住友化学3000億、NEC2000億~M&A投資枠を考える

2017年02月22日 06:00
画像はイメージです

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M&Aの投資枠を設ける企業が増えている。中期経営計画の発表などと合わせて、M&Aを含めた戦略投資の金額を明示するケースが多い。社内外に向けて「M&Aに積極的に取り組む企業」をアピールする狙いがあるとみられるが、効果はいかほどのものだろうか。

住友化学は3000億円、NECとベネッセホールディングスは2000億円――。最近では4ケタを超えるM&A投資枠を設ける事例も珍しくなくなってきた。

住友化学は2016年度から18年度までの中期経営計画で、戦略的M&A枠(3000億円)を設定した。狙いはライフサイエンス、情報電子、環境エネルギーなどのスペシャリティケミカル分野の早期拡充だ。営業利益に対するスペシャリティ分野の比率は2015年度の85%から18年度に90%に引き上げる計画だ。

NECも2016年度から18年度までの中期経営計画で2000億円の成長投資枠を確保した。安心・安全な社会インフラを支えるセーフティ事業、グローバルキャリア向けネットワーク事業、コンビニやドラッグストアなど流通向けITサービス事業を重点分野とする。

内需型企業もM&A枠の設定に動き出している。小田急電鉄は外食、ホテル、ストアなど既存事業の規模拡大に加え、新規事業の創出に向けてM&Aを活用する。同社は2015年に不動産リノベーション事業などを手がけるUDS(東京・渋谷)を子会社化している。M&Aを通じて沿線開発の活性化や沿線外の事業機会を創出する。

脱自前主義、アナウンスメント効果も意識?

背景には、M&Aは「成長戦略を実現する重要な手段」との認識が浸透してきたことがある。日本企業では、長らく社内の資源で新規事業を立ち上げる「自前主義」が主流だった。しかし、技術革新のスピードが早まり、経営環境も激しく変化するなかで、社内だけでは、こうした環境変化に機動的に対応するのが難しくなった。M&Aを活用すれば、社内にない技術やノウハウを短期間で獲得でき、時間を節約できる。

もう1つは社内や投資家に対する「アナウンスメント効果」である。M&Aに対する投資家の関心は年々高まっており、M&Aは株価に大きな影響を与えるイベントとなっている。決算説明会などIR(投資家向け広報)において、M&Aに対する戦略や取り組み方針を説明することは、投資家との対話を進めるうえで有効だろう。

M&A投資枠を設けることは、具体的な金額を示して、経営者の投資への姿勢をコミットすることを意味する。小田急電鉄では2014年度にM&Aなどを推進する専門部署「事業企画部」を新設している。投資枠を設けることでM&Aに対する社内の人的リソースを拡充しやすくなる。さらに社外の証券会社やコンサルティング会社から「あの会社はM&Aに積極的だ」と思われ、案件の提案が持ち込まれやすくなるだろう。

ただ必ずしもメリットばかりではないだろう。いくら投資枠を設けたとしても、実際にM&Aが実現するかどうかは、経済情勢や売り手企業が現れるかなど様々な状況に左右される。予算を用意したとしても、実行に移せなければ「絵に書いた餅」だ。枠を使い切れなければ、なぜM&Aが実現できなかったか投資家から説明責任を問われる。一方で、投資枠を設けたことで「なんとか実績をつくらなければ・・・」と焦り、高値づかみをしたのでは本末転倒である。

従って投資家としては、M&A投資枠を設ける企業について、M&Aに対する経営者の意欲を評価しつつも、どんな会社をいくらで買ったかを冷静に見ていく必要があるだろう。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年2月19日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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