小池陣営の「自民調略」本格化で波紋も ?

2017年02月19日 06:00

千代田区長選の“バカ勝ち”で破竹の勢いに乗る小池陣営だが…(小池氏Facebookより引用)

他紙が昨日の夕刊時間帯で追いかけなかったようなので、朝日新聞のちょっとフライングな気もしなくはなかったが、本人たちの談話もあるので遅かれ早かれ、そういう方向になるのは間違いなさそうだ。都議会の第1回定例会を待たずして、年末に「小池派」を表明していた3人の自民党都議のうちの2人が近く離党して、夏の都議選は都民ファーストの会公認で立候補するという。

自民都議2人離党、小池新党に合流へ 都議選公認の方針:朝日新聞デジタル

自明の理だった自民都議の引き抜き

国政であれ、都道府県議選であれ、日本の選挙で第1党を本気で取りに行きたいのなら、メディア戦略を駆使して10年に1度クラスのハリケーン的な追い風を起こす「空中戦」も必要だが、日本全国の都道府県議会の党派別比率では自民党は半数を占めているわけだから(総務省の昨年の調査ではジャスト50%)、大阪ローカル政界で急成長して第1党になった維新の先例でも明らかなように、ある程度は、自民党から「即戦力」を引き抜き、その持ち票を取り込んだ方が勝利を確実なものにできる。そもそも、都知事選の時の小池さんの得票構造を考えれば、自民支持層の半数を確保(NHKの出口調査)していたわけだから、自明の理だ。

もちろん、小池陣営中枢もそんなことは百も承知だ。某地方議員OBに聞いた話では、選対首脳の一人が「自民党の票を割れる候補者がいい」と話しているというから、小池塾で選抜されているビジュアル系候補らと並行して、水面下で、小池さんの政敵である石原伸晃前会長や内田都議と距離のある中堅・若手に調略をかけているとみるべきだろう。

ただ、そうなると、選挙区によっては「小池枠」を誰が取るのか色々と思惑がうごめく雰囲気が漂う。たとえば、私の住んで居る港区は定数が2あり、前回の都議選では、いずれも自民が議席をゲットしたが、今回の選挙は、来代勝彦氏、菅野弘一氏の現職2人に加え、民進党の元職、大塚隆朗氏が復帰を目指している。

ところが、ややこしいのは、その大塚氏が小池塾に通っており(本人のFacebook)、さらには港区議会の“W榎本”こと、みんなの党出身の榎本茂氏と、維新の党出身の榎本あゆみ氏も同じく小池塾からの出馬を目指している(榎本茂氏はテレビで合格を報告し榎本あゆみ氏は日刊ゲンダイが報道している)。

つまり、港区の「小池枠」の候補者は表面化しているだけでも、すでに3人いるわけだ。

港区にみる小池枠選考の“複雑化”

ここに来て、小池さんが民進党を見捨てる方向になっているようなので、仮に大塚氏が小池枠での出馬を断念し、民進党から出たとする。そうなると、港区選挙区の「小池枠」は、選挙経験者であるW榎本と、ほかにいるかもしれない新人、たとえば港区民好みの起業家や都会的なイメージの著名人が今後の選考に残れば、激しいイス取り競争になりそうだ。

日刊ゲンダイの報道では、榎本あゆみ氏を有力視しているが、榎本茂氏も、みんなの党人脈により、都民ファーストの会の3人の都議たちと都知事選で小池さんを主体的に支援してきた功績があり、簡単には譲れないところだろう。

しかし、先述したように選対首脳が「自民党票の切り崩し」も選考ポイントに考慮した場合、新人はもちろんのこと、W榎本の両氏は現職区議といっても野党生え抜きなので、すでに2議席を占有している自民支持層の切り崩しという点では、いささか微妙だ。

そこで浮上するのが、小池さんと近しいとされる自民党のある区議。この人は過去の区議選で上位当選を果たしており、前述の地方議員OB氏は、この区議ならば無党派層だけでなく「自民党票も取り込める」と指摘する。ただ、この区議は小池塾には行っておらず、たとえば「7人の侍」たちのように明確にリスクを負って小池さんを支援してきたわけでもない。仮に榎本茂氏らを差し置いて、この区議を引き抜いて単独擁立となれば、論功行賞や小池塾選考の軽視となり、小池陣営内の不協和音は広がりかねない。

一方で、たとえばW榎本のどちらかに加え、もう一人を立て「あわよくば2議席まるごと奪う」という超強気戦略に小池新党が舵を切り、現在は議席を独占する自民の支持層からの取り込みを目指すとなれば、自民区議の引き抜きも理論上ありえなくはない。ただ、さすがに現実味は乏しい気もする。

千代田区長選でのバカ勝ちの余波

今回は、途中から東京・港区ローカル事情の話になって恐縮だが、本質的には都内の他の地域にも通じる部分も少なくないと感じる。

先の千代田区長選で自民都連候補にトリプルスコアのバカ勝ちをしたことで小池陣営の破竹の勢いが顕在化、選対の戦略が上方修正していく中、その分、現場で起きることが複雑化していくことが予想される。相手陣営の顔ぶれ、情勢調査で浮き彫りになる支持率だけでなく、選対への売り込みを模索する動き(例・早川さんのブログ)、あるいは、これまでの貢献度や人間関係といった内部環境も含めて、選考する側としては悩ましい要素も増えるのではないだろうか。

候補者を大量に擁立するとなれば、それぞれの選対事務所をハンドリングできる人材が窮乏するのも必至で、私のところにも民主党の落選議員に仕えていた元秘書あたりから「いい仕事ないですかね」と時折問い合わせが来たりしている。選対を仕切る野田数・特別秘書とコネどころか面識もない当方には答えようがなくて困惑しているのだが(苦笑)、劇場の観察者としては、野田さんが、今後の陣立てをどう捌いていくのか興味深くヲチしている。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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