「金正男暗殺」と中国工作員の関与説

2017年02月16日 08:30

(韓国KBSより引用:編集部)

韓国「聯合ニュース」が14日、金正男氏の暗殺を報じ、韓国統一省報道官が15日、クアランプール国際空港で13日に殺害された人物が北朝鮮の故金正日総書記の長男で、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄の正男氏(45)であることをほぼ確認したと発表した。正男氏は空港内で2人の身元不明の女性2人(北朝鮮工作員の可能性が高い)に毒針か毒布で殺害された可能性が高いという。

正男氏は2001年5月、息子と2人の女性と共に偽造パスポートを所持し、日本に密入国しようとし、成田空港で摘発され、追放された事件で父親の怒りを買い、後継者争いから外れたといわれてきた。父親金正日総書記が死去した後、政権を世襲した異母弟、金正恩労働党委員長から疎外され、中国やマレーシアを転々としていたことが確認されている。同氏への暗殺計画も久しく報じられてきた。正男氏は金総書記と成恵琳夫人との間、正恩氏は金総書記の3番目の夫人・高英姫氏との間に生まれた異母兄弟関係だ。正恩氏は海外メディアで北朝鮮を批判する正男氏を苦々しく感じてきた。正男氏暗殺計画はこれまで何度もメディアで報じられてきた経緯がある。

金正恩氏は2013年12月、中国の支持を受けて政権転覆を図っていたとして叔父・張成沢元国防副委員長を処刑し、今度は異母兄の正男氏を海外で暗殺したとなれば、政権維持のために親族も粛清する残虐な独裁者ということになる。ちなみに、金ファミリー関係者の最初の暗殺事件は1982年、北の特殊工作員がソウルで亡命(1982年)中の李韓永氏(故金正日総書記の元妻・成恵琳の実姉の息子)を暗殺した事件だ。

金正男氏の暗殺計画は過去にも何件か報じられたことがある。最初に報道されたのは2004年11月だ。「後継者問題に絡んで反正男グループが正男氏をウィーンで殺害しようとしたが、その情報をキャッチしたオーストリア内務省は直ぐに駐オーストリアの北朝鮮大使に連絡し、暗殺計画の中止を要請。そのため、正男氏暗殺計画は阻止された」という内容だった。

2009年6月には、「北朝鮮の金正日労働党総書記の長男・金正男氏がマカオで後継者に決定した総書記の3男・金正恩派によって暗殺されかけたが、計画を事前にキャッチした中国側が正男氏を保護した」というものだ。

この2件のニュースはのちほど、いずれも偽情報だったことが明らかになったが、暗殺情報がたびたび治安関係者や報道関係者の間を回っていた事例である。

最近では、聯合ニュース(2012年10月9日)が、「脱北者を装って韓国に潜入し、活動していた北朝鮮国家安全保衛部所属の工作員が逮捕された。同工作員は故金正日総書記の長男、正男氏に対するテロ指令を受け、その準備活動をしていた疑いがもたれている」と報じた。

金正恩氏が今回、異母兄暗殺にゴー指令を出したとすれば、考えられるシナリオは正男氏の「韓国亡命説」。駐ロンドンの北大使館のテ・ヨンホ公使夫妻が昨年韓国に亡命し、平壌を震撼させたばかりだ。北当局は神経質になっている。それか「中国工作員の関与説」だ。

後のシナリオが正しいとすれば、金正恩氏の訪中計画が近日中に浮かび上がってくるだろう。正恩氏にとって、正男氏の暗殺で中国との関係改善の大きな障害がなくなったことを意味するからだ。中国側がこれまで保護してきた正男氏を切り捨てた可能性がある。

また、看過できないことは、金正男氏が暗殺されたことから、海外に住む金ファミリーに大きな動揺が起きる可能性が考えられる。駐チェコの金平一大使(故金日成主席と金聖愛夫人との間の長男)や駐オーストリアの金光燮大使(故金日成主席の娘婿)はいずれも金正恩氏の義理の叔父に当たる。彼らの今後の動向から目を離せられない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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