エス・エム・エス、巧みなM&Aで12期連続増益

2017年03月05日 06:00
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創業以来12期連続増収増益であり、今後ますます需要が高まると考えられるヘルスケア関連の人材紹介、情報サイト等運営企業であるエス・エム・エス<2175>。2015年にはアジア・オセアニア地域で170万人の医療従事者の会員を持つ医薬情報会社を三井物産<8031>と共同買収した。世界の高齢者人口の増加を追い風にM&Aも巧みに活用して海外事業を拡大する当社の戦略を紐解きたい。

【企業概要】看護師、介護職向け人材紹介が主力

エス・エム・エスは2003年4月に創業社長の諸藤周平氏のもと設立され、2008年3月に東証マザーズに株式を上場。「高齢社会に適した情報インフラを構築することで価値を創造し社会に貢献し続ける」というミッションを掲げ、高齢社会で求められる事業領域として介護、医療、キャリア、ヘルスケアに取り組んでおり、日本だけでなく海外においても、様々なヘルスケア関連情報サイトを提供している。

介護分野では、介護保険請求、求人広告、営業支援等のサービスを提供し、介護事業者の経営全般の総合的支援サービス「カイポケ」を中心に、介護事業所検索や、介護に関わる家族やケアマネジャーに特化したコミュニティサイトを複数運営している。

医療分野では、看護師向けの通信販売を行う「PURE NURSE」や、看護師向けの出版サービス、薬剤師/役学生向けコミュニティ「ココヤク」、事務長向け情報サイト「じむコム」等を運営している。

そして主力のキャリア分野では、看護師や理学療法士、ケアマネジャー、介護職向け人材紹介をはじめ、求人情報サイトや合同就職フェアを開催している。

ヘルスケア分野では、健康に関するQ&Aサービスや認知症情報ポータルサイトを運営している。最後に海外分野では、シンガポール等13カ国に対して医療情報サービスの提供等を行っている。

【経営陣】コンサル出身の後藤氏が社長

後藤夏樹社長は2004年にアイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービスに入社後、2007年5月にベイカレントコンサルティングに入社し、同年12月に当社に入社している。その後2009年6月に取締役に就任し、海外事業本部長を経て2014年4月に、創業社長である諸藤氏の後継として当社代表取締役に就任している。40歳。

【株主構成】創業者、3割近くを所有

創業社長である諸藤周平氏が現在も筆頭株主であり、同じく創業者である田口茂樹氏も第4位株主となっている。その他大株主としては、上場前から継続保有しているアズワン<7476>、エムスリー<2413>がある。 上記のほか、自社株式1,330,272株あり。2016年3月末時点、有価証券報告書に基づき作成。

【M&A戦略】国内は看護・介護、海外は医療分野で買収

買収を重ねて事業拡大している当社のM&A戦略を読み解きたい。

エス・エム・エスは国内、海外を問わず買収を積極的に行っている。

国内では、まずは2009年8月に、アンフェミエから看護学生向け求人情報サービス「ナース専科」事業等を約12億円で譲り受けている。看護師の新卒採用業界で高いシェアを持つ事業を、看護師の中途採用向け人材紹介業で高いシェアを誇る当社が取り込むことで、看護師の就職において一貫したサービスを提供することが可能となった。

その後、2011年9月に看護師向け通信販売サイト「PURE NURSE」を運営するエンジェリーベP&Nを買収している。当社の運営する看護師/看護学生向けコミュニティサービス及び看護師向け人材紹介サービスとPURE NURSEの連携は、エス・エム・エスにとって看護師との関係性強化につながり、またエンジェリーベP&Nにとっては効率的な新規顧客の獲得につながるもので、両社の課題解決において有効であると考えたようだ。

また2015年4月には、多数の介護・医療事業者が導入している地域医療連携支援システム提供のエイルを買収した。当社が培ってきた介護・医療事業者及び従事者とのコネクションを活用し、エイルのシステム普及を加速させ、地域医療介護連携のプラットフォームにすることで、在宅療養や地域医療連携を進めていく考えのようだ。

その他、2011年8月には、ケア・リンクより、認知症に特化した介護をする家族向けコミュニティ「認知症ねっと」を、また2012年4月にはメディキャストからヘルスケア関連のセミナー等検索サイト「Meducation」を譲り受けている。

アジアの医薬情報会社と三井物産と共同買収

海外については、自社で子会社立ち上げを行うとともに、M&Aを通して現地企業を買収することで、現地の医療従事者の囲い込み、患者向けサービスの提供や病院等事業所向けサービスの拡充等、様々な事業機会を生み出そうとしている。

例えば2011年9月には韓国の看護師向けコミュニティ「NURSCAPE」を運営するNurscape Co., Ltd. の80%を取得し、また2013年5月には台湾で介護施設や患者向け慢性病処方薬の宅配サービスを運営する「台灣健康宅配科技股份有限公司」の52.5%を取得している。

また2013年10月にスリランカの患者向けに、病院を利用する際の医師とのアポイントメントサービスを提供しているeChannelling PLCの株式を取得(29.9%出資)し、その後2014年6月に株式を追加取得して子会社化。2014年にはまず1月にオーストラリアにおいて病院向けに医療費の請求プロセス電子化サービスを提供しているEhealthwise Services Pty Ltdを子会社化し、同年12月にはマレーシアにおいて病院情報システムの開発・販売を行っているCentium Software Sdn Bhdを子会社化している。

そしてなんといってもエス・エム・エス最大の買収は2015年10月、MIMSグループ(Medica Asia)の三井物産との共同買収だ。両社で約300億円を支払い、エス・エム・エスは Medica Asia 株式の 60%を、三井物産は40%を保有することとなった。MIMSグループはアジア・オセアニア地域 12 カ国と香港で、医薬情報サービスを書籍、ウェブサイト、モバイルアプリ等のマルチチャネルで提供しており、医療従事者の会員数は約 170 万人にのぼり、中でも医師は多くの国で高い会員登録率を有している。また、その強固な会員基盤を活かし、域内の製薬企業との間で幅広い取引関係を構築している。本件買収により MIMS グループをアジア・オセアニア地域での事業展開の核とすることで、海外戦略を強力に推進し、さらなる成長を実現していくとのことだ。

【財務分析】12期連続増益も自己資本比率は急低下

エス・エム・エスは事業領域である高齢社会に関連する市場の拡大を背景に、12期連続の増収増益を達成している。2016年3月期の連結売上高は前期比27%増の190億円、営業利益は33%増の27億円だった。キャリア関連事業の拡大や、買収したMIMSグループが寄与した。2017年3月期も売上高が前期比26%増の240億円、営業利益が32%増の36億円と大幅な増収増益を予想している。

分野別にみると、キャリア分野の売上が圧倒的であり、2016年3月期では7割近くを占めている。またMIMSグループの買収が寄与し、2015年3月期から2016年3月期までで、海外分野が3倍以上に伸長している。

バランスシート面では、MIMSグループの大型買収に伴い190億円の大型借入を三井住友銀行から行ったことに伴い、無借金経営で高い水準にあった自己資本比率は20%に急低下した。今後の改善が望まれる。

【株価】将来性を評価、大型買収後も堅調

株価は2008年3月の上場からしばらくは大きく変動していなかったが、2013年に入ってからは右肩上がりであり、2015年10月のMIMSグループ買収及び大型借入発表直後も、エス・エム・エスへの信頼感や将来への期待からか、順調に推移している。

【まとめ】高齢者増加を背景に海外事業を拡大

今後は買収したMIMSグループを核として海外事業の拡大をより積極化していくことだろう。一方で漫然とサービス提供国を広げていくわけではないようで、2016年に入って子会社の知恩思資訊股份有限公司(台湾)や、eChannelling PLC(スリランカ)の全持分を売却しており、事業ポートフォリオの見直しを進めているように見受けられる。日本のみならず、世界の高齢者増加を背景に事業を拡大していく当社の今後にこれからも注目したい。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年3月3日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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