の生産国であり実質上のリーダーであるサウジアラビアが主導している。データに見られる輸出量は減少しており、米国シェールの掘削回復にも関わらず、石油市場は今年中にはリバランスするだろうという見方を裏付けている。

・あるヘッジファンドのマネージャー曰く、「これから何ヶ月かの間に在庫減少が進むだろうが、投資を促進するのに十分なほどには価格は高くなっていない」「我々の疑問は、なぜ価格がもっと上がらないのか、という点にある」。

・OPECの減産合意により、11月30日から1月1日の55ドルまで価格は約22%上昇した。だがそれからはさほど上がっていない。トレーダーたちは、目先の価格が比較的安定していても、市場はさらにタイトになるかも知れない、ということを指し示す先物曲線に注目している。

・先物曲線全体は、もはや将来受け渡しのもののほうが目先受け渡しのものより高いというコンタンゴではなく、将来受け渡しのものは反転して、バクワデーションになっている。

・投資家にとって、より魅力的な、より高い価格への賭けを可能にしている。

むむむ。
最後の二つの文章は、1月31日でも2月6日でも、NYMEXのWTI先物曲線とは必ずしも合致していない気がする。

1月31日の終値は、2017年3月受渡しが52.81ドルで、それから少しずつ上昇し(コンタンゴ)、2017年9月受渡しが55.05ドルと「55ドル台」となり、それから2021年6月までは55ドル台で波打っている。それから2021年12月が56.01ドル、それからは再びコンタンゴとなっており、一番先の2025年12月が57.75ドルとなっている。

2月6日でも傾向は同じだ。2017年3月受渡しが53.01ドル、それからコンタンゴを見せ、2017年8月が55.14ドルと「55ドル台」となり、2020年6月まで55ドル台を波打っている。2020年6月に56.03ドルをつけ、それからはすこしずつコンタンゴで2025年12月が58.44ドルとなっているのだ。
もっとも両日とも、2021年以降の取引はほぼ皆無で、取引所の評価した終値のみである点に留意は必要だ。

つまり市場は、コンタンゴの後の2017年夏以降は「波打っている」のであって、「バクワデーション」になっているとは言い切れないのではないだろうか。

本物のバクワデーションが招来したら、それはマーケットの大変化といっていいのだが、それは果たしていつ、価格がどこまで上がったら訪れるのだろうか。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年2月7日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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