メタップス、上場直後から怒涛のM&A データを学習する世界の頭脳へ

2017年02月23日 06:00
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データ分析と決済サービスを運営するメタップス<6172>が2015年に新規株式公開(IPO)して以降、M&Aを立て続けに行い、事業を急拡大させている。あらゆるものがネットにつながり、ビッグデータの収集が可能となるなかで、データによる新たな経済圏の構築を掲げ、人工知能(AI)やフィンテックに集中投資する姿勢を鮮明にしている。まだ上場して間もないベンチャー企業の大胆な投資戦略を読み解きたい。

【企業概要】アプリ開発者向けプラットフォームを運営

メタップスは、「世界の頭脳になる」というミッションを掲げてアプリ収益化事業を行っており、マーケティング(分析、広告、販促等)、及びファイナンス(決済、投資、融資等)の2つの領域において事業展開している。

マーケティング領域では、アプリの集客や分析、収益化をワンストップで支援するアプリ開発者向けプラットフォーム「metaps」が主軸であり、アプリ運営に必要なKPI及びデータを一元管理し、またAI(人工知能)を活用して適切なターゲットに対して適切な広告配信を行うことで、収益を最大化することを支援している。

ファイナンス領域では、オンライン決済サービス「SPIKE」をはじめ、リアル店舗におけるクレジットカード決済サービスの提供、不動産業界における家賃決済等、法人から個人まで幅広い利用者を対象にサービスを提供している。

2007年9月に設立され、2015年8月に東証マザーズに株式を上場しており、日本、シンガポール、香港、台湾、韓国、中国、米国、英国の8拠点を中心としてグローバルに事業展開している。

【経営陣】佐藤社長は20歳で起業、会長にスクウェア出身者

佐藤航陽社長は2006年に早稲田大学に入学後、20歳にして2007年9月にイーファクター株式会社(現・メタップス)を設立し、代表取締役に就任。30歳。和田洋一取締役会長は野村証券出身で、スクウェア・エニックス・ホールディングスの社長を務めた後、2015年からメタップス取締役に就任した。また小泉内閣で経済財政担当大臣などを歴任した経済学者の竹中平蔵氏を顧問に迎えている。

【株主構成】佐藤社長、3分の1超を保有

上場後も佐藤社長が3分の1超を保有し筆頭株主となっている。その他大株主としては、業務提携をしているセガゲームスやトランス・コスモス、博報堂とともに、一部のベンチャーキャピタルが上場から1年経過しても継続保有している。

【M&A戦略】マーケティング、民泊、決済の先端技術を獲得

IPOでの調達資金を活用し、買収を重ねて事業拡大している当社の戦略を読み解きたい。

上場から2か月後の2015年10月に、韓国でモバイル広告プラットフォームを提供する Nextapps Inc.(現Metaps Plus Inc.、前期売上約 880 百万円、営業利益約 188 百万円)の株式を一部取得し、子会社化した。その3か月前に戦略的業務提携を同社と結んだばかりであり、短期間で子会社化に踏み込んだことになる。Nextapps が持つモバイル広告プラットフォームと、当社のアプリデータ解析のノウハウを組み合わせることで、より収益性の高いサービス提供が可能になると判断したようだ。

2016年1月には、動画編集アプリ「Film Story」などを展開するAppStairを子会社化している。動画を用いたマーケティングやプロモーションが増加傾向にある中で、動画マーケティング事業の成長を更に加速させていくと考えられる。

次に2016年4月には、ペイデザイン(前期売上2,535 百万円、136 百万円)を28億8000万円で子会社化している。ペイデザインは、EC決済事業に加え、リアル店舗決済事業、家賃決済事業、電子マネー事業等、幅広いサービスを提供しており、当社の「SPIKE」と合わせ、決済プラットホーム規模が、登録アカウント数で25万件、グループ年間取扱高で1,000億円を超えることとなった。決済プラットホームとしての競争力強化や、付加価値向上の実現に向けてオンライン決済の市場における事業拡大・開発へ取り組んでいくようだ。

また2016年6月にはビカム(前期売上1,021 百万円、営業利益76 百万円)を子会社化した。ビカムはEC事業者向けに、デバイスを横断した商品データの一元管理や最適な広告配信、オペレーション管理コストの削減をするデータフィードマネジメント技術を保有しており、EC事業者のマーケティングを支援している。eコマース市場は、加速度的に拡大が見込まれる成長市場である一方、マーケティングを行う企業にとっては、デバイスの多様化と消費者の行動変化にあわせたコンテンツ管理や広告配信が必要となり、業務の煩雑化が課題となっている中、今後は、両社の連携によりEC事業者の決済からマーケティングまでをトータルで支援できる体制の強化を推進するとのことだ。

さらに2016年8月には、VSbiasの子会社化を行った。VSbiasは物件選定から物件運用までワンストップで提供する「エアリノベ」や複数民泊サイトを横断した物件管理サービス「All in BnB」を中心に、コンサルティング事業・運用代行事業・PMS(Property Management System、予約から客室管理、請求までを処理する宿泊施設の基幹システム)事業など不動産会社・個人オーナーが保有する物件の収益化を支援するサービスを提供している。今後は、両社の連携によりマーケティングから決済まで不動産関連事業をトータルで支援できる体制の強化を推進していくようだ。

そして2016年10月に韓国最大級のプリペイドカード・プリペイド型電子マネー 発行管理会社Smartcon Co. Ltd.を子会社化した。Smartconは、韓国においてオンライン上で利用できるプリペイドカード及びプリペイド型電子マネーの発行・管理事業を展開している企業であり、Smartconのプリペイドカードや電子マネーの発行・管理の知見と当社のマーケティングやオンライン決済の知見を融合させることで、新たな決済ソリューションの開発を目指していくと考えられる。

メタップスはM&Aを重ねてどのような未来を描いているのだろうか。読み解くカギとなるのが、2016年10月に発表した中期経営方針「データノミクス構想」だ。

あらゆるものがインターネットにつながるIoTの時代を迎え、個人の行動パターンなどの膨大なデータが入手できるようになりつつある。そして人工知能(AI)が一段と進化し、従来は人間がやっていた多くの仕事をコンピューターが代わりにやってくれるようになる。

メタップスはデータとAIを軸とした経済圏の構築をめざす。対象はファイナンス(決済・金融)、マーケティング(分析・広告)、コンシューマ(EC・メディア)の3分野。自社の製品から発生するデータをすべて集約して統合管理しAIに学習させる。AIが各事業の成功と失敗のパターンを学習させ、サービス改善に生かす。さらに決済インフラを共通化してお金の流れを自社グループで完結させることで経済圏を形成する。

この経済圏の実現に向け、2017年はフィンテックとAIに集中投資する方針だ。フィンテックでは決済を軸に融資や投資、保険、資産管理などあらゆる領域に参入していく。単独で参入が難しい分野は既存の金融機関と提携する。2016年、みずほフィナンシャルグループと新たな決済サービスの提供に向けた業務提携で合意した。

AIでは東京大学の第一線で活躍するAI研究者を技術顧問に迎え、100種類以上のデータを学習してお金の流れを予測するAIの研究開発体制を強化する。

事業拡大に向けては状況に応じて内製、M&A、JV(合弁会社)を使い分けて最速での成長をめざす。M&Aについては、企業として成熟しており割安での買収が可能な場合、経済圏に融合させることで再成長が可能な場合に活用する。買収後はグループで決済手段を統一したり、本社でデータを分析したりして相乗効果を早期に実現する。

JVを検討するのは、参入障壁が高く、M&Aが困難な場合で、候補分野として、エネルギー、宇宙、生命を上げている。2016年9月にはニチガスとAI活用によるエネルギーの効率化に向けた提携を行った。

【財務分析】売上高2倍速で成長、採算も好転

スマートフォン向け広告市場の拡大を背景に、また2016年8月期は特にペイデザインとビカムの買収により、売上高は右肩上がりに成長している。ただしM&Aによるのれん・減価償却費や、人員拡大による人件費の増加、ファイナンス領域での積極的な先行投資を実施したことが影響し、営業利益は3期連続の赤字となった。なお、2016年8月期の第4四半期では、四半期ベースで上場後初となる営業黒字を達成しており、今後の通期黒字化が期待される。

2017年8月期の売上高は前期比約2倍の180億円、営業利益は7億円を予想する。同社は最重要指標として成長率を掲げる。先にシェアの拡大を行い、ある程度の規模に達した段階で利益率を高める戦略だ。中期経営方針では、2020年に取扱高1兆円、売上高1000億円、営業利益100億円を目標に掲げている。実現には年率8~9割の成長率が必要で、M&Aなしには達成が難しいかなりチャレンジングな目標と言える。

領域別にみると、2015年8月期ではマーケティング領域の売上がほぼ全てを占めるも、2016年8月期は、ペイデザインを買収したことによりファイナンス領域での売上が約35倍に急伸している。地域別にはマーケティング領域の売上高の約6割が海外で稼ぐ。特に中華圏、韓国での売り上げが伸びているという。

【株価】M&A効果が業績、株価を押し上げ

IPO時は公開価格3,300円のところ、初値は3,040円とやや出遅れた。2015年11月に一時的に公開価格を超えた後は低迷していたが、2016年12月に再び3,000円を突破し、回復傾向にある。

株価が持ち直してきた背景にはフィンテックやAIといった成長分野への集中投資を鮮明にしたこと、業績も好転していることがある。決算説明資料によると、2016年8月期の第4四半期で稼いだ売上高32億9000万円のうち、およそ10億円程度が直近のM&Aの効果とみられる。まだ売上高の拡大に伴って販管費比率が低下するなど、収益構造が改善している。

今後の株価は四半期業績の推移や注力するフィンテックやAI分野で新たなM&Aが生まれるかどうかに影響を受けそうだ。

【まとめ】売上高1000億円へ高水準のM&Aが続く

メタップスはコンピューターにあらゆるデータを学習させ、人々の最適な意思決定を支援する頭脳になることを目指している。2020年までの中期経営方針によれば、2017年はフィンテックとAIに対して集中投資し、2018年以降はマーケティングおよびファイナンスの事業資産(様々なデータ)を活用したコンシューマ関連サービスを強化すると掲げる。目標とする2020年の売上高1000億円を達成するために今後も当該分野でのM&Aが続くと予想される。今後はベンチャーならではのスピード感を維持しつつ、買収後の統合管理(PMI)の強化など組織体制をさらに充実させることも課題となりそうだ。この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年2月17日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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