東芝危機が示す経営者の巨大企業化の病

2017年02月17日 06:00

画像出典:東芝会社案内より(編集部)

分社化や企業細分化の再評価を

グローバル化が進みビジネスチャンスが拡大するとともに、経営が破たんした時の損失も恐ろしいほど巨大化しています。企業買収、経営統合の波に乗り遅れると、生き残れないという焦りを多くの経営者は持っているようですね。東芝の経営危機というか経営破たんは、その焦りが自滅を呼び寄せたとしかいいようがありません。

焦って企業統合、合併の道を決断したものの、破談になるケースも相当に増えています。企業の巨大化への反動ですね。何千億円もの買収資金を投入しても驚かなくなっています。そうしないと、経営者としての評価を得られないという風潮にあおられているのです。選択と集中、グローバル化、大型の経営統合とか、経営者の実力伴わないのに分不相応の企業行動は疑問です。逆に将来性ある部門を分社化で独立させ、活気を持たせる選択をすることのほうが望ましい場合も多いでしょう。

大型の経営統合、買収をした経営者を評価し、名経営者と持ち上げるべきではありません。金融機関も証券会社も監査法人もそのほうがもうかりますから、熱に浮かされたように、そういう選択を応援しています。監査法人も相当にいい加減なもので、会計、経理のプロだと信じ込んでいると、大失敗します。企業巨大化の妄想から離脱すべきです。

経営能力もないのに巨大化に走った罪

次々に登場する東芝の社長は粉飾決算に手を染めていたり、米国の原発メーカーの買収リスクに鈍感であったり、無能ぶりにあきれている人が多いでしょう。17万人いるという社員はいたたまれない気持ちだと思います。メディアの報道で始めて経営の真相を知らされ、仰天しています。一流企業と信じていただけに、ショックは大きいと思います。

私の知人の息子さんが東芝に勤めており、相次ぐ経営危機の報道に心配して、様子をお聞きすると、「うちは助かりました。医療機器部門におり、それが売却されたので、会社ごと異動しました」とのことでした。優良部門の東芝メディカルが昨年末、6600億円でキャノンに売却にされました。異動先もキャノンですから、まあ幸運でした。

次は稼ぎ頭の半導体部門の売却です。債務超過を逃れるには、1.5兆円の資産価値があり、全部か何分の1かを売るかの検討に入っています。原子力部門は米国からの撤退、国内事業の縮小ですか。医療機器、半導体、原子力という東芝を支えた主力が後退すれば、東芝はもう有名無実です。経営陣を信じ切っていた社員にどう詫びるのでしょうか。

西田社長当時ですか、長い歴史がある白熱電球の生産を停止(2010年)し、LEDに全面的に転換するとの大きな新聞広告が各紙に載りました。何十人もの従業員が工場現場で深々と頭を下げ、「ありがとうございました」と、お礼を述べるシーンは感動的な瞬間でした。新聞広告大賞(新聞協会主催)を受賞し、西田社長は「なかなかやる」と、評価を高めました。

幻に終わった東芝の新時代

今回の経営破たんの引き金になった米WH社の買収は失敗に終わろうとしています。この買収で東芝には「世界的な原発メーカーなる。西田社長はやるやる」が一般的な評価でした。実はそのころに粉飾決算に手を出し、後任の二人を含め、足を抜けなくなってしまいました。福島原発と東日本大震災の複合事故に襲われたとはいえ、「東芝新時代」は幻でしたね。

自分の経営者としての評価を高めようとして、経営能力を超える大型化、国際化に踏み込んだのです。原発事故が致命傷になったにせよ、巨大なリスクをしょい込むことになるという意識が希薄だったとしか思えません。

東芝危機の解明で不思議に思うのは、3社長による明らかな粉飾決算に、東京地検特捜部が立ち入ろうとしなかったことです。証券取引監視委員会は背任で告発しようとしたのに、検察は応じませんでした。不思議です。

それと、原発が今後、どうなるのかです。東芝は細々と続けるつもりでしょうか。廃炉を含め、直ちに原発事業を絶やすわけにはいきません。残る日立、三菱重工に集約していく路線を早く固めることです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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