就職か、大学院か。それが問題だ

2017年02月15日 06:00

画像出典;写真AC

2月中旬になり、大学受験はいよいよクライマックスを迎えている。受験生は私のアドバイスも参考にしていただき、無事に志望大学に合格して欲しい。

さて、この時期は大学3回生が卒業後の進路を考え出す頃でもある。2017年の就活スケジュールが6月スタートになっているとはいえ、インターンシップは始まっているし、3月からは企業説明会も始まる。大学3回生は2月の試験が終われば、就職活動の準備が本格化する。

そんな中、理系の大学3回生はのんびりとしている人が多いだろう。理系の大学3回生は、

「自分は大学院に進むと何となく思っているので、まあ、就職活動は2年後でいいかな」

「就職活動をするとしても、4月に研究室に配属された後で、教授推薦で何とかなるだろう」

と考えているものだ。実際、私がそうだった。

しかし、何となくで大学院に行くかどうかを決めると、20代前半の貴重な2年間を棒に振ってしまう。就職か、大学院か、迷っている理系大学生にアドバイスを送りたい。

大学院に行っても、その後の就職活動にはメリット無し

私が大学院に行った理由は、「何となく」である。同期の友人はみんな大学院に行くと言っていたし、ソフトテニス部の先輩も、理系の先輩はみんな大学院に行っていた。その結果、私のいた電気工学科は、30人中28人が大学院に進学した。

一応だが、自分の中ではもっともらしい理屈を用意していた。それが、「学卒で就職するより、院卒で就職する方が有利」というものである。

理系大学生・院生の就職は、教授推薦をもらった企業に面接を受けに行くというものであり、学科内で教授推薦を貰えるかどうかが大きな差になる。教授推薦は院卒から優先して貰えるので、確かに院卒の方が就職には有利とは言える。

しかし、振り返ってみるとそれは微々たる差であった。

私は院卒で迎えた就活で、人気企業・キヤノンの教授推薦を貰い、面接に臨んだ。そして、あっさりと落ちた。それから2巡後でもまだ枠が余っていた事務機器メーカーの教授推薦を貰い、無事に合格することができた。

パナソニックとかソニーとか、誰もが知る人気企業では確かに学卒が教授推薦を貰うことは難しい。しかし、2巡目でも良い企業は十分に残っているので、学卒でも希望の企業を受けることができる可能性は高い。

私の同期でただ一人、学卒で就職した友人がいた。彼は電力会社を希望していたが、第一希望の関西電力は一番人気であり、院卒で枠が埋まっていた。しかし、電力会社は他にもある。彼は無事に中部電力の教授推薦を貰い、採用された。

もちろん、教授推薦ではなく、一般枠で就職活動すればどこでも受けることができる。私が院卒で教授推薦を貰いながらさらっと落ちたように、教授推薦はずいぶん前からその効果がめっきり小さくなっている。

教授推薦の有無より、しっかりと準備するかどうかが就職活動を左右するので、学卒でも十分にチャンスはある。

大学院卒と大学卒で就職後に違いはあるか?

就職活動の次に気になるのが、就職後は大学院卒と大学卒のどちらが有利か、だろう。

大手企業の技術職の採用情報を見ると初任給は、

大学卒:20万円代

大学院卒:23万円代

となっているところが多い。

私が大学院卒で入ったメーカーは同期で150人程の技術職がおり、その内学卒は10人程度だった。院卒・学卒に限らず、入社1〜2年目の定期昇給は5千円ほどなので、学卒が2年働いても給与差は埋まらなかった。

昇進も院卒が有利であった。個人差があるが大体、院卒は7〜8年目で係長に昇進していたが、学卒は10〜12年目くらいで係長に昇進していた。表立って抗議をするわけではないが、学卒の同期や先輩はかなり不満を持っていたようだった。

しかし、初任給の差や昇進はいずれ追いつくので、あまり気にしなくて良い。

給与や昇進で差がつくのは、学卒を差別しているわけではなく、年齢を重視する日本企業ならではの人事制度の特徴だ。特に大企業では10年目くらいまでの主任・係長への昇進までは、ほとんど年齢をベースに昇給・昇進が決まり、横並びである。学卒は2歳若いという理由で院卒の同期に比べると不利ではあるが、10年くらいかけて徐々に院卒に追いつくようになっている。

そして、チームリーダーや管理職として期待される30代後半から40代前半にかけては、仕事の実績だけで昇給・昇進が決まる。管理職に受かった先輩を見ていると、学卒・院卒の差は全く感じなかった。

学卒にとっては「院卒に追いつくのに、そんなに長くかかるのか」と嘆く気持ちはわかるが、「いつかは追いつける」ということだけは覚えておいて欲しい。

もっとも、ベンチャー企業を始め、院卒・学卒を全く気にしない企業も増えてきている。そういう企業で教授推薦を出しているところはあまり無いが、せっかく学卒で就職を考えるなら是非とも調べて、候補に入れて欲しい。

大学院で学んだことは仕事で役に立つか?

役に立ちません、以上。

私はメーカーでエンジニアとして11年働いてきたが、そこで大学院で学んだ知識が活かされることはゼロに近かったと思う。給料や昇進はともかく、仕事の内容で院卒・学卒で差がつくことは全く無かった。

大企業のエンジニアと言っても、「周囲とコミニュケーションが取れる」「きちんとした文章が書ける」「エクセルでデータ処理ができる」「計測器の使い方がわかる」くらいを押さえておけば、ほとんどの仕事はこなせる。

大学院で学んだ超伝導や量子力学の理論が役に立つ日は来なかった。

研究したいなら大学院へ、就職したいなら就職活動を

以上のように、大学院に行っても就職活動や就職後に有利になることはほとんど無い。そのため大学院か就職か悩んでいる理系大学生には、

最終的に就職を考えているなら、学卒で就職した方が良い

とアドバイスを送りたい。

しかしアドバイスに反し、大学院卒でメーカーに就職した私であるが、実は大学院に行ったことを全く後悔していない。

2年間という短い時間ながら、研究の世界の奥深さを垣間見ることができ、自分の研究者としての実力の無さを痛感したからだ。

私が大学院に進学した理由としては「みんな行ってるから何となく」ともう一つ、「研究者への憧れ」があった。せっかく難関とされる国立大学に入ったのだから、そこの研究室で日本の科学技術の先端に触れ、あわよくば自分もノーベル賞級の発明・発見ができるのでは、と夢想していたのだ。

しかし、大学4回生で研究室に配属されてからの3年で、その夢が不可能であることを悟った。研究の世界は、私の想像よりはるかに奥が深く、化け物みたいな頭脳を持った天才が凌ぎを削っており、私がどんなに努力しても決して太刀打ちできないと思わされた。

教授や助教授、助手、先輩一同から「お前は研究者の才能は無い、向いていない」とお墨付きを貰い、私は院卒でメーカーに就職することを選んだ。

私は大学院の2年間で研究者としての夢をすっぱりと断ち切ったことで、就職後に「自分の生きる道はここしかない」と全力を出すことができた。その結果、10年で100件の特許を取得という高いパフォーマンスを実現できた。

また、今こうやってフリーランスとして活動している中で、今さらながら大学院の知識・経験が活きてきたりしている。STAP細胞を論評した記事を書いたこともそうだし、今この記事を書いていることもそうだ。

周りから見れば遠回りだったかもしれないが、私の人生にとっては、大学院の2年間は確かな意味を持っている。かけがえのない2年間だ。この時期の授業料、生活費を出してくれた両親には感謝の気持ちでいっぱいである。

というわけで、大学院か就職か悩んでいる理系大学生には、

研究の世界に興味があり、環境が許すなら、大学院進学はオススメだ

ともアドバイスを送りたい。

大学の研究室ではメーカーではできない、面白い研究、レベルが高い研究であふれている。それはあなたが想像している以上に興味深いものであり、知的好奇心を大いに刺激してくれるだろう。

就職は院卒後でもできる。無駄な2年間になるかもしれないが、無駄を堪能するのも若さの特権だ。

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宮寺達也 パテントマスター/アゴラ出版道場一期生
プロフィール
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。

 

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宮寺 達也
パテントマスター/アゴラ出版道場一期生

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