三越伊勢丹、M&Aでコト消費を収益源に

2017年02月14日 06:00

三越伊勢丹ホールディングス<3099>が新規事業の育成に向けM&Aを加速している。昨年末にエステティックサロンの運営企業を買収したのに続いて、今月10日、東証2部上場の旅行会社ニッコウトラベルに対する株式公開買付け(TOB)を発表した。背景にあるのは百貨店事業に依存していては将来が先細りになるとの危機感だ。モノの売り買いから、サービスや体験を楽しむ「コト消費」に個人消費がシフトとすると見て、事業ポートフォリオの拡大を急いでいる。

ニッコウトラベルは1976年、海外旅行の代理店業務を目的として日航トラベルとして設立され、1979年に商号をニッコウトラベルに変更している。「ゆとりある豊かな旅」「高い安心感と満足感」を主眼とし、自社添乗員の添乗による質の高いツアーを展開する。顧客は60 歳代以上が大半を占めており、特に 70 歳代は全体の半数ほどを占めているという。

一方、三越伊勢丹は「旅行は代表的なコト商品」と位置づけ、2015年1月に全額出資の旅行子会社「三越伊勢丹旅行」を設立。自主企画の旅行事業の強化に乗り出していた。とりわけ時間とお金に余裕のあるシニア世代の旅行市場の拡大をビジネスチャンスととらえ、新規事業として育成する考えだった。

開示資料によれば、三越伊勢丹は2016年5月中旬にニッコウトラベルの創業者で筆頭株主の久野木和宏氏から株式の売却意向があることを確認し、買収の検討を始めた。ニッコウトラベルはシニア向け旅行に強みを持つ一方、認知度があまり高くなく、主な広告宣伝手段である新聞発行部数が減少していることから、シニア向けの新たな広告宣伝手段を模索しているところだった。三越伊勢丹は、東証2部に上場するニッコウトラベルの経営管理をグループで見る体制にして上場を廃止すれば管理コストを削減できると判断。2016年9月中旬にTOBを実施後に組織再編で全株を取得する二段階買収を提案した。

1株あたりの買い付け価格は390円。10日の終値(301円)と比べて30%のプレミアムを付けた。しかし、取得価額は36億7800万円と2016年12月末の純資産(37億9600万円)を下回る水準で、三越伊勢丹は見方によっては安い買い物をしたと言えそうだ。

エステ・ブライダル‥‥新規事業に相次ぎ進出

三越伊勢丹は美容・健康事業でもM&Aに取り組んでいる。2016年12月に、エステティックサロン「ソシエ」を運営するソシエ・ワールドを子会社に持つSWPホールディングスの全株式を取得し、子会社化すると発表した。SWPホールディングスの2016年3月期の売上高は185億円、営業利益は4億9400万円。投資ファンドを運営するポラリス・キャピタル・グループから全株式を譲り受けた。取得価格は公表していない。

三越伊勢丹は本件買収について、「エステティックを始めとするトータル・ビューティの事業は、コトサービスの強化として、お客さまがより自分に合った価値観を追い求める上で、今後、当社グループに必要な事業」と説明する。買収後はグループの資源を最大限活用し、出店機会の獲得やシステム・物流等のインフラ強化・効率化等を通じた事業拡大を図っていくという。

三越伊勢丹が新規事業に本腰を入れ始めたのは2年ほど前からだ。グループの中長期戦略では、百貨店のあるべき姿を追求するとともに、海外店舗における新しいビジネスモデルの確立や成長エリアへの新規出店、また新規・成長事業の強化・拡大を図り、連結営業利益500億円以上の早期達成を目指すとしている。こうした中、新規事業の領域では、旅行やサロン事業のほか、ブライダル、飲食、医療モール事業に進出するため、異業種企業と相次ぎ合弁会社を立ち上げている。

新事業の創造に関連して、ベンチャー企業への投資も始めている。2016年1月、100%出資のベンチャー投資子会社「三越伊勢丹イノベーションズ」を設立した。これまでにオンライン上でギフトを贈れるeギフトサービスを運営するギフティ(東京・品川)、自動会計簿・資産管理サービスを提供するマネーフォワード(東京・港)、高級中古ブランド品の引取から鑑定・値付、ネット上での販売、購入者への配送までを全て行う委託販売サービスのアクティブソナー(東京・港)の3件の投資を実行した。

これらはすべてインターネット関連のビジネスを行う企業であるのが特徴だ。消費者が買い物をする場所が実店舗からオンラインへと移行するなかで、オンライン上でも三越伊勢丹グループとの接点を増やしていく狙いとみられる。

背景に百貨店の苦戦、その他事業の収益拡大急務

新事業の強化を急ぐ背景には主力の百貨店事業の苦戦がある。1月27日に発表した2016年4~12月期連結決算では、売上高が前年同期比3.9%減の9306億円、営業利益が36.2%減の196億円と減収減益となった。セグメント別にみると、百貨店事業の営業利益は56.7%減の88億円とほぼ半減した。

中国人の「爆買い」が一服するなど、訪日旅行客に向けたインバウンド消費に一時の勢いを失う一方で、コト消費などの体験型消費はインバウンド向けにも伸びが続いているもよう。子会社の三越伊勢丹旅行は昨年10月、インバウンド向け旅行サイト「VOYAGIN」でプレミアムクルーザーで行く富士山と箱根の日帰り旅行の紹介を始めた。飲食店の企画運営会社「三越伊勢丹トランジット」では、8月に設立した新会社がオーストラリア発のイタリアンレストランを今年4月に表参道ヒルズへ出店する事が決まった。

旅行や飲食・ブライダルなど「コト消費」を主体とする「その他事業」の売上高は4~12月期に前年同期比3.5%増の588億円、営業利益は約3倍の18億円と好調に推移している。営業利益ベースでは連結全体に占める比率が約1割の規模まで成長している。

2017年1~3月期からはニッコウトラベルやソシエ・ワールドの子会社化による収益貢献が始まる。三越伊勢丹グループとの相乗効果も発揮して「その他事業」の収益は来期から本格的に拡大しそうだ。コト消費の拡大を一段と取り込むため、三越伊勢丹がさらなるM&Aに動く可能性もありそうだ。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年2月12日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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