「神父さん、私はあなたを許します」

2017年02月15日 11:30

ローマ法王フランシスコは、聖職者の性的虐待の犠牲者だったダニエル・ピッテ―氏(Daniel Pittet)がその体験をまとめた本の序文に、教会の聖職者による性犯罪に対し深い謝罪を表明する一方、教会関連施設内の性犯罪に対し強い姿勢で対応することを約束する旨を記述している。バチカン放送(独語電子版)は13日、同報道をトップで報じた。以下、同放送が配信した記事の概要を紹介する。

▲ダニエル・ピッテー氏の本「神父さん、私はあなたを許します」

▲ダニエル・ピッテー氏の本「神父さん、私はあなたを許します」

フランシスコ法王の序文は13日のイタリア日刊紙「ラ・レプップリカ」に掲載された。スイス人の著者ピッテー氏(57)は現在、結婚し、6人の子持ちだ。図書館司書として働いている。同氏は8歳の時、一人の神父(カプチン会所属)に性的虐待を受けた(同氏は当時、ミサの侍者を務めていた)。それが4年余り続いたという。フランシスコ法王は2015年、バチカンで同氏と知り合いになった。同氏の本はフランス語、イタリア語、ポーランド語で訳され、バチカンの出版社LEVから出版された。本の題名は「神父さん、私はあなたを許します」(独語「Ich vergebe Ihnen, Pater」)というものだ。

フランシスコ法王はその序文で「著者の報告は必要なものであり、価値があり、われわれを鼓舞するものだ。著者の体験は読む者の心を揺さぶる。私は聖職者による性犯罪が犠牲者にどれだけ深い傷を残したかを改めて知った。そして長い間、犠牲者が歩まざるを得なかった道がどれだけ苦しいものだったかを知った」と述べている。

法王は「彼の証言を聞く者は聖職者の心にどのように悪魔が侵入するかを学ぶだろう。キリストに仕え、教会に奉仕する神父が悪魔のような行為をどのように行うことができるのか。人々を神のもとに導くべき者が犠牲者の生命、そして教会の命を破壊できるのか。犠牲者の中には自殺した者もいる。これは私の心、良心、そして全ての教会が背負っていかざるを得ない重荷だ。謙虚に頭を下げ、許しを求めざるを得ない」と記述している。

その一方、聖職者の性犯罪を「キリストが教える内容とは全く異なった行為であり、モンスターのような恐るべき罪だ。加害者ばかりかその罪を隠蔽した者に対しても厳しく対応しなければならない」と強調している。そして「ピッテー氏の証言は沈黙の壁を打ち壊し、教会生活の恐るべき影の部分を浮かび出している」と書いている。

当方はこのコラム欄で何度もローマ・カトリック教会関連施設内での聖職者の未成年者への性的虐待事件を読者に報告してきた。アイルランド教会、ドイツ教会、スイス教会、オーストラリア教会など世界のカトリック教会関連施設で過去、そして現在も聖職者による性犯罪が行われている。前法王ベネディクト16世はオーストラリア教会で聖職者に性的虐待を受けた信者と会合し、その話を聞きながら涙を流した、と伝えられている。

聖職者はイエスの教えを伝えるべき使命を有している。それゆえに、というべきか悪魔の誘惑は他の者より激しいのだろう。フランシスコ法王が序文で述べているように、「モンスターのような恐るべき罪」が過去、そして現在、教会関連施設内で行われてきた。

当方は過去、カトリック教会の機構改革、聖職者の独身制廃止、修道院の解体などを提案してきた。聖職者の独身制はカトリック教義に基づくものではないことを想起し、バチカンは勇気をもって聖職者の独身制を廃止すべきだ。その上、修道僧、修道女はその敬虔な生き方をこの社会に統合しながら実践すべきだ。閉鎖された社会から抜け出し、結婚し、家庭を作るべきだ。

宗教改革者マルティン・ルター(1483~1546年)が当時のローマ・カトリック教会の腐敗を糾弾し、「イエスのみ言葉だけに従う」といった信仰義認を提示し、贖宥行為の濫用を問いかけた「95箇条の論題」を発表してから今年10月で500年目を迎える。ルターが修道僧、修道女に結婚を助言したように、カトリック教会は修道僧、修道女に結婚を勧めるべきだ。

最後に、独身制を廃止し、修道院から出て家庭を築くことは独身制を維持することよりもひょっとしたら困難な道であるかもしれないことだ。結婚した夫婦の2組に一組が離婚している欧米社会で理想的な家庭を構築する仕事は最も困難なミッションだ。
教会の祭壇の上から神に帰れと叫ぶ以上に、聖職者が自ら理想的家庭を築けば、それこそ最高のイエスの証人となれるはずだ。残念なことは、フランシスコ法王がピッテ―氏の過去の証だけに集中し、同氏がその後築いた家庭生活について何も言及していないことだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年2月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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