企業力分析、増加率のバランスがV字回復を阻む一因 ソニー

2017年03月01日 11:30
Photo by masataka muto

Photo by masataka muto

今回は、ソニー株式会社について分析しました。売上高8兆1057億円、子会社1,327社、関連会社数110社、従業員数125,300人を擁し、モバイル・コミュニケーション、ゲーム&ネットワークサービス、イメージング・プロダクツ&ソリューション、ホームエンタテインメント&サウンド、半導体、コンポーネント、映画、音楽、金融及びその他の事業を営むコングロマリットです。

2007~2016年3月期までの10年を分析してみました。

企業力総合評価

下位各親指標(営業効率、資本効率)

下位各親指標(生産効率、資産効率)

下位各親指標(流動性、安全性)

企業力総合評価は、108.86P→124.70P →83.73P→98.39P→100.76P→75.69P→98.82P→87.86P→89.21P→101.16Pと推移し、長期にわたり黄信号領域にあり、厳しい経営状況から抜け出すことが出来ません。

営業効率(儲かるか)、資本効率(株主指標)は赤青ゼロ判別ジャッジ上で反転を繰り返しています。

生産効率(人の活用度)は後半改善してきています。2008年180,500人の従業員数が125,300人と30%削減しているための改善です。そもそも、人員リストラは営業効率を回復させる為に行うもので、営業効率の改善はしておらず、リストラの失敗を意味します。そのような場合、残った従業員の士気の低下が起こる場合が多くあります。

資産効率は悪化しています。資産と売上の関係ですから、資産の増加が激しいのです。

流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)は赤信号領域から出る気配がありません。

親指標を縦覧すると、6指標中3指標が常時赤、2指標が半分の確率で赤信号となり、V字回復が急がれます。

ひょっとしてSPLENDID21NEWSをいつも愛読されている方は、回復が出来ないことの要因となる数字の癖を見抜かれた方がいるかもしれません。

違和感を覚えるのは、生産効率の改善と資産効率の悪化がセットになっていることです。生産効率は売上と従業員数の関係、資産効率は売上と資産の関係で、売上は共通しています。なぜ、従業員ばかりが減り、資産が増えるのでしょうか。

下のグラフは総資本増加率と従業員増加率のグラフです。増加率は前年と比較しています。

0%以上をつけると赤信号、以下であると青信号にプロットされます。従業員数も総資産も増加したらすなわち悪かといえば、そうでもないのですが、売上高増加率、経常利益増加率(今回はグラフなし)と共にバランスを崩すと経営上の問題が起こることが多いので、色分けをしています。

2009年までは2指標は同調した動きですが、2010年から外れ始め2012年以降は全く別の動きをしてバランスを欠いています。これではV字回復できません。

このグラフは、従業員リストラをして、資産リストラをしないことを意味します。従業員が資産を利用して利益を生み出すのですから、営業効率が悪いのは、資産の活用と従業員の活用の両方に原因があります。従業員数を減らしても利益を生まない資産を増加させたのでは営業効率は改善する筈はありません。

先月のSPLENDID21NEWSで取り上げたパナソニック(株)も総資産を大きく減らしてV字回復を達成しています。

リストラといえば従業員削減だけをイメージする方が多いのですが、リストラとは、企業が不採算部門をやめたり、新規事業に乗り出すなど、事業構造の転換を目指すことですから、ソニー(株)のように従業員数が30%も減っている中では不採算部門をやめるため総資産も減るのが普通なのです。

資産を減らしたら損するじゃないのと考える方もあるかもしれません。個人は資産をもっていればお金持ちで、それを無くすことは損することを意味します。しかし、会社は少し意味が違います。会社の財産の状況を示す貸借対照表は、資産と同額の負債と純資産が計上されています。資産が増えるということは、負債か純資産が増えるということです。ソニー㈱は業績が悪いので純資産はあまり増えません。ですから、資産増加と一緒に増えるのは負債です。

実際、ソニー(株)の自己資本比率は28.77%→29.81%→26.77%→25.54%→22.72%→18.73%→18.87%→18.18%→18.49%→18.74%と減少しており、すなわち負債が増えていたことを示します。

まとめ

ソニー(株)がV字回復できないのは、目標設定の数字のバランスが悪すぎると言えます。前回のSPLENDID21NEWSでパナソニック(株)には数字の番人のような方の意見が尊重されている旨を述べましたが、正にそのポジションが無いか、軽んじられているのではないでしょうか。

文:株式会社SPLENDID21 代表取締役社長 山本純子

山本 純子(やまもと・じゅんこ) 略歴および著書紹介

株式会社SPLENDID21 代表取締役社長 会計士補
岐阜県出身、奈良女子大学卒業。経営分析専門会社を経営。企業に対し、多変量解析を使った経営分析を研修、分析報告サービスも行っている。関西学院大学大学院経営戦略研究科で財務分析講座の教壇に立ち、後進の育成に努める。
会社概要はこちらから http://www.sp-21.com


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年2月27日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑