英BBC、新体制へ 〜 受信料制度は維持できたが…

2017年02月24日 06:00

(BBCの年次報告書を掲載するウェブサイト)

新聞協会報」(2月14日号)に掲載された筆者コラム「英国メディア展望」に補足しました。

英BBCが新体制に

英国放送協会(BBC)が4月から、新たな「王立憲章」(ロイヤル・チャーター)の下で活動を始める。BBCはその存立と業務を規定する王立憲章と、BBCと担当大臣との間で交わされる「合意書」(王立憲章で規定された目的に沿って具体的な内容、サービスを詳細に記す)によって運営されている。後者は随時更新されるのに対し、王立憲章はほぼ10年毎に更新されてきた。

新体制の特徴を見てみたい。

有料契約制、導入せず

最新の年次報告書(2015-16年)によると、従業員数は1万8920人。英国の成人の96%がBBCのテレビ、ラジオ、オンラインのコンテンツのいずれかに毎週接している。

主な収入は視聴家庭から徴収するテレビ・ライセンス料(NHKの受信料に相当、以下「受信料」)で、37億4280万ポンド(約5234億円)。これで国内の活動をまかなう。このほかに商業活動(出版、販売など)や交付金などの収入が10億8420万ポンド。合計で48億2700万ポンドに上る。民放最大手ITVの年間収入の約2倍だ。

近年は、王立憲章更新に向けて活動範囲をできる限り拡大させたいBBCと巨大化への動きを阻止しようとする政治家やライバルメディアとの間で、活発な議論が繰り広げられた。

争点の一つは受信料制度を存続するかどうかだった。全視聴家庭から徴収する受信料制度を廃止し、視聴したい人が有料契約(サブスクリプション)を結ぶ制度の導入をBBCは迫られた。もし有料契約制度になれば、BBCの収入は大きく減少すると見られている。

しかし、政府との正式な交渉が始まる前に、BBCは政府と「手打ち」をする。75歳以上の視聴者がいる家庭は受信料の支払いが免除されるが、これまではこの分を政府が税金で負担していた。BBCは免除分を2020年度から全額負担することと引き換えに受信料制度の存続を政府との間で合意した。「正当な手続きを踏まなかった」と大きく批判されたが、いかにBBCにとって受信料維持が重要だったかを物語る。

今回から王立憲章の有効期間が通常の10年ではなく11年となったことも新しい。英国では5年ごとに下院選挙が行われているが、王立憲章継続の議論が政治に左右されることを防ぐためだ。これに準じて受信料制度も11年間は変更しない。これまで凍結状態だった受信料は2021年度まではインフレ率とともに上がるため、経営陣にとっては朗報だ。

ただし、動画をネットで視聴する人が増え、オンデマンドの動画サービスで有料契約制を採る米ネットフリックスが大人気だ。BBCのライセンス料制度は未来永劫には続かないだろう。

大きな動きとしては、NHKの経営委員会にあたる「BBCトラスト」の廃止がある。トラストは新たなサービス導入の是非、経営陣のパフォーマンス、編集上の問題の最終処理に助言を行ってきた。人気テレビ司会者(故人)の性的虐待を追及する番組を取りやめたこと、関連調査報道番組での誤報、巨額を投じたデジタルプロジェクトの失敗が廃止決定につながった。

理事会に最終責任

新たに発足するのが「BBC理事会」で、BBCの戦略、活動、番組制作に最終的な責任を持つ。14人体制で、理事長はイングランド中央銀行のクレメンティ元副総裁だ。4月3日から稼働予定で、クレメンティ氏は「特定の政党に所属する人物はメンバーに入れない」という。

BBCトラストが担当してきた規制・監督もBBCの外に出る。これまでは、BBC以外の放送メディアは放送通信庁「オフコム」の規制・監督下にあった。今後はBBCもオフコムの管理下に入る。公益目的での番組制作・放送というBBCのミッションから逸脱するようなことがあれば、オフコムは制裁を科す権限を持つ。BBCには外からの風が大きく吹くことになりそうだ。

BBCまた、4月以降、国際放送「BBCワールドサービス」で、朝鮮語を含む11言語による放送を新たに始め、インドや中東、ロシアを含む旧ソ連圏向けサービスを強化する。

ワールドサービス放送は過去、政府の交付金で運営されていたが、緊縮財政により廃止され、14年度からBBCが受信料収入で負担している。2015年11月、政府が「安全保障における大綱」を発表し、BBCに対し16年度から政府資金を投入すると発表したことで事業拡大の道が開けた。19年度までの4年間で政府投入総額は2億8900万ポンド。ワールドサービスを含むBBCの国際発信メディアの利用者は世界で約3億人に上る。


編集部より;この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2017年2月23日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。

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